2022年3月9日 基礎知識

自己資金なしでも創業融資は受けられる!その方法5つと注意点を解説

「自己資金が全くないけれど、創業融資を受けたい」
「日本政策金融公庫の創業融資を受けるには自己資金が必要と聞いたけれど、自己資金なしで受ける方法はない?」

これから起業を予定している人や、最近起業した人で、そんな希望を持っている人も多いのではないでしょうか?

結論から言えば、自己資金なしでも創業融資を受けることはできます
中でも、低金利で大きな金額の融資を受けられる日本政策金融公庫は、融資の条件に「自己資金があること」を挙げていますが、実は自己資金なしでも借りられる方法があるのです。

そこでこの記事では、自己資金なしで創業融資を受けられる方法を解説します。

まず、

◎自己資金なしで創業融資を受ける5つの方法
◎日本政策金融公庫の創業融資についての詳細

をくわしく説明します。

また、お金を貯めることなくすぐに自己資金を増やす方法として、

◎自己資金に含めることができるもの
◎融資のために自己資金を増やす7つの方法

も提案しています。
さらに、

◎自己資金なしで創業融資を受ける際の注意点
◎創業融資以外で創業資金を調達する方法

についても解説しました。

最後まで読めば、自己資金がなくても創業融資を受ける方法がわかるはずです。
この記事をもとに、あなたが自己資金なしで必要な創業資金の融資を受けられるよう願っています。

目次

1. 自己資金なしでも創業融資をうけられる

でも創業融資をうけられる

「起業する際、創業資金のうち3割程度は自己資金が必要」と言われます。
起業に500万円かかるなら150万円、1,000万円なら300万円は自分の預貯金がないといけない、というわけです。

が、「自己資金はないけれど、すぐに起業しないとチャンスを逃してしまう」「自己資金なしで、創業資金の融資を受けたい」といったケースもあるでしょう。

そんな人に、結論から言えば、自己資金なしでも創業融資は受けられます
もちろん、借りる際には事業の内容や計画を明示して、たしかに収益があがる有望な事業だということを認めてもらわなければなりません。
が、事業計画がしっかりしていれば、自己資金なしで創業資金を借り入れる方法はあるのです。

次章では、その具体的な方法について説明していきましょう。

2. 自己資金なしで創業融資を受ける5つの方法

で創業融資を受ける5つの方法

創業資金を融資してくれる金融機関としては、

◎政府系金融機関(日本政策金融公庫)
◎自治体の制度融資(信用保証協会の保証付き融資)
◎銀行、信用金庫など民間の金融機関

などがあります。

まずはそれぞれについて、自己資金なしで借りられる創業融資の制度を説明しましょう。

2-1. 日本政策金融公庫の新創業融資制度

創業資金をはじめ、事業資金の融資元としてぜひ利用したいのが日本政策金融公庫です。
政府系金融機関として、個人事業主から中小企業まで、低金利の融資で支援していますが、特に創業支援には力を入れていて、代表的なものに「新創業融資制度」があります。
新たに事業を始める人向けに、無担保・無保証でも最大3,000万円まで融資してくれるため、ぜひ利用したいと考える人も多いでしょう。

が、この新創業融資制度の融資を受けられる条件の中に「自己資金要件」というものがあり、「創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方」でなければ融資を受けられないとされています。
そのため自己資金がない人は、「自己資金要件を満たしていないから、日本政策金融公庫からは借りられない」と思い込んでいるケースも多いようです。

ところが実は、この自己資金要件には例外があり、自己資金がなくても融資を受けられる可能性があるのです。
その例外とは、

◎現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方
◎産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方

です。

つまり、いま勤めている会社から同業種で独立開業する人や、自治体から「特定創業支援事業」として認定された場合は、自己資金がなくても最大3,000万円の融資を受けられる可能性があるのです。

この制度については、次章「3. 日本政策金融公庫の創業融資制度の詳細」についてくわしく説明しますので、そちらをぜひ読んでください。

2-2. 日本政策金融公庫の中小企業経営力強化資金

日本政策金融公庫には、創業資金として借りられる融資制度がほかにもあります。
そのひとつが、「中小企業経営力強化資金」です。
その制度概要は以下の通りです。

【小規模事業者・個人事業主】

 小規模事業者・個人事業主
適用資格・条件次の1または2に該当する方
1)次のすべてに該当する方
◎経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む)を行おうとする方
◎自ら事業計画の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方
2)次のすべてに該当する方
◎「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している方または適用する予定である方
◎事業計画書を策定する方
資金の使い道事業計画の実施のために必要とする設備資金および運転資金
融資限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)
利率1.11%~1.30%
担保・保証人要相談

