2022年3月9日 基礎知識

飲食店が運転資金の融資を受けるには|資金繰りが悪化したときの対処を解説

飲食店が運転資金の融資を受けるには|資金繰りが悪化したときの対処を解説

飲食店の経営が立ち行かなくなる大きな要因が運転資金不足です。キャッシュレス決済が普及している中で、飲食店の資金繰りは今後ますます重要になってくるでしょう。ここでは、飲食店の資金繰りが悪化する要因とその対処方法を説明するとともに、運転資金の融資を受けられる金融機関と審査のポイントまで解説していきます。

目次

飲食店の資金繰りが悪化する要因と対処方法

飲食店の資金繰りが悪化する要因と対処方法

まずは、飲食店の資金繰りが悪化してしまう要因として多い、4つのケースを見ていきましょう。

キャッシュフローの理解不足

キャッシュフローとは、お金が出入りする流れのことです。入ってくるお金(キャッシュイン)よりも出ていくお金(キャッシュアウト)が多く、手元資金が足りなくなると資金ショートとなります。

また、売上が立っているものの、入金・支払いのタイミングが合わず資金ショートしてしまうのが黒字倒産です。こうした状態を回避するうえで重要となるのが資金繰り表です。「いつ・どれくらいのお金が出入りするのか」を見える化することで、資金繰りを悪化させている要因をつかみやすくなるほか、売上がどれくらい減少すると危険な状態になるのかがわかります。

また、過去の実績をもとに今後の資金繰り予定表を作成しておけば、運転資金が足りなくなる前に資金調達を行うなどの迅速な対策をとれるようになります。飲食店の売上は様々な要因で大きく変動するため、一般に月平均の3カ月分以上の運転資金を持っておくのが理想とされています。自店舗のキャッシュフローを把握するのは、資金繰り改善の第一歩です。

入金と支払いのタイミングが合わない

これまで飲食店は現金商売が主だったため、キャッシュフローをそれほど意識してこなかったかもしれません。しかし、キャッシュレス決済が加速している現在では、入金のタイミングが1カ月先になるなど時間差が生まれています。

支払いのタイミングが入金よりも早い場合、資金繰りが悪化しやすくなります。そのため、入金はできるだけ早く、支払いはできるだけ遅くするのが資金繰りを改善するポイントとなります。キャッシュレス決済はどうしても入金までに時間差ができますが、最近では入金サイクルが短いサービスも出ているのでチェックしておきましょう。

都度払いや前払いで仕入れをしている場合は一括の後払いに変更する、あるいはカード払いにしてもらうなどして支払いを遅くする方法があります。ただし、取引先と交渉する必要があるため、関係性が悪化しないように十分に留意しましょう。

売上の見込みが甘い

想定していたほど売上が伸びず資金繰りが悪化するという状態は、飲食店において多く見られるパターンの一つです。開店直後は話題性があり賑わっていても、それがずっと続くとは限りません。また、常連客で売上をつくっていた飲食店であっても、新しいお店に流れてしまうことは往々にして起こります。

客足が減っている理由がわからず何の対策もとらずにいれば、売上が減少して資金繰りが悪化します。売上を確保するには、新規顧客を集めること、リピート顧客を維持することの2つの取り組みが必要です。

コストをかけすぎている

飲食店のコストで多くを占めるのが、「原価(Food)」「人件費(Labor)」「家賃(Rent)」の3つです。これらの頭文字をとって、FLRコストと呼ばれています。

売上に占めるそれぞれの割合を示したものがFLR比率で、一般に飲食店では以下の値が適正の目安とされています。

●原価(Food):30%以内

●人件費(Labor):20~30%

●家賃(Rent):10~20%

業態によっても比率は変わりますが、トータルで70%以内が適正の目安とされています。これを超えている場合は利益率が低いということになり、資金繰り悪化の大きな原因となります。

とくに飲食店の場合は、売上がなくても発生する固定費として人件費・家賃の占める割合が大きいため、赤字に転換しやすい業種です。コストを適正に保つことは、飲食店経営において極めて重要なポイントとなります。ただし、材料費や人件費は、サービスの質に大きな影響を与える要素となるため、安易に削減して顧客離れを起こさないよう十分に注意する必要があります。

事業拡大の失敗

飲食店の資金繰りが悪化する要因の一つに、事業拡大時の失敗が挙げられます。十分な計画を立てないまま出店数を増やす、または移転による売上拡大を狙ったものの、思ったような売上増ができなかったなどの例がこれに該当します。

