2021年5月18日 基礎知識

起業・開業時の資金調達方法|種類とメリット・デメリットを解説

起業・開業時に真っ先に浮かぶのが「資金調達方法をどうするか?」ということでしょう。さまざまな選択肢を知ることで、より自社に適した方法を選ぶことが可能になります。ここでは、起業・開業時の資金調達方法の種類とそれぞれのメリット・デメリットを解説します。

目次

起業・開業時の資金調達方法の種類

まずは起業・開業時にどのような資金調達方法があるのか種類別に見ていきましょう。

借入

借入による資金調達方法では、大きくは金融機関から融資を受ける方法と親族・知人からの個人的な借り入れがあります。金融機関からの融資では、金利を含めた金額を返済することになります。

起業時に利用できる資金調達方法を種類別に整理したのが以下の表です。とくに、日本政策金融公庫と制度融資は起業家への積極的な支援を行っているので、優先的に検討するとよいでしょう。

種類特徴
日本政策金融公庫の融資新創業融資制度があり、担保・保証人がなくても最大3,000万円の融資を受けられる開業前でも融資を受けられる
制度融資自治体が窓口となる融資制度信用保証協会が介在することで開業前でも融資を受けられる
信用金庫地域内の企業・個人事業主への創業融資を取り扱う信用保証協会の保証を受ける必要がある
親族・知人から借入親族・知人などから個人的に借り入れる

出資

株式を発行し、出資を募る資金調達方法です。次の2種類があります。

種類特徴
ベンチャーキャピタル(VC)からの出資高い成長が見込まれるベンチャーやスタートアップに投資し、キャピタルゲイン(売却時の差益)を得ることが目的将来的に上場が見込めるなどビジネスプランの魅力によって出資の有無が判断される
個人投資家(エンジェル投資家)からの出資エンジェル投資家は起業家に出資する個人投資家ベンチャーキャピタルに比べると小口の出資が多く、個人の裁量で出資の有無が判断される

補助金・助成金

補助金・助成金は国や自治体などから支給を受ける仕組みです。補助金は一定条件を満たしていれば申請できますが、必ず採択されるとは限りません。一方の助成金は、一定条件を満たした場合には必ず支給されるという違いがあります。

起業・開業時に利用できる補助金・助成金では、経済産業省や厚生労働省が管轄する制度のほか、各自治体独自の制度があります。起業を支援するさまざまな補助金・助成金があるので、必ずチェックしましょう。

最大の補助額が200万円と高額なことから、とくに利用されているものに創業補助金があります。特徴は以下の通りです。

種類特徴
創業補助金新たなニーズを興す創業を支援する補助金認定支援機関(金融機関・税理士・中小企業診断士など)の確認書が必要補助率は2/3以内、最大200万円の補助

その他(共済・クラウドファンディング)

その他の資金調達方法として、小規模企業共済とクラウドファンディングを挙げておきましょう。

小規模企業共済は、毎月の掛金を支払うことで小規模企業の経営者・個人事業主が退職金を受け取れるという制度で、中小機構が運営しています。契約者は納付期間に応じてさまざまな貸付制度を利用することができます。

クラウドファンディングはネット上で事業計画やプロジェクトをアピールし、賛同者から資金を募るという方法です。それぞれの特徴は以下の通りです。

種類特徴
小規模企業共済共済契約者が利用できる貸付制度があり、いずれも低金利で利用できる開業時に利用できるものでは「創業転業時貸付・新規事業展開等貸付」がある
クラウドファンディング不特定多数の賛同者から資金を集めることが可能リターンを求めない寄付型、サービス・商品などで返礼する購入型、投資目的の金融型がある

借入による資金調達方法のメリット・デメリット

借入の種類別に、メリット・デメリットを見ていきましょう。

日本政策金融公庫の融資

メリット

日本政策金融公庫は国が100%出資する金融機関で、さまざまな融資制度を提供しています。なかでも新創業融資制度は起業家の支援が目的のため、まだ実績がない起業家でも融資を受けられる点が大きなメリットです。