【中小企業】

 中小企業
適用資格・条件次の1または2に当てはまる方
1)次のすべてに当てはまる方
◎経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む。)を行おうとする方
◎事業計画書を策定し、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方
2)次のすべてに当てはまる方
◎「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を完全に適用している方または適用する予定である方
◎事業計画書を策定する方
資金の使い道事業計画の実施のために必要とする設備資金および長期運転資金
融資限度額直接貸付 7億2千万円(うち運転資金2億5千万円)
利率1.11%~1.30%
担保・保証人要相談

この融資のポイントは、融資を受けられる資格・条件です。

◎新しい事業を開拓しようとするもの、または新規開業を行うもの
◎「中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関」の指導やアドバイスを受けて、事業計画を作成しているもの
◎「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」にしたがって会計処理を行うもの

という条件がありますが、特に注目したいのは、「認定経営革新等支援機関」の項目です。

「経営革新等支援機関」は「認定支援機関」とも呼ばれ、経営や会計に関する専門知識、実務経験をもっていると国が認定した機関です。

具体的には、

・商工会、商工会議所
・地域金融機関
・税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士

などが認定を受けることができます。
認定された機関は、その知見をもとに、中小企業や小規模事業者、個人事業主の経営相談に乗り支援をしているのです。

つまり、これら認定支援機関の指導を受けて事業計画を作成すれば、「中小企業経営力強化資金」の融資を受ける資格ができる、というわけなのです。

さらに、この指導を受けて事業計画を作成すると、内容が綿密で充実したものになるため、日本政策金融公庫の融資審査に通りやすくなるというメリットもあります。
自己資金なしでも、事業計画書の説得力で融資が受けられる可能性が上がるのです。

起業にあたってこの融資を希望する場合は、ぜひ認定支援機関に相談してみてください。

2-3. 日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)

さらに日本政策金融公庫では、「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」という融資制度もあります。

ベンチャー企業やスタートアップ企業、新事業を展開する起業などのための融資ですが、特徴的なのは「資本制ローン」だということです。
この融資制度での借り入れは、別の金融機関で融資審査を受ける際に「負債」扱いにはならず、「資本」扱いになります

つまり、この制度で融資を受けると、形式上は資本金が増えたことになり、したがって銀行や信用金庫などの融資審査に通りやすくなるのです。

この制度の概要も表にしましたので、以下を見てください。

【小規模事業者・個人事業主】

 小規模事業者・個人事業主
適用資格・条件次の1および2を満たす法人または個人企業の方
1)適用できる融資制度・新規開業資金
・女性、若者/シニア起業家支援資金
・再挑戦支援資金
・新事業活動促進資金  など
2)その他の条件として、次のいずれの要件も満たす方
・地域経済の活性化にかかる事業を行うこと。
・税務申告を1期以上行っている場合、原則として所得税等を完納していること。
融資限度額4,000万円
利率1.05%~6.20%融資後1年ごとに、直近決算の業績に応じて、貸付期間ごとに3区分の利率を適用
担保・保証人無担保・無保証人

【中小企業】

 中小企業
適用資格・条件直接貸付において、新企業育成貸付、企業活力強化貸付または企業再生貸付を利用される方で、地域経済の活性化のために、一定の雇用効果(新たな雇用または雇用の維持)が認められる事業、地域社会にとって不可欠な事業、技術力の高い事業などに取り組む方。
融資限度額1社あたり 3億円
利率0.45%~5.50%適用した貸付制度に基づき、貸付後1年ごとに、直近決算の業績に応じて、3区分の利率を適用
担保・保証人無担保・無保証人

また、この制度のポイントは、

◎「中小企業経営力強化資金」と併用できる

という点です。
両方あわせれば大きな額を借り入れることができるので、ぜひ申し込んでみましょう。

2-4. 自治体の制度融資(信用保証協会の保証付き融資)

