中小企業の資金繰りを改善する方法|新型コロナウイルス感染症による資金繰り支援制度も解説

中小企業の経営では、運転資金を確保しながら資金不足にならないようにする資金繰りが極めて重要です。ここでは、そもそも資金繰りが悪化する理由を整理するとともに、具体的な改善方法を紹介します。また、新型コロナウイルス感染症による資金繰りを支援する制度についても見ていきます。
目次
- 資金繰りが悪化する理由とは
- キャッシュインが減少
- キャッシュアウトが増加
- 資金繰り改善の具体策
- 売掛債権の早期回収・未回収をなくす
- 支払期日の条件を改善
- 資産の売却
- 在庫処分
- 借入で資金調達
- 新型コロナウイルス感染症による資金繰り支援制度
- 新型コロナウイルス感染症特別貸付
- 危機対応融資
- 新型コロナウイルス対策マル経融資
- 特別利子補給制度
- 資金繰り・資金調達をサポート
- 資金調達freee:複数の金融商品を簡単に比較・申込ができる
- 事業用クレジットカード:freeeカード
- まとめ

資金繰りが悪化する理由とは
資金繰りとは、会社の資金の流れを把握して残高を管理していくことです。資金が足りなくなれば、仕入れ代や外注費、オフィスや店舗の維持費、人件費などを支払えなくなり、最悪の場合は倒産に至ります。また、売上があっても、支払いと入金のタイミングが合わないために黒字倒産という事態に陥ることもあります。
業種にもよりますが、一般には3カ月分の運転資金が手元にないと資金不足が懸念されます。資金繰りが悪化する理由は、キャッシュインの減少またはキャッシュアウトの増加の2つに大別できます。まずは、自社の資金繰りがどんな原因で悪化しているのか、明確にすることから始めましょう。
キャッシュインが減少
キャッシュインが減少する理由は、大きく次の3つです。
売上が減少
売上が減少すれば、当然ながら運転資金に充当するはずの利益を生み出せません。業種によっては、季節や天候の影響を受けることもあります。
費用が増加
仕入れ費や販売管理費が増加して収益率が下がれば、手元に残る利益が減少します。
売掛債権の回収が遅い・未回収
売掛金が入金されるまでの期間が長い場合、手元に資金がない状態が長くなるため、資金繰りが苦しくなる大きな要因となります。また、貸倒れによる未回収があれば、キャッシュインが減少します。
キャッシュアウトが増加
キャッシュアウトが増加する理由には、次の4つが挙げられます。
過剰な設備投資・規模拡大
過剰な設備投資や規模拡大は、資金繰りの悪化を招きやすくなります。とくに借入によって資金を調達する場合は、キャッシュフローが悪化しないか慎重に判断する必要があります。
過剰在庫
大量の在庫を抱えてしまうと、キャッシュインとキャッシュアウトのバランスが崩れ、資金繰りが悪化しやすくなります。また、在庫をストックしておく場所が必要になったり、光熱費が余分にかかったりするなどの管理コストも発生します。
早期支払
売掛金の入金よりも仕入れなどの支払期限が早くなっている場合、キャッシュアウトが増加し、資金繰りに大きな影響が出ます。
借入金の返済
無計画に借入金を増やしてしまうと、金利を含めて支払いが増大し、資金繰りを圧迫してしまいます。
資金繰り改善の具体策
では、資金繰りを改善するにはどのような対策をとるべきなのでしょうか。具体的な改善策を一つずつ見ていきましょう。
売掛債権の早期回収・未回収をなくす
売掛金は可能な限り、早期に回収することが重要ポイントです。回収期日については取引先との交渉が必要なこともありますが、うまくいけば資金繰りを大幅に改善できます。
また、売掛債権には貸倒れリスクもあるため、取引先の与信管理も徹底する必要があります。手形はできる限りなくし、現金での取引とすれば手形不渡りのリスクがなくなります。取引内容によって代金引換や銀行振込といった現金決済を適用するなど、回収ルールを見直して、未回収を減らす仕組みを作ることも検討しましょう。
支払期日の条件を改善
早期回収とあわせて検討したいのが、支払期日の条件です。取引先との交渉を要しますが、支払い期日はできるだけ遅くするよう努めることで、資金繰りに余裕が生まれます。ただし、支払期日の延長は取引先がリスクを抱えることになるため、交渉は慎重に行う必要があります。
資産の売却
資産の売却では、売掛債権を売却するファクタリングがあります。売掛金の入金期日まで待たなくてもすぐに現金化できる点がメリットです。
ファクタリング会社によっては最短で即日、遅くても数日以内に入金されます。担保や保証人の必要がなく、素早く資金繰りを解決できる方法として昨今利用者が増えています。ただし、ファクタリング会社に手数料を支払うことになるので、本来の売掛金よりも入ってくる金額が少なくなる点に注意しましょう。
ほかにも、資産の売却による資金繰りの改善では、稼働していない不動産や設備などの遊休資産を見直すという方法もあります。管理費や固定資産税の削減につながります。