開業前に融資を申し込め、申込から融資まで1カ月程度というスピード感も起業家にとって大きな助けとなります。無担保無保証(連帯保証人が不要)で最大3,000万円(うち運転資金1,500万円)までの融資が可能です。

デメリット

新創業融資制度は、制度融資と比べると若干金利が高くなる場合があります。とはいえ、民間の金融機関よりも低く抑えられているため、起業時の資金調達方法としては筆頭にあげたいところです。

ただし、審査には創業計画書や資金繰り計画など複数の書類が必要になるため、入念に準備を進める必要があります。

制度融資

メリット

起業・開業時に、日本政策金融公庫と並んで多く利用されているのが制度融資です。自治体が窓口となり、信用保証協会の保証を受けて民間金融機関から融資を受けるという仕組みになっています。

信用保証協会が保証人の役割となるため、通常の融資に比べて審査が通りやすく、開業前からの申し込みが可能です。また、無担保無保証(連帯保証人が不要)で、他の借入と比べても金利が低い点は制度融資の大きなメリットです。

自治体によっては、元金返済の一定期間据え置きや支払利息の補助といった独自の制度が設けられています。起業家を支援するスタンスで相談に応じてもらえる点も心強いといえるでしょう。

デメリット

制度融資のデメリットとして挙げられるのは、支払利息のほかに信用保証協会に保証料を支払う必要があることです。また、信用保証協会と金融機関との審査を通過しなければならないため、融資を受けるまでに数カ月を要することがあります。

信用金庫の融資

メリット

都市銀行や地方銀行では税務申告を行っていない起業家への融資はほぼ期待できませんが、地域密着型の信用金庫では開業時の支援に力を入れているところが多くなっています。

信用金庫を利用するメリットでは、将来的にも融資を受けられるような関係性を作れる点が挙げられます。地域貢献を目的とした金融機関という立場から、取引先やビジネスパートナーを紹介してくれるところもあります。

デメリット

起業・開業時に信用金庫から融資を受ける際は、信用保証協会の保証が必要です。そのため、申込から融資を受けるまでに数カ月程度かかる場合があります。

親族・知人から借入

メリット

親族や知人などから個人的に借入する場合、金利や返済期間、返済方法などは話し合いで決まることが多くなります。自由度が高く、経営権への影響がない点はメリットといえるでしょう。

デメリット

親族から借入する場合、事業が不調になった場合のリスクを身内とともに抱えることになります。返済が滞った場合に関係性が悪化する可能性がある点もデメリットです。

出資による資金調達方法のメリット・デメリット

ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資を受ける際のメリット・デメリットには、以下のものが挙げられます。

ベンチャーキャピタル(VC)からの出資

メリット

ベンチャーキャピタルから資金調達するメリットは、多額の資金調達が可能であり、かつ資金を返済する義務がないことです。できるだけ短期間での成長を目指したい起業家にとって、実績による信用力がなくても多額の資金を調達できるのは大きなメリットになります。

また、ベンチャーキャピタルでは経営上のノウハウや人脈の提供などを通じて成長支援を行っているため、ビジネスを軌道に乗せるうえで大きな力になります。

デメリット

ベンチャーキャピタルは株主として経営への監視を行うため、経営者の裁量による自由度が下がる点がデメリットになります。また、出資を受ける際の契約条項にも注意が必要です。途中で方向転換したいと思っても、契約を締結していれば変更できません。

ベンチャーキャピタルでは出資にあたって詳細な調査を行うため、出資が決まるまでに数カ月から1年程度を要する場合があります。

個人投資家(エンジェル投資家)からの出資

メリット

エンジェル投資家からの出資の場合も、ベンチャーキャピタルと同様に資金の返済義務はありません。個人の意思決定により出資が決まるため、出資までの期間は短い傾向があります。