都道府県や市区町村といった地方自治体でも、企業向けに「制度融資」と呼ばれる融資を行っているところがあります。
これは、自治体が直接融資をするのではなく、金融機関と連携して、信用保証協会の保証付き融資をするというものです。

この制度融資の中にも、創業に特化した制度が用意されている場合があります。

たとえば東京都では、「東京都中小企業制度融資『創業』」を実施しています。
その概要を紹介しましょう。

適用資格・条件 都内に事業所(個人事業者は事業所又は住所)があり、東京信用保証協会の保証対象業種を営む中小企業者で以下3点のいずれかに該当する方
・現在事業を営んでいない個人で、創業しようとする具体的な計画を有している
・創業した日から5年未満である中小企業者等
・分社化しようとする会社又は分社化により設立された日から5年未満の会社
資金の使い道 運転資金、設備資金
融資限度額 3,500万円
利率 1.7%~2.5%
担保・保証人 既存の保証付融資残高と新規の保証付融資額の合計が8,000万円以下の場合は、原則として無担保法人代表者を除き連帯保証人は原則として不要

ただし、この制度の注意点は、

◎自治体によって融資の制度がないところがある

ということです。
事業を興そうとする自治体にこの制度があるか、確認してみてください。

2-5. 銀行・信用金庫の融資(信用保証協会の保証付き融資)

また、銀行や信用金庫といった民間の金融機関でも、創業に特化した融資商品を扱っているところがあります。
メガバンクには今のところ創業融資はないようですが、地方銀行や信用金庫なら積極的に扱っているところも見かけます。

たとえば、いくつか挙げてみると、

◎きらぼし銀行「創業サポートローン」:500万円以内
◎中国銀行「ちゅうぎん新規創業融資制度 結希(ゆうき)」:2,000万円以内
◎十六銀行「じゅうろく創業応援ローン「チャレンジサポート」」:1,000万円以内
◎城南信用金庫「創業・起業者向け協調融資「Approach」」:5,000万円以内
◎さわやか信用金庫「創業支援ローン・チャレンジ」:2,500万円以内
◎横浜信用金庫「創業支援融資「創る」」:500万円以内

など、ほかにも多数あります。

ただし、民間の金融機関の場合、自己資金なしでの融資申し込みはなかなか通りづらいとされています。
審査に通るには、相当に有望な事業計画を立て、担当者を説得する必要があるでしょう。

それでも融資を申し込みたい、という場合は、創業融資を扱っている地方銀行や信用金庫にまず一度相談してみてください。

3. 日本政策金融公庫の創業融資制度の詳細

日本政策金融公庫の創業融資制度の詳細

自己資金なしで受けられる創業融資の中でも、低金利、無担保・無保証で3,000万円まで借りられる日本政策金融公庫の「新創業融資」はぜひ申し込みたいものです。

そこでこの章では、この制度についてくわしく説明しましょう。
まず以下の表に概要をまとめましたので、見てください。

適用資格・条件 次の1~3のすべての要件に該当する方
1)創業の要件新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方
2)雇用創出等の要件「雇用の創出を伴う事業を始める方」、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」又は「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方」等の一定の要件に該当する方(既に事業を始めている場合は、事業開始時に一定の要件に該当した方)なお、本制度の貸付金残高が1,000万円以内(今回のご融資分も含みます。)の方については、本要件を満たすものとします。
3)自己資金要件新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとします。
資金の使い道 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金
融資限度額 3,000万円(うち運転資金1,500万円)
利率 1.01%~2.80%
担保・保証人 原則不要

では、それぞれの内容についてくわしく見ていきましょう。

3-1. 融資を受けられる条件

「2-1. 日本政策金融公庫の新創業融資制度」でも説明しましたが、この制度を利用できる人の条件には「自己資金要件」があります。
創業資金のうち10分の1以上の自己資金が必要、逆に言えば持っている自己資金の9倍の金額までしか融資を受けられない、というものです。

が、これには例外があり、以下の要件に概要する人なら自己資金がなくても融資を受けられるのです。

◎現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方
◎産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方

ひとつめの条件はわかりやすいですよね。
いま勤めている会社から同業種で独立開業する人なら、自己資金はなくてもよい、ということです。

わかりにくいのは、ふたつめの条件にある「認定特定創業支援等事業」です。
これについて説明しましょう。

「特定創業支援等事業」とは、国が新規創業を支援するために始めた事業です
国に認定された自治体が起業家を支援するもので、自治体ごとに制度の詳細は異なりますが、おおむねは以下のような内容です。

