2021年6月8日 基礎知識

ファクタリングとは【仕組みを図解】|メリット・デメリットと選び方、即日利用や違法性について

ファクタリングとは【仕組みを図解】|メリット・デメリットと選び方、即日利用や違法性について

ファクタリングとは入金期日前の売掛債権を現金化できるサービスのことです。個人事業主や中小企業の資金繰りの改善に役立てることができます。本記事では、ファクタリングの種類と仕組み、メリット・デメリット、手数料の相場、ファクタリング会社の選び方、審査と利用の流れ、注意すべき違法性まで押さえておくべきポイントをわかりやすく解説します。

目次

ファクタリングとは

ファクタリングとは

ファクタリングとは、入金期日前の売掛債権(売掛金・受取手形)をファクタリング会社に売却することで、早期に現金化できるサービスのことです。個人事業主や中小企業でファクタリングが多く活用されるのは、以下のようなケースです。

●入金日前に支払い期日がくるが手元資金が不足している

●銀行融資などの資金調達では支払いが間に合わない

●借入金を増やしたくない

ファクタリングは貸付とは異なるため、保証人や担保は不要です。また、融資よりもスピーディに資金調達できるため、すぐにでも現金が必要な場合に多く利用されています。

ファクタリングの種類

ファクタリングの種類

ファクタリングは「買取型」と「保証型」に大別されます。

買取型

買取型ファクタリングとは、ファクタリング会社に売掛債権を買い取ってもらう方法のことです。手数料が差し引かれた代金を受け取ります。一般的に浸透しているファクタリングは買取型を指しており、売掛債権を早期に現金化したい場合に利用されています。

保証型

保証型ファクタリングとは、ファクタリング会社が売掛債権を保証するサービスで、いわば保険です。売掛先の倒産などによって代金が回収不能となった場合に、ファクタリング会社から保証金を受け取ることができます。初めての取引で回収リスクが懸念される場合などに利用されています。

ファクタリングの仕組み

ファクタリングの仕組み

買取型のファクタリングには、自社とファクタリング会社のみで行う「2社間ファクタリング」と、売掛先を含めた3社での契約となる「3社間ファクタリング」があります。それぞれの仕組みを見ていきます。

2社間ファクタリングの仕組み

2社間ファクタリングの仕組みは以下のようになっています。

2社間ファクタリングの仕組み

①自社:ファクタリング会社に売掛債権を売却

②ファクタリング会社:手数料を差し引いた代金を支払う

③取引先:期日までに売掛金を支払う

④自社:回収した売掛金をファクタリング会社に支払う

2社間ファクタリングでは、取引先に売掛債権の売却を知られることなく手続きすることができます。ただし、3社間ファクタリングと比較して手数料率は高く設定されています。

3社間ファクタリングの仕組み

2社間ファクタリングは、次の仕組みになっています。

3社間ファクタリングの仕組み

①自社:ファクタリング会社に売掛債権を売却

②ファクタリング会社:手数料を差し引いた代金を支払う

③取引先:期日までにファクタリング会社に売掛金を支払う

3社間ファクタリングでは、取引先の合意を得る必要があります。2社間ファクタリングと比較すると手続きに時間を要するため、すぐにでも現金が必要な場合は注意が必要です。一方で、ファクタリング会社のリスクが低減される仕組みであることから、2社間に比べて手数料率が低いというメリットがあります。

ファクタリングのメリット

ファクタリングのメリット

ファクタリングのメリット・デメリットは次の通りです。

最短即日の資金調達スピード

ファクタリングは銀行融資などと比べて資金調達スピードが早く、最短で即日の現金化が可能なファクタリング会社もあります。オンラインで申込・審査・入金まで完結できるサービスが増えており、審査にかかる時間も短くなっています。

すぐに手元資金が必要な場合に役立てられる点は、ファクタリングの大きなメリットです。また、売掛金を回収するまでの期間が長いために資金繰り悪化が予想される場合にも有効な手段といえます。

自社の信用情報には影響がない

ファクタリングは融資とは違って売掛債権の売買となるため、利用しても自社の信用情報として記録に残ることはありません。信用状況を守りたい中小企業や個人事業主にとっては、メリットの一つといえるでしょう。

自社の財務状況によらず利用可能

ファクタリングで重視されるのは売掛先の与信です。これは、ファクタリング会社にとってのリスクが、売掛先の支払い能力に左右されるためです。自社では赤字が続いていて財務状況が悪かったとしても、売掛先の信用力が高ければファクタリングを利用できる可能性は高いといえます。