在庫処分
不良在庫を抱えたままにしておくと管理コストも増大するため、できるだけ早く処分しましょう。売却できれば資金を増やすことが可能です。在庫管理を徹底し、売れない在庫を抱えないよう短期サイクルを意識することも重要です。
借入で資金調達
資金繰りの悪化が予想される場合は、借入により資金調達するという方法もあります。借入先では、主に日本政策金融公庫、銀行、ノンバンクのほか、自治体が窓口となっている制度融資を利用する方法があります。
このうち、日本政策金融公庫や制度融資は中小企業の経営支援を目的としているため、借入先として優先的に検討すべきです。低金利で借りられるため、返済の負担が低いというメリットもあります。
銀行のプロパー融資は基本的に業績や信用力が審査されるため、赤字経営が続いている場合の借入は難しいと思っていたほうがよいでしょう。
ノンバンクは銀行よりも審査のハードルが低いのが一般的ですが、金利が高いというデメリットがあります。短期的なつなぎ資金として利用できる点で利便性がありますが、後々の資金繰りに悪影響が出ないよう慎重に検討する必要があります。
新型コロナウイルス感染症による資金繰り支援制度
新型コロナウイルス感染症の影響によって売上が減少し、資金繰りに深刻な影響が出ている中小企業は少なくありません。政府は中小企業を支援するため、さまざまな資金繰り支援制度を打ち出しています。
ここでは、新型コロナウイルス感染症関連の支援内容を紹介します(2020年11月17日時点)。
参照:経済産業省|新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf
新型コロナウイルス感染症特別貸付
日本政策金融公庫では、新型コロナウイルス感染症により一時的に業績が悪化している中小企業・小規模事業者に向けて「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を行っています。この制度のポイントは、次の3つです。
- 融資後3年間を最長として基準金利から0.9%引き下げ(特別利子補給制度を利用すれば実質無利子)
- 据置期間は最長5年間
- 各公庫の既往債務の借り換えも可能
個人事業主や小規模事業者を対象としている「国民生活事業」と、中小企業を対象とした「中小企業事業」に分けて詳細を以下にまとめました。
▼国民生活事業:新型コロナウイルス感染症特別貸付
対象者 | 以下の1、2のいずれかに該当し、中長期的には業績回復が見込まれる方 1)最近1カ月の売上高が前年または前々年の同時期に比べて5%以上減少 2)業歴3カ月以上1年1カ月未満の場合、最近1カ月の売上高が次のabcいずれかと比較して5%以上減少 a.最近1カ月を含む過去3カ月の平均売上高 b.令和元年12月の売上高 c.令和元年10月~12月の平均売上高 |
資金使途 | 新型コロナウイルス感染症の影響にともない必要となる設備資金および運転資金 |
融資限度額 | 8,000万円 |
返済期間 | ・ 設備資金:20年以内(うち据置期間は5年以内) ・ 運転資金:20年以内(うち据置期間は5年以内) |
利率 | 基準金利1.26~1.65% 当初3年間は基準金利-0.9%、4年目以降は基準金利 ※ただし、4,000万円を超える部分は基準金利 |
担保 | 無担保 |
▼中小企業事業:新型コロナウイルス感染症特別貸付
対象者 | 以下のいずれにも該当する方 1)最近1カ月の売上高が前年または前々年の同時期に比べて5%以上減少、あるいは同様の状況が認められること 2)中長期的には業績回復が見込まれること |
資金使途 | 新型コロナウイルス感染症の影響にともない必要となる設備資金および運転資金 |
融資限度額 | 直接貸付6億円(別枠) |
返済期間 | ・ 設備資金: 20年以内(うち据置期間は5年以内) ・ 運転資金: 15年以内(うち据置期間は5年以内) |
利率 | 基準金利1.11%~ ※貸付期間によって異なる 融資後3年間は基準金利-0.9%(2億円まで)、4年目以降は基準金利 |
担保 | 無担保 ※5年ごとに金利見直し制度の選択が可能 |
危機対応融資
商工中金が行っている、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者向け融資です。この制度のポイントは以下の3つとなります。
- 信用力・担保によらず一律金利を実施
- 融資後3年間を最長として基準金利から0.9%引き下げ(特別利子補給制度を利用すれば実質無利子)
- 据置期間は最長5年間
概要は以下の通りです。
対象者 | 新型コロナウイルス感染症の影響により一時的に業績が悪化し、次の1、2のいずれかに該当する方 1)最近1カ月の売上高が前年または前々年の同時期に比べて5%以上減少 2)業歴3カ月以上1年1カ月未満の場合、店舗数の増加や合併、業種転換などで売り上げ増加に直結する設備または雇用等の拡大をしているなど(ベンチャー・スタートアップ企業含む)、同時期の比較ができない場合は、次のいずれかと比較して5%以上減少している a.最近1カ月を含む過去3カ月の平均売上高 b.令和元年12月の売上高 c.令和元年10月~12月の平均売上高 |