◎自治体は、創業者や創業予定者に対して経営、財務、人材育成、販路開拓に関する知識のすべてが習得できるよう、セミナーや創業塾、個別相談などで支援する
◎自治体が定めた一定の回数、期間、内容で経営に関するセミナーや個別相談などを受けた創業者・創業予定者は、自治体に申請することにより証明書を発行される
◎この証明書を発行されると、創業に関するさまざまな制度で優遇措置を受けられる

つまり、自治体の定めた基準で指導を受け、その証明書をもらえば、自己資金がなくても日本政策金融公庫の新創業融資に申し込む資格ができる、というわけです。

この特定創業支援を受ければ、今後の事業展開に向けて有益な知識や情報を得ることもできますので、ぜひ検討してみてください。

3-2. 金利・融資限度額

新創業融資の基本的な金利は2.41%~2.80%で、融資額や返済期間によって異なります。
また、担保や保証金をつけるなどすれば、さらに金利を下げることができ、最低1.01%での融資も可能です。

設備資金と運転資金に使うことが認められていて、融資限度額は3,000万円までです。

が、そのうち運転資金としては1,500万円までと制限されています。
「運転資金として2,000万円必要」という場合に、たとえば「運転資金1,500万円、設備資金500万円と申請して、借りられたらすべて運転資金に使ってしまおう」などということは認められません。

3-3. 融資までにかかる日数

新創業融資の場合、審査期間が2~3週間はかかると言われています。
申請から実際に融資されたお金が入金されるまでは、最短でも1か月は見ておく必要があるでしょう。

もし、書類に不備があったり、融資申請が増える年末や期末に重なったりすれば、もっと時間がかかると予想されます。
もちろん、審査に通らなったらまた別の融資に申し込まなければなりません。

それを踏まえて、新創業融資の申請は、実際に資金が必要となる2~3か月前までには済ませておき待ちところです。

3-4. 必要書類

新創業融資の申し込みに必要な書類は以下です。

借入申込書 ダウンロードはこちら
創業計画書 ダウンロードはこちら
履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人の場合) 法務局で直接入手するか、「登記ねっと 供託ねっと」を利用し、ネット上で請求することで入手することができます。
登記ねっと 供託ねっとはこちら
設備資金を申し込む場合は見積書 設備の購入予定先に設備に関する見積書を作成してもらうことで入手することができます。
担保希望する場合は、不動産の登記簿謄本または登記事項証明書 入手方法は法人の履歴事項全部証明書と同様に、法務局で直接入手するか、「登記ねっと 供託ねっと」を利用し、ネット上で請求することで入手することができます。
登記ねっと 供託ねっとはこちら
生活衛生関係の事業を営むものは、都道府県知事の「推せん書」または生活衛生同業組合の「振興事業に係る資金証明書」 資金証明書のダウンロードはこちら

ただ、新創業融資に必要な書類はこれだけではありません。
審査に向けて任意で提出したほうがいいとされている書類があります。
日本政策金融公庫のホームページでは、「計画についての資料や資産・負債のわかる書類など」と記載されていますが、具体的には以下のような書類を用意するといいでしょう。

◎月別収支計画書(資金繰り計画書)

創業計画書を補強するものとして提出するものです。
月別の売上高や売上原価(仕入れ値)、諸経費(人件費、家賃など)、利益などを計算し、その算出根拠も提示します。

◎賃貸借契約書、または賃貸借予約契約書

事務所や店舗の賃貸契約書です。
これから契約する場合は、予約契約書でもかまいません。

自己資金がある場合には、預金通帳や有価証券などを見せるのも効果的ですが、自己資金がない場合には提出できませんので、そのかわりに創業計画書や月別収支計画書を入念に作成しましょう。