取引先の倒産によるリスクを回避

ファクタリングは売掛債権を売却する契約となるため、原則として売掛先の倒産などで代金が回収不能となった場合、リスクはファクタリング会社が負うことになります。取引先の倒産等のリスクを回避できる点はメリットという見方もできます。

ファクタリングのデメリット

ファクタリングのデメリット

 ファクタリングのデメリットには次のことが挙げられます。

手数料が発生する

ファクタリングは、銀行融資などに比べると手数料率が割高になっています。無計画に利用すると、逆に資金繰り悪化を招いてしまうため注意が必要です。

取引先との関係性悪化に注意が必要

3社間ファクタリングの場合、売掛債権をファクタリング会社に譲渡することを売掛先に承諾してもらう必要があります。当然ながら、ファクタリングの利用を取引先に知られることになります。場合によっては「資金繰りが悪化しているのでは?」など、取引先からの信用が落ちて関係性が悪化する可能性が考えられます。

売掛先の信用度によって利用できないことがある

ファクタリング会社は売掛先の信用度を審査し、取引の可否を決めます。そのため、売掛先の信用度が低いとみなされた場合、利用できない可能性があります。

ファクタリングの手数料の相場

ファクタリングの手数料の相場

ファクタリングの手数料は各社で幅があり、かつ2社間・3社間で大きく異なります。手数料の相場は以下の通りです。

●2社間ファクタリング:10~20%

●3社間ファクタリング:1~9%

なお、手数料率を決める基準は各社で異なっており、契約内容や売掛債権の金額などによっても変動します。

ファクタリング会社の選び方・比較ポイント

ファクタリング会社の選び方・比較ポイント

ファクタリング会社を選ぶ際に、とくに注視したい比較ポイントを見ていきましょう。

手数料

ファクタリングの手数料に影響する要素には次のものがあります。

●売掛先の信用度

●売掛債権の金額

●ファクタリングの利用実績

手数料の決定では、ファクタリング会社が背負う債権回収リスクの程度が大きく影響します。そのため、売掛先の信用力が高く安全性が高い売掛債権と判断された場合や、過去のファクタリング利用実績から売掛金回収後の支払いに信用がおけると判断された場合は、手数料を抑えることが可能です。

また、高額な売掛債権はファクタリング会社の利益も大きくなるため、手数料が安くなることもあります。

ただし、手数料の安さだけをアピールしているファクタリング会社の中には、貸金業に抵触するような勧誘をして利益を得ようとするケースもあるので注意が必要です。契約時は、条件が明確に示されているかをしっかり確認しましょう。

入金スピード(即日入金の可否)

ファクタリングは、入金までのスピード感が大きなメリットです。現在は申込〜審査〜入金までオンラインで完結できるサービスが多数提供されており、より便利になっています。2社間ファクタリングでは最短で即日、遅くても1週間以内に入金というところが多くなっています。現金化を急ぐ場合は、入金までの期間も事前に確認しておきましょう。

買取可能金額

ファクタリング会社によって買取可能な上限額・下限額が異なります。売却したい売掛債権に合致するかどうかを事前に確認しておきましょう。

個人事業主の利用可否

現在は個人事業主を対象としたファクタリングサービスも多数提供されています。ただし、なかには法人のみを対象としている提供会社もあるため、個人事業主の場合は事前に利用条件を確認しておきましょう。

継続利用によるメリットの有無

ファクタリング会社によっては、2回目以降の利用時は審査が簡略化されたり、手数料が下がったりすることがあります。資金調達方法として継続的な利用を考えるなら、こうしたメリットの有無についてもチェックしておきましょう。

ファクタリング会社の信頼性

ファクタリング会社の信頼性は必ずチェックしましょう。以下の項目を中心に、できる限り情報収集することがトラブルを未然に防ぐポイントです。

●会社名

●代表者名

●所在地

●連絡先

●設立年数

●事業の沿革

●これまでの実績

また、ファクタリング会社とのやり取りのなかで、質問にしっかり答えてくれるか、説明が不十分なまま押印を強要されないかなど、信頼できる対応をしているかどうかもしっかりチェックしてください。

ファクタリングの審査・利用の流れ

ファクタリングの審査・利用の流れ

ファクタリングを利用する際の一般的な審査・利用の流れは、次のようになっています。

1.申込

必要書類を揃えてファクタリング会社に申し込みます。各社で求められる書類は異なりますが、主に以下のものが必要です。

●登記簿謄本(法人の場合)

●本人確認書類

●売掛債権を証明できるもの(請求書など)

