2021年5月26日 基礎知識

日本政策金融公庫とは?

日本政策金融公庫とは、個人事業主・フリーランスなどの小規模事業者や中小企業の支援を目的とした政府系金融機関です。資金の使途や業況に応じた様々な融資制度を提供しています。

小規模事業者や中小企業が外部から資金調達をする場合、まず検討するべきなのが日本政策金融公庫といっても過言ではないでしょう。そこで本記事では、日本政策金融公庫から資金を借入するメリットや申し込み方法、注意点などについて詳しく紹介します。

日本政策金融公庫とは?

目次

日本政策金融公庫とは

日本政策金融公庫は、個人事業主や小規模事業者・中小企業を対象に融資を行う政府系金融機関です。行政改革の一環で2008年に「国民生活金融公庫」、「中小企業金融公庫」、「農林漁業金融公庫」、「国際協力銀行」の4つの政策金融機関が統合され、新たに生まれた組織です。

現在は、大きく分けて3つの事業分野で融資制度を提供しています。

国民生活事業 個人事業主やフリーランス、小規模企業向けの小口資金や新規開業資金、教育ローンなどを融資。融資額の平均は約700万円。短期の運転資金も取り扱いあり。
中小企業事業 中小企業向けの長期事業資金を融資。融資額の平均は約1億円。短期の運転資金は取り扱いなし。
農林水産事業 農林漁業や国産農林水産物を取り扱う加工流通分野の長期事業資金を融資。

このうち、国民生活事業と中小企業事業について詳しく解説します。

国民生活事業の融資制度

国民生活事業の融資制度には、新規創業や新規事業を支援するものからセーフティネット融資まで、様々な種類があります。ご自身の事業の規模や状況に合わせて融資制度を申し込みましょう。

なお「融資期間」のなかで「据置期間」とありますが、これは元金返済が猶予され利息だけを払う期間のことです。

融資制度 利用対象 融資限度額 融資期間
(うち据置期間)
一般貸付 事業を営む人 運転資金と設備資金は4800万円、特定設備資金は7200万円 設備資金:10年以内(2年以内)
特定設備資金: 20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(1年以内)
経営環境変化対応資金 売上が減少するなど業況が悪化している方 4,800万円 設備資金:15年以内(3年以内)
運転資金: 8年以内(3年以内
取引企業倒産対応資金 取引企業などの倒産により経営に困難を来している人 別枠(※)3,000万円 運転資金: 8年以内(3年以内)
新規開業資金 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 7,200万円
(うち運転資金4,800万円)
設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
女性、若者/シニア起業家支援資金 女性または35歳未満か55歳以上の方であって、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 7,200万円
(うち運転資金4,800万円)
設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
新事業活動促進資金 経営多角化、事業転換などにより、第二創業などを図る人 7,200万円
(うち運転資金4,800万円)
設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
マル経融資(小規模事業者経営改善資) 商工会議所、商工会または都道府県商工会連合会の実施する経営指導を受け、推薦を受けた方 2,000万円 設備資金:10年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(1年以内)
新創業融資制度 新たに事業を始める方または事業開始後で税務申告を2期終えていない人 3,000万円(うち運転資金1500万円) 各融資制度に定める返済期間以内
新型コロナウイルス感染症特別貸付 新型コロナウイルス感染症の影響により、売上が減少するなど業況が悪化している人 別枠(※)6,000万円 設備資金:20年以内(5年以内)
運転資金:15年以内(5年以内)

(※)別枠とは既存の借入とは別にという意味です。

中小企業事業の融資制度

日本政策金融公庫は、中小企業向けにも国民生活事業と同様の融資を提供しています。2事業の違いは融資限度額や融資対象です。申し込み可能かどうかは、業種や企業規模(資本金・従業員数)によって定められているため、事前に「融資対象」かどうかを確認しましょう。

融資制度 利用対象 融資限度額 融資期間
(うち据置期間)
新事業育成資金 新規性、成長性のある事業を始めておおむね5年以内の人など 6億円 設備資金:20年以内(5年以内)
運転資金:7年以内(2年以内)
経営環境変化対応資金 売上が減少するなど業況が悪化している人 7億2000万円 設備資金:15年以内(3年以内)
運転資金: 8年以内(3年以内)
取引企業倒産対応資金 取引企業などの倒産により経営に困難を来している人 別枠 1億5000万円 運転資金: 8年以内(3年以内)
女性、若者/シニア起業家支援資金 女性または35歳未満か55歳以上の方であって、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 7億2000万円(うち運転資金2億5000万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
新事業活動促進資金 「経営革新計画」の認定を受けた人、経営多角化、事業転換などにより第二創業などを図る人など 7億2000万円(うち運転資金2億5000万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
企業活力強化資金 卸売業、小売業、飲食サービス業またはサービス業を営み、店舗の新築・増改築や機械設備の導入を行う人など 7億2000万円(うち運転資金2億5000万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金:7年以内(2年以内)
企業再建資金 経営改善または経営再建等に取り組む人など 7億2000万円 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金:15年以内(一定の要件を満たす場合は20年以内)(2年以内)
新型コロナウイルス感染症特別貸付 新型コロナウイルス感染症の影響により、売上が減少するなど業況が悪化している人 別枠3億円 設備資金:20年以内(5年以内)
運転資金:15年以内(5年以内)