3-5. 申し込み方法と流れ

必要書類が揃ったら、申し込みをします。
申し込み方法は、

◎法人の場合:本店所在地にある日本政策金融公庫の支店
◎個人の場合:創業予定地近くにある日本政策金融公庫の支店

に提出、または郵送します。
各支店の所在地や住所は、「店舗案内」から探してください。

ちなみに申し込みからの流れは以下の通りです。

1)申し込み:近くの支店に書類を提出、または郵送します。

 ▽

2)面談・審査:面談では事業計画などについて聞かれます。

 ▽

3)融資決定:融資が決まると、契約書類が送られてきます。

 ▽

4)融資:契約の手続きが完了すると、口座に融資金が入金されます。

 ▽

5)返済:基本的には月賦払いで返済します。

3-6. 自己資金なしで日本政策金融公庫の創業融資を受けるコツ

ここまで、自己資金がなくても受けられる創業融資と、その詳細について説明してきました。
が、やはり自己資金なしでの融資申請は、自己資金がある人に比較して通りにくいものです。

そこで、自己資金なしで創業融資の審査に通るためのコツを挙げておきましょう。

◎現在働いている会社と同業で独立開業する

これは、日本政策金融公庫の新創業融資を自己資金なしで受けるための条件の一つです。
(もちろん、異業種での企業であっても、特定創業支援等事業の支援を受けていれば、新創業融資に申し込みはできます。)

と同時に、融資審査の際には、まったく異業種での創業に比べて事業で収益を上げる見込みがあるとして、プラスに働く可能性が期待できるのです。

◎事業計画書を緻密に作成する

事業計画書の内容は、融資の際に非常に重視されるポイントです。
そのため、実現性が高く説得力のある計画が必要です。

市場調査などエビデンスとなるデータをなるべくたくさん集め、資金繰りの計画を具体的に試算し、それを踏まえた返済計画も立てましょう。

◎認定支援機関に相談する

「2-2. 日本政策金融公庫の 中小企業経営力強化資金」で説明しましたが、認定支援機関に相談してそのあっせんで融資を申し込むことで、日本政策金融公庫の融資審査に通りやすくなると言われています。
そこでまず、認定支援機関に相談してみることをおすすめします。

事業計画書の作成もサポートしてもらえますので、より審査に有利な申請ができるでしょう。

4. 自己資金に含めることができるもの

自己資金に含めることができるもの

さて、ここまでは「自己資金なし」で創業融資を受けるための方法をいろいろと考えてきました。
が、もう一度考えてみてください。
あなたには本当に自己資金がまったくないのでしょうか?

実は、「これも自己資金に含まれるの⁉」と意外に思われるようなものが、自己資金と認められるのです。
それを含めれば、あなたにも自己資金があるとみなされ、創業融資を受けられるチャンスが広がるかもしれません。

以下に自己資金と認められるものをリスト化しましたので、チェックしてみてください。

◎自己資金と認められるもの

基本的に自己資金と認められるのは、「自分の財産のうち、出所がはっきりしているもの」です。

退職金 起業のために勤めていた会社を辞める際、退職金が出るのであれば、それは自己資金として認められます。
生命保険の解約金 生命保険をかけているなら、それを解約した解約金を自己資金にできます。
親族からの贈与金 親族から贈与されたお金は、自己資金とみなされます。
相続したお金 遺産相続で得たお金も同上です。
資産や持ち物を売却したお金 不動産や車、貴金属など自分の資産を売却して得たお金も、自己資金に繰り入れることができます。
みなし自己資金 すでに起業している場合、その創業にかかった設備投資などの費用を自己資金とみなしてもらえる可能性があります。
第三者割当増資 株式会社にする場合、株式を発行して第三者に引き受けてもらうことで資金を調達しますが、その資金も自己資金とされます。

反対に、自己資金として認められないものもありますので、以下を参照してください。

◎自己資金と認められないもの

逆に、自己資金と認められないのは、「自分自身で貯めた、手に入れたと証明できないもの」です。
預貯金通帳を確認されますので、そこに記載がないお金や、突然大金が入金されてその出所がはっきりしない、もしくは以下の理由である場合は、自己資金とは認められません。

他の金融機関からの融資金 たとえば消費者金融などから借り入れて自己資金だと装っても、それは自己資金とはみなされません。
タンス預金 自分で貯めたお金でも、預貯金通帳でその経緯が確認できなければ自己資金とは認められません。
親族や知人からの借入金 借り入れたお金は負債であって試算ではないので、認められません。

以上を踏まえて、もし自己資金として認められるものがあれば、それをもとに融資を受けてください。
同じ事業計画であれば、自己資金なしより自己資金ありのほうが、融資審査には有利だからです。