事業拡大には多くの資金を投入することになるため、収益が悪化して資金繰りができなくなれば、倒産に至ることもあります。事前に入念なリサーチをすることはもちろん、資金調達をする際に無理のない返済計画にしておくことも重要です。

融資の種類

融資の種類

金融機関から受けられる融資には「プロパー融資」と「信用保証協会による保証付き融資」の2種類があります。まずは、それぞれの特徴を知っておきましょう。

プロパー融資

プロパー融資とは、金融機関と借入人が直接契約して行われる融資のことです。一般に、銀行融資を指します。

プロパー融資のメリットは、借入上限額が高く、金利が低いことです。ただし、銀行は貸し倒れリスクを避けたいため、厳しい審査基準を設けています。そのため、実績や信用度の低い企業は融資を受けにくい点がデメリットです。経営状況が悪化している場合や開業から間もない企業は、ほとんどの場合、融資は期待できないといってよいでしょう。

信用保証協会による保証付き融資

信用保証協会とは、小規模事業者や中小企業が融資を受けるときに保証してくれる公的機関で、各都道府県に設置されています。信用保証協会による保証付き融資とは、借主が返済できなくなった場合に、信用保証協会が金融機関に借入金を代わりに返済(代位弁済)する仕組みがある融資です。

保証付き融資では金融機関の貸し倒れリスクがなくなるため、プロパー融資に比べて審査に通りやすくなります。そのため、小規模事業者が銀行などから融資を受けるときは、信用保証協会を通すのが一般的です。ただし、借入額の0.5〜2%程度の保証料を信用保証協会へ支払う必要があります。

飲食店が運転資金の融資を受けられる金融機関の種類と特徴

飲食店が運転資金の融資を受けられる金融機関の種類と特徴

飲食店が運転資金の融資を受けられる金融機関は、以下の4つです。それぞれに金利や限度額、返済期間などの特徴が異なるため、自店舗に合った金融機関を選ぶことが重要になります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

政府系金融機関

政府系金融機関とは、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫など、政府が全額または一部を出資している金融機関です。

日本政策金融公庫の融資制度の特徴を以下に整理しました。

金利

基準金利2.06%~(無担保の場合)
基準金利1.11%~(担保を提供する場合)
※要件を満たしている場合、特別料率での借入も可能

限度額 一般貸付:4,800万円(個人事業主・小規模事業者対象)
※このほか様々な融資制度があり、別枠の貸付も可能
返済期間 一般貸付:7年(運転資金の場合)
※据置期間を設けている融資制度も多い

メリット

・金利が低い
・無担保・無保証での借入も可能
・経営が悪化した場合の融資制度も設けている

デメリット

・審査に時間がかかる
・審査が厳しめ

日本政策金融公庫は小規模事業者を支援する金融機関のため、様々な融資制度を設けており、無担保・低金利での借入が可能な点が大きなメリットです。ただし、審査に通るには必要書類をしっかり揃えておくことが重要です。また、面談も重視されるため、入念に準備しなければなりません。

このほか、商工組合中央金庫(商工中金)も、個人事業主や小規模事業者への融資を行っています。ただし、融資を受けられるのは、商工中金の株主になっている中小企業団体(商工中金株主団体)とその構成員のみとなるため注意してください。

銀行

メガバンクや地方銀行、ネット銀行などでも運転資金の融資を行っています。民間の銀行はそれぞれに特徴が異なっているため、以下に傾向を整理しました。

金利 おおむね1.0~3.0%
限度額 審査状況や銀行によって変わる
返済期間 おおむね5~7年
メリット 金利が低い借入実績が企業の信用度につながることもある
デメリット 審査に時間がかかる審査が厳しい業績が悪化している場合は審査に通りにくい

銀行の融資は金利が低く、審査によっては大きな資金を調達することも可能です。ただし、銀行のプロパー融資は審査が厳しく、飲食店の運転資金調達ではハードルが高いのが実際です。そのため、基本的に信用保証協会の保証付き融資が中心になります。また、メガバンクは大口融資には強いものの、個人の店舗の借入は厳しくなっています。

信用金庫

信用金庫は、、地域の振興と繁栄のために相互扶助で運営される金融機関です。営利が第一目的ではないため、小規模事業者や個人事業主にも積極的に融資を行っています。

金利 おおむね2.0~4.0%
限度額 審査状況や信用金庫によって変わる
返済期間 おおむね5~7年
メリット 地域密着型なので小規模事業者でも比較的借りやすい
デメリット 金利は銀行より高め小口融資が中心となるため希望額に満たないことがある審査に時間がかかる