上の表で紹介した融資制度以外にも日本政策金融公庫は多くの融資制度を提供しています。詳細はホームページの「融資制度一覧から探す」をご確認ください。「農林水産事業」の融資制度も詳しく記載されています。

日本政策金融公庫のメリット

日本政策金融公庫は、中小企業や個人事業主を支えることを目的としています。このため、小規模事業者にとっては大きなメリットがあります。

審査を受けやすい

まず銀行のプロパー融資と比較すると融資を受けやすい点です。銀行や信用金庫からの融資を断られても、日本政策金融公庫に申し込んだら審査に通ったという話もあります。

借入実績が信用になる

日本政策公庫から融資を受け滞りなく返済すると、それが実績になり信用が増します。その結果、日本政策金融公庫以外の金融機関からも資金を借りやすくなります。

低金利で借入ができる

申し込み条件にもよりますが、金利は概ね1〜2%。金利が低いだけではなく、創業融資など無保証で資金が借りられる融資制度もあります。

日本政策金融公庫から借入ができないケース

事業のオーナーが個人で持つクレジットカードや公共料金の支払いに多数の遅延や未払いがある場合、借入を断られる可能性があります。

審査のための経営計画に矛盾があったり、資料で説明した内容と面接での話に一貫性がない場合なども審査に通りにくくなると思った方が良いでしょう。

審査通過の可能性を高めるためにも、普段から支払い遅延をせず、審査面接のための書類準備などは念入りに行いましょう。

日本政策金融公庫から融資を受けるために必要なもの

日本政策金融公庫から借入したい場合、まずは窓口や電話で問い合わせをします。

問い合わせの流れ

  • 個人事業主・フリーランスなどの小規模事業者や個人企業はこちら
  • 中小企業はこちら

具体的な相談をする場合は書類を用意する必要があり、事業規模によって必要なものが異なります。

また、新型コロナウイルスの影響で業況が悪化している場合、実質無利子・無担保で融資を受けることも可能です。詳細は、日本政策金融公庫のトップページで随時最新情報が発信されていますので、そちらをご確認ください。

個人事業主最近2期分の申告決算書見積書(設備投資希望の場合)
法人(小規模)最近2期分の確定申告書・決算書(勘定科目明細書を含む)最近の試算表見積書(設備投資希望の場合)
法人(中規模)会社案内、製品カタログなどの参考資料法人の登記事項証明書最新3期分の決算書・税務申告書納税証明書最近の試算表見積書(設備投資希望の場合)担保の内容がわかる資料(登記事項証明書など)
新規創業時創業計画書見積書(設備投資希望の場合)履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人の場合)不動産の登記簿謄本または登記事項証明書(担保を希望の場合)

書類を提出し、面談や会社訪問を経て審査に通れば融資開始です。申込み方法や必要書類の詳細に関しては下記の記事をご参照ください。

公庫の借入とは?日本政策金融公庫を活用しよう
日本政策金融公庫の借入申込書の入手方法と書き方

一般的に、申し込みから融資実行までは1ヶ月以上は見ておいた方が良いでしょう。ビジネスローンやファクタリングなどと比較すると、申し込みから融資実行までは時間がかかる上に用意する書類も多くあります。

出来るだけスムーズに審査申し込みをするためにも、普段から事業の状況を正確に把握している必要があります。また、すぐに資金が必要な場合は日本政策金融公庫以外の資金調達方法も知っておく必要があります。

資金繰り・資金調達をサポート

この記事をご覧になっている方は、普段から資金繰りの状況についてチェックなさっているでしょうか。会計freeeのユーザーアンケートによると、定期的に資金状況についてチェックしている方は約50%、確認の方法は預金残高通帳です。

キャッシュは企業存続の命綱です。キャッシュフローや今後の資金繰り予測などは会社経営の重要な要素の一つであり、資金調達は企業継続・繁栄の重要な手段です。
ただし、資金繰りや資金調達は難しい、よくわからない。そう思っている方も多いのではないでしょうか。

そこで、freeeでは資金繰り・資金調達をスムーズにおこなうためのサービスを提供しています。

資金調達freee:複数の金融商品を簡単に比較・申込ができる

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事業用クレジットカード:freeeカード

資金調達、資金繰りの手段として最後にご紹介したいのが事業用クレジットカード(ビジネスカード)です。
「独立する前にクレジットカードを作っておくように」と勧められたことはありませんか?一般的に、個人事業主、フリーランス、経営者などご自身で事業を運営するようになると、クレジットカードの審査に通りにくくなると言われています。

まとめ

事業を運営・拡大していく上で資金繰りに関する問題は避けて通れない道です。また、なかなか相談相手がいない話題でもあります。

資金調達freeeや会計freeeのデータを活用して、事業を効率的に運営していきましょう。

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  • ローン商品や給付金等の情報は、特に断りがない限り記事公開現在のものです。最新の情報は各金融機関のホームページや公式サイトでご確認ください。
  • freee資金調達はお客様のサービス選択時の参考情報提供を目的としており、特定の金融機関、ローン商品の優劣を示したものではありません。
  • 各金融機関の審査結果によっては利用できない場合があります。

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