5. 融資のために自己資金を増やす7つの方法

融資のために自己資金を増やす7つの方法

意外なものが自己資金と認められることがわかりましたね。
となると、それを踏まえて自己資金を「増やす」こともできるはずです。

この章では、自己資金をコツコツ貯めることなく、ゼロから「一気に増やす」方法について考えていきましょう。

5-1. 出資をつのる

起業家として、資金づくりでまずトライしたいのは、出資をつのることです。
事業計画に賛同してくれる投資家を探したり、クラウドファンディングをつのるなどして、資金を集めることができます。

出資については、別記事「ベンチャーが資金調達できる10の方法|メリット・デメリットを解説」でも説明していますので、参照してください。

ただし、出資を受けた資金を自己資金として認めてもらうためには、何のための資金なのか、それを使って自分はどのような事業を実現したいのかなど、使途や意図を明確に説明できることが必要です。
それがないと、自己資金として認められない恐れがありますので、注意してください。

5-2. 「現物出資」を申告する

創業時に必要な設備などを、もともと自分が持っていたものでまかなう場合、その「物」を「自己資金」として認める場合があります。
これを「現物出資」と呼び、たとえば以下のようなものが認められます。

◎車
◎パソコン、OA機器
◎有価証券
◎不動産
◎事業で扱う商品やその原材料

などです。

これらを持っていて、そのまま事業用に流用するのであれば、これを融資の際に自己資金として申告するという方法もあります。

5-3. 「みなし自己資金」を申告する

また、起業のために事前に使った費用も、自己資金として申告することができます。
これを「みなし自己資金」と呼んでいます。

たとえば、事業のために必要な製造機器やパソコン、営業車両などを購入したために、もともとあった自己資金を使い切ってしまった場合、その購入費用分を自己資金と認める、ということです。

ただし、その場合は購入時の領収書や口座からの引き落とし履歴など、「本来はあった自己資金で、これらを購入した」ということが証明できる資料を、融資申し込みの際に提示する必要がありますので、それらを用意しておいてください。

5-4. 保険を解約する

積立金のある保険を契約しているなら、それを解約して積立金分を自己資金にするのもひとつの方法です。
この場合、解約して積立金が入金されてからでなければ、自己資金として扱うことができません。
もしこの方法をとるなら、融資申請前に積立金が口座に入るよう早めに手続きしましょう。

5-5. 親族から贈与を受ける

「4. 自己資金に含めることができるもの」で説明したように、親族からの借り入れは自己資金にはなりませんが、贈与されたお金は自己資金として認められます

そこで、お金を出してくれるという親族がいる場合は、借金ではなく贈与にしてもらうといいでしょう。

その場合、親族であっても贈与契約書をつくることがポイントです。
契約書などの正式な文書がないと、「融資を受けるために一時的に借りたお金を『贈与』と偽っているのではないか」という、いわゆる「見せ金」の疑いをもたれてしまうからです。

また、親族にもその旨を納得してもらい、もし融資審査の担当者から問い合わせがあった際に、きちんと説明してもらえるようにしておいてください。

5-6. 資産を売却する

もし、ある程度価値のある動産や不動産があるなら、それを売却するという手もあります。

車、土地、パソコンなどの機器といった資産価値を持っているけれど、事業には使わないので「みなし自己資金」とは認められない、というケースもあるでしょう。
その場合は、いっそ売ってしまってそのお金を自己資金にする、ということも考えてみましょう。

5-7. 退職金をもらう

勤めている会社を辞めて開業する場合、退職金がもらえるケースも多いでしょう。
その場合は、退職金も自己資金と認められます。

条件によっては、まだ受け取っていない退職金を「受け取り予定」として自己資金に組み入れることも可能です。
ただしその際は、勤めている会社から「退職金を支払う」ことを証明する書類をもらって、融資申請書類とともに提出することが求められます。

くわしくは、申請の相談時に確認しましょう。

6. 自己資金なしで創業融資を受ける際の注意点

自己資金なしで創業融資を受ける際の注意点

さて、結局どんな方法でも自己資金ができなかった、という場合は、やはり2章で挙げた融資方法に申請することになります。
その場合、知っておくべき注意点がありますので、以下に挙げておきましょう。