エンジェル投資家は富裕層が多くなるため、出資を受けることで企業の信頼につながる場合があります。また、紹介で人脈が広がるということも期待できるでしょう。

デメリット

エンジェル投資家を名乗ることは誰でもできるので、信頼できるかどうかをしっかり確認する必要があります。契約内容をしっかりチェックし、不安がある場合は専門家に相談することをおすすめします。

補助金・助成金による資金調達方法のメリット・デメリット

補助金・助成金を利用するメリットは、基本的に返済する必要がない点です。ただし、どちらの場合も、起業の準備資金として支給を受けるのではなく、発生した費用の後払いになる点に注意が必要です。以下では、創業促進補助金のメリット・デメリットを見ていきます。

創業補助金

メリット

創業補助金は中小企業庁が管轄する制度です。新たな需要や雇用の創出を促すことを目的に設けられている制度で、返済の義務はありません。創業前の申し込みができるほか、一定期間内であれば創業後の申請も可能です。

補助率が3分の2、上限が200万円と高額なため、起業から間もない経営者にとって大きなメリットとなります。

デメリット

創業補助金は、申請したからといって必ずしも採択されるわけではなく、受給のハードルは高めになっています。創業補助金は経費が発生してからの後払いとなるので、つなぎとなる手元資金が必要となる点にも注意が必要です。

募集期間があるため、いつでも申請できるわけではなく、申請には認定支援機関(金融機関・税理士・中小企業診断士など)の確認書類が必要になります。受給したい場合は、計画的に準備を進めする必要があります。

共済・クラウドファンディングによる資金調達方法のメリット・デメリット

小規模企業共済とクラウドファンディングを利用する場合のメリット・デメリットについても見ていきましょう。

小規模企業共済

メリット

小規模企業共済は、掛金を支払うことで経営者や個人事業主が退職金を受け取れるという制度です。中小機構が運営しているもので、契約者は低金利の貸付制度を利用することができます。

創業転業時貸付・新規事業展開等貸付の場合、掛金の範囲内で最大1,000万円までの借入が可能。金利が1%未満に抑えられている点も大きなメリットです。

また、掛金分は課税対象所得から控除されるので節税になります。将来に備えつつ、さまざまなメリットを受けられるため、中小企業や個人事業主はチェックしておきたい制度です。

デメリット

多方面でのメリットが用意されている小規模企業共済ですが、掛金納付月数が一定に満たない場合、元本割れするというデメリットがあります。短期間で解約してしまうと、節税効果よりも元本割れ金額のほうが大きくなるため慎重に検討しましょう。

クラウドファンディング

メリット

クラウドファンディングのメリットは、基本的に返済不要な資金を集めることができる点です。資金を調達するのと同時に、自社のプロジェクトに対する市場の反応を見ることができるというメリットもあります。

デメリット

必ずしも数多くの支援者を集められるとは限らないため、資金調達方法としては不確定要素が大きいことがデメリットです。クラウドファンディング会社への手数料や支援者への返礼に資金が必要になる点にも注意しましょう。

共済・クラウドファンディングによる資金調達方法のメリット・デメリット

起業・開業の資金調達方法を決める前に、まずはどれくらいの資金が必要になるのか、しっかり精査しておくことが大切です。必要となる資金項目は業種・業態によって異なりますが、一般に以下のようなものがあります。

<開業資金>

  • 設備資金(事業に必要な設備・備品など)
  • 諸費用(開業に必要な手続きや登記関連費用、保証金など)

<運転資金>

  • 家賃
  • 人件費
  • 仕入れ代
  • 通信費・光熱費・交通費など事業運営・維持にかかる費用

<当面の生活費>
会社の支出と個人の支出は分けて考えなければいけませんが、起業してすぐに事業が安定するとは限らないため、当面の生活費にかかる費用も見込んでおく必要があります。

中小機構が運営する「J-Net21」では起業・開業時の資金目安や損益モデルを業種別にまとめているので、参考にしてみるとよいでしょう。

参照|J-Net21>業種別開業ガイド
https://j-net21.smrj.go.jp/startup/guide/index.html

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