●決算書または確定申告書

●印鑑証明

●入金確認ができる通帳

●売掛先との基本契約書・売買契約書

●納税証明書

2.ファクタリング会社による審査

申込後、ファクタリング会社が審査を行います。審査では、主に以下の点が確認されます。

●売掛金の種類(単発の売掛金か、継続的に発生する売掛金か)

●売掛金を二重譲渡していないか(複数のファクタリング会社に売却していないか)

●売掛金を差し押さえられる可能性はないか(税金・社会保険料などの滞納による差し押さえ)

●売掛金が架空のものでないか

また、ファクタリング会社では債権回収のリスクを判断するため、以下のような審査基準を設けています。

●売掛先の信用力はどの程度か

●売掛金の支払期日はいつか

●利用会社(個人事業主)は信頼できるか

ファクタリングは、売掛先の信用力が高ければ利用できることが多くなっていますが、利用する会社についての信用力も問われます。たとえば2者間ファクタリングで利用会社が売掛金の入金があったにもかかわらず支払いをしなかった場合、ファクタリング会社がリスクを背負うことになります。そのため、取引上、信頼をおける会社かどうかも見られていることを心得ておきましょう。

3.契約~入金

書面で契約を交わしたあと、手数料が差し引かれた額が入金されます。契約を交わす際は、少しでも疑問に思うことがあるときは質問し、納得したうえで進めることが重要です。怪しい点があると感じたら、契約をストップしたほうが賢明です。

ファクタリングの違法性について

ファクタリングの違法性について

ファクタリングの需要が伸びるとともに、違法行為やファクタリングを装った違法業者が増えていることから金融庁では注意喚起しています。ファクタリングの違法性についてもしっかり理解しておきましょう。

ファクタリングに関する法律

2社間ファクタリングは、自社とファクタリング会社の間で行われる債権の売買契約であり、民法第555条(売買契約)に該当します。

民法第555条(売買契約)

売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

3社間ファクタリングの場合は、売掛先の同意を得た上で債権譲渡が行われますが、その法的根拠は民法第466条「債権の譲渡性」と民法第467条「指名債権譲渡の対抗要件」で確認できます。

民法第466条(債権の譲渡性)

1.債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

2.当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

民法第467条(指名債権譲渡の対抗要件)

1.債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。

2.前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

 

つまり、債権譲渡はファクタリング会社と利用者との合意によって成立できるものの、ファクタリング会社(譲渡人)が債権を主張するには売掛先(債務者)に通知し、承諾を得る必要があるということです。

給与ファクタリングとは

給与ファクタリングとは

給与ファクタリングとは、労働者である個人が受け取る予定の給料(賃金債権)をファクタリング業者に売却し、給料日前に現金化するというもの。給与ファクタリングと称されていますが、これは貸金業に該当します。

貸金業の登録をしていないヤミ金融業者が給与ファクタリングとうたい、高額な手数料を請求したり、悪質な取り立てを行ったりする被害が報告されており、金融庁でも注意喚起をしています。十分に注意してください。

参照:金融庁|ファクタリングに関する注意喚起

違法の恐れがあるケース

違法の恐れがあるケース

ファクタリングのニーズを逆手にとった悪質な勧誘により、被害を受けているケースが見られます。違法性が疑われる事例を見ていきましょう。

ファクタリングをうたった高利貸し

ファクタリングのように見せかけ、売掛債権を担保にして高利貸しを行っているケースです。実際に、法定金利を超える高額な利息を請求されるといった被害が報告されています。

ファクタリングは貸金業ではないため、貸付により利息を請求したり、担保や保証人を求めたりすることはできません。契約書に「売買契約(債権譲渡契約)」であることが定められているか、しっかり確認しましょう。

貸金業に該当する恐れがある取引

ファクタリングの中に、貸金業に該当する取引が含まれていないか注意する必要があります。

たとえば、ファクタリング会社が債権を回収できなかった場合に代金を減額される、利用会社の支払いが遅延した場合に利息を請求するなど、ファクタリング会社が債権回収のリスクをほぼ負っていない場合、貸金業と同様の行為をしているとみなされた判例があります。貸金業の登録をしていない業者がファクタリングと称して貸付を行った場合は、違法となります。

償還請求権ありのファクタリング

償還請求権とは、金銭の返還を求める権利のことです。償還請求権ありの契約となっている場合、売掛金を回収できなかった場合の責任はファクタリング会社ではなく自社が負うことになります。そのため、売掛債権を担保とする融資と同じと見なされ、貸金業法や利息制限法が適用されます。

貸金業登録を行っていないファクタリング会社が償還請求権ありの契約を結ぶことは違法となるため注意してください。

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