6-1. 融資額は少なくなる

一般的に自己資金が多いほど、融資を受けられる限度額は大きくなります
逆に言えば、自己資金が少ないと、融資額も小さくなります。

たとえば日本政策金融公庫の新創業融資の場合、自己資金の9倍まで借りられる規定になっていますが、実際の相場としては2倍程度の場合が多いと言われます。

となると、自己資金なしでもし融資を受けられても、融資額は希望額より少なくなってしまうことが予想されるでしょう。
本来必要とする創業資金全額は借りられない恐れがあることは知っておいてください。

6-2. 金利が高くなる

融資を受ける際の金利は、融資額や返済期間などさまざまな要素で決まりますが、自己資金もその決定要素に関係します。

特に信用保証協会の保証付き融資の場合、自己資金がないと、自己資金がある場合に比べて1~2%金利が高く設定されるとも言われています。
なるべく低金利で借り入れたい、というのは事業者に共通する希望でしょうから、これは大きなデメリットだと言えます。

6-3. 一時的な「見せ金」はいずれバレる

自己資金がない人で、融資の申請のためだけに一時的にお金を用意して預貯金を多く見せる、いわゆる「見せ金」という不正を行うケースがあります。
「融資が降りたらすぐ返すから」といって、親族や知人などに借りて、融資後にすぐ返済する、という方法です。

これは一見いいやり方に思えるかもしれませんが、絶対にしないようにしてください。

というのも、このような不正をする人が多くあるので、融資審査をする担当者も警戒しています。
預貯金通帳を確認する際に、急に大金が入金された記録があるなど、不審な履歴があれば、「これはどんな経緯で入金されたのか」「何のお金か」と追及されて結局はバレてしまいます。

不審に思われれば融資はおりませんので、「見せ金」はやめましょう。

7. 創業融資以外で創業資金を調達する方法

融資以外で創業資金を調達する方法

ここまでさまざまに手を尽くしても、やはり自己資金なしでは融資が下りなかった、という可能性も大いにあります。
その場合は、他の資金調達方法を考えなければなりません。

この章では、創業融資を受ける以外に創業資金を調達できる方法を紹介します。

7-1. 共同経営者と組む

ひとつは、資金を持っている共同経営者を見つけることです。
共同経営者の資産を「自己資金」として申請することができるので、融資が降りる可能性が高まります。

また、創業資金の必要額を持っている人と組めれば、そもそも融資を受ける必要はありません。

自分ひとりではなく、誰かと一緒に創業することも検討してみるといいでしょう。

7-2. 助成金・補助金をもらう

実は、国では新しい事業を始めようという起業家を支援する政策を多く実施しています。
その一環として、新規創業向けの助成金や補助金もいろいろと用意されているので、それを利用して創業資金にあてる、という方法もあります。

どんな支援制度があるかは、経済産業省・中小企業庁が運営する中小企業向け補助金・総合支援サイト「ミラサポplus」で検索することができますので、調べてみてください。

7-3. カードローンを利用する

また、手軽な方法としてはカードローンなどもあります。
銀行やノンバンクなどさまざまな金融機関がカードローンを取り扱っていて、気軽に契約、融資を受けられるようになっています。

限度額はまちまちですが、1,000万円程度借り入れできるものもあるので、業種・業態によっては創業資金として十分に利用できるでしょう。

ただし、上限金利が14~18%程度のものが多く、各種創業融資に比べてかなり金利が高くなるので要注意です。

8. まとめ

いかがでしたか?
自己資金なしでも創業融資を受ける方法がよくわかったことでしょう。

では最後に、記事の内容をまとめてみましょう。

◎自己資金なしで創業融資を受ける5つの方法は、
・日本政策金融公庫の新創業融資制度
・日本政策金融公庫の 中小企業経営力強化資金
・日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)
・自治体の制度融資(信用保証協会の保証付き融資)
・銀行・信用金庫の融資(信用保証協会の保証付き融資)

◎自己資金なしで創業融資を受ける際の注意点は、
・融資額が少なくなる
・金利が高くなる
・一時的な「見せ金」は通用しない

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  • ローン商品や給付金等の情報は、特に断りがない限り記事公開現在のものです。最新の情報は各金融機関のホームページや公式サイトでご確認ください。
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