資金使途 | 新型コロナウイルス感染症の影響にともない必要となる設備資金および運転資金 |
融資限度額 | 直接貸付6億円 |
貸付期間 | ・ 設備資金: 20年以内(うち据置期間は5年以内) ・ 運転資金: 15年以内(うち据置期間は5年以内) |
利率 | 日本政策金融公庫の基準金利を下限 融資後3年間は基準金利-0.9%(2億円まで)、4年目以降は基準金利 |
担保 | 無担保 |
新型コロナウイルス対策マル経融資
小規模事業者経営改善資金融資を通称「マル経」といいます。商工会議所などから経営指導を受けている小規模事業者に対して、日本政策金融公庫が行っている融資制度です。借入には、商工会議所などの推薦が必要です。
概要は以下の通りです。
対象者 | 次の1、2いずれかに該当する方 1)新型コロナウイルス感染症の影響により、最近1カ月の売上高が前年または前々年の同時期に比較して5%以上減少している小規模事業者 2)前年および前々年との比較が望ましくない場合において、最近1カ月の売上高が以下のいずれかと比較したときに5%以上減少している方 a.最近1カ月を含む過去3カ月の平均売上高 b.令和元年12月の売上高 c.令和元年10月~12月の平均売上高 |
資金使途 | 新型コロナウイルス感染症の影響にともない必要となる設備資金および運転資金 |
融資限度額 | 1,000万円(別枠) |
貸付期間 | ・ 設備資金10年以内(うち据置期間は4年以内) ・ 運転資金 7年以内(うち据置期間は3年以内) ※いずれも据置期間は別枠の1,000万円以内 |
利率 | 1.21% 当初3年間は-0.9% |
担保 | 無担保 |
特別利子補給制度
日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」「新型コロナウイルス対策マル経融資」および商工中金の「危機対応融資」の利用者には、実質無利子となる「特別利子補給制度」が設けられています。
概要は以下の通りです。
適用対象 | 「新型コロナウイルス感染症特別貸付」新型コロナウイルス対策マル経融資」「危機対応融資」申込時点での最近1カ月またはその後2~3カ月間のいずれかの1カ月が前年または前々年同月と比較し、以下の要件を満たしている場合 ①個人事業主:要件なし ②小規模企業者:売上高15%減少 ③中小企業等:売上高20%減少 |
利子補給期間 | 借入後の当初3年間(最長) |
補給対象貸付上限額 | 1,国民生活事業:4,000万円 中小企業事業・商工中金:2億円 ※利子補給上限額は、新規融資と公庫などの既往債務借り換えとの合計額 |
資金繰り・資金調達をサポート
この記事をご覧になっている方は、普段から資金繰りの状況についてチェックなさっているでしょうか。会計freeeのユーザーアンケートによると、定期的に資金状況についてチェックしている方は約50%、確認の方法は預金残高通帳です。
キャッシュは企業存続の命綱です。キャッシュフローや今後の資金繰り予測などは会社経営の重要な要素の一つであり、資金調達は企業継続・繁栄の重要な手段です。
ただし、資金繰りや資金調達は難しい、よくわからない。そう思っている方も多いのではないでしょうか。
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資金調達freee:複数の金融商品を簡単に比較・申込ができる
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事業用クレジットカード:freeeカード
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「独立する前にクレジットカードを作っておくように」と勧められたことはありませんか?一般的に、個人事業主、フリーランス、経営者などご自身で事業を運営するようになると、クレジットカードの審査に通りにくくなると言われています。
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まとめ
新型コロナウイルス感染症により、先行きが見えなくなっている中小企業は少なくありません。政府が行っている支援制度は随時更新されているので、最新の情報をチェックするようにしましょう。
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* この記事は2020/12/07時点の情報をまとめたものです。
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