信用金庫は地元の商店や地域の中小企業の資金援助に積極的であるため、小規模の飲食店でも融資を受けやすいことが大きなメリットです。ただし、銀行よりも金利は高めになっているので、返済負担は大きくなります。また、融資限度額が銀行よりも低いため、希望する金額の融資を受けられないこともあります。

ノンバンク

ノンバンクとは、消費者金融や信販会社など、融資のみを取り扱う貸金事業者です。特徴は以下の通りです。

金利 おおむね2.0~18.0%
限度額 500万~1,000万円程度
返済期間 おおむね1カ月~5年
メリット 無担保・無保証での借入が可能融資スピードが速い(最短で即日も可能)審査が厳しくない
デメリット 金利が高い傾向小口融資が中心となるため希望額に満たないことがある

ノンバンクのメリットは、審査スピードが速く融資までの期間が短いこと。また、他の金融機関に比べると審査基準が厳しくないため、「すぐにでもつなぎ資金が必要」「他の金融機関で審査に通らなかった」といった場合の選択肢となります。

ただし、ノンバンクは金利が高い点がデメリットです。なかには、法律で決められている上限金利になっているノンバンクもあるため、返済計画をしっかり立てたうえで借り入れる必要があります。

運転資金の融資を受けるときに必要な書類と審査のポイント

運転資金の融資を受けるときに必要な書類と審査のポイント

運転資金の融資を受ける際は、入念な準備が必要です。ここでは、必要書類と審査のポイントを見ていきます。

必要な書類

金融機関によって必要となる書類は異なりますが、一般に融資を申し込む際に必要となる書類には以下のものがあります。

●事業計画書
●資金使途を明記した資料
●損益計算書:店舗の経営成績(損益)を表す書類
●貸借対照表:店舗の資産や負債、純資産が表示された書類
●資金繰り表(キャッシュフロー表):店舗の現金収支をまとめた書類
●試算表
●登記簿謄本

審査のポイント

返済能力のある飲食店と判断できなければ、金融機関は融資をしてくれません。融資を申し込む前に戦略を練って「事業計画書」を作成し、返済できることを金融機関にアピールする必要があります。「何のために、どれくらいの資金が必要なのか」「どのように返済できるのか」といった資金使途や借入の理由、返済計画を明確に示し、審査に通る可能性を高めていくことが重要ポイントです。

また、金融機関は店舗の収益だけでなく、現預金や借入金、純資産なども参考に融資の可否を判断するため、決算書類(損益計算書・貸借対照表・資金繰り表)や試算表の提出を求めます。

資金繰りが悪化している店舗は、どんぶり勘定で経営しているケースが少なくありません。必要書類を揃えることはもちろん、質問されたときに明確に答えられるよう中身をしっかり把握しておくことも重要です。

融資以外で飲食店の資金繰りを改善する方法

融資以外で飲食店の資金繰りを改善する方法

店舗の資金繰りを改善する方法は、融資だけではありません。ここでは、融資以外で飲食店の資金繰り改善に効果的な方法を3つご紹介します。

借入金の返済計画をリスケする

金融機関への返済が資金繰りを圧迫している場合、返済期間のリスケジュールを交渉するという方法もあります。現状を踏まえた無理のない返済計画にすることで、資金繰りを改善できる可能性があります。ただし、リスケジュールをすると、新たな融資は受けにくくなるため注意してください。

助成金・補助金

国や地方自治体が実施している助成金や補助金を受けるのも一つの方法です。助成金や補助金は返済する必要がないため、要件を満たす場合は積極的に活用しましょう。ただし、助成金や補助金は受給額が少ないため、必要な資金のすべてを調達できるわけではありません。また、助成金や補助金を受給できるまでに期間を要する点にも留意しておきましょう。

ファクタリング

ファクタリングとは、売掛債権を売却して入金予定日よりも前に現金化できる仕組みです。すぐにでも資金が必要という場合に検討したい手段の一つです。ただし、手数料が発生します。

「freee資金調達」なら融資の可能性診断ができる

「資金調達freee」なら融資の可能性診断ができる

金融機関に融資を相談する際は、事前に経営状況の把握や経費の見直し、今後の事業計画の策定などが必要となります。また金融機関によって融資の条件や審査基準が異なるため、複数の金融機関を比較・検討することをおすすめします。

とはいえ、店舗を経営しながら、金融機関に相談する時間を確保するのは簡単ではありません。freee資金調達ならWeb上に条件を入力するだけで、さまざまな資金調達手段、金融機関の中から最適なものを選べます。また、実際に融資を受けられる可能性を予測する「可能性診断」の機能も搭載しているため、効率的に融資元を探し出すことができます。ぜひご利用ください。

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