ベンチャーキャピタルの資金調達の現状とメリット・デメリットを解説

「資金を調達するにはベンチャーキャピタルが良いと聞いたけど、どうなのだろう?自社に合う資金調達手段なのだろうか?」
ベンチャー企業やスタートアップの経営者の方の中には、資金調達の1つとしてベンチャーキャピタルから出資をしてもらうことを検討している方もいるでしょう。しかし、実際のところベンチャーキャピタルについてはよく理解していなかったり、自社に合うのか分からなかったりするのではないでしょうか。
ベンチャーキャピタルの出資を受けることは、ベンチャー企業やスタートアップに向いている資金調達手段といえます。後述しますが、ベンチャーキャピタルは事業を始めて間もないベンチャー企業やスタートアップに投資する傾向にあり、近年ではその投資件数と投資額が増えつつあるからです。
さらに、ベンチャーキャピタルからの資金調達には、次のようなメリットもあります。
・無担保で返済義務がない
・ベンチャーキャピタルが持つ経営スキルやノウハウを学べる
・事業提携先を紹介してもらえることがある
・金融機関からの融資を受けやすくなる
ただ、上記のようなメリットがある反面、次のようなデメリットも存在します。
・持ち株を失うことがある
・経営権を握られ、経営方針に従わなければならないこともある
・将来性がないと判断されたら、早期に資金を回収されることもある
・上場準備に負担がかかる
このため、ベンチャーキャピタルからの資金調達を検討するときは、メリットとデメリットを理解し、自社にとってベストなのかを利用する前に見極めることが大切です。
そこでこの記事では、上記のベンチャーキャピタルのメリットとデメリットを詳しく解説すると共に、以下の内容を説明していきます。
・ベンチャーキャピタルからの資金調達が向いている会社の特徴
・ベンチャーキャピタルから資金調達をする方法
・ベンチャーキャピタルからの資金調達に失敗しないためのポイント
この記事を読めば、ベンチャーキャピタルからの資金調達が自社に適しているかを判断できるようになります。ベンチャーキャピタルからの資金調達に興味がある方の参考になれば幸いです。
1. ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達の現状

近年、ベンチャーキャピタル(VC)が企業へ投資する件数は増加傾向にあり、投資額も規模が増えつつあります。これは 「ベンチャーキャピタルからの資金調達に成功している企業が増加傾向にある」とも言い換えられます。
ただ、社会情勢によってベンチャーキャピタルの投資件数や投資額は変わることがあります。直近の2020年上半期時点ではどうだったのか、統計データを用いながら解説していきましょう。
1-1. 投資額は2014年~2019年の6年間で増えてきている
ベンチャーキャピタルの投資件数と投資額は、2014年~2019年の6年間で年々増えてきています。
ベンチャーキャピタルなどの投資動向を調査している一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターが2020年8月に公表した「ベンチャーキャピタル等投資動向調査(2019年度速報)」によると、2019年度の国内ベンチャーキャピタルの投資額は2,124億円で、前年の2018年度の1,706億円と比べると418億円、24.5%増加しています。

出典:ベンチャーキャピタル等投資動向調査(2019年度速報)|一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター
1-2. 2020年上半期時点での投資額は減少傾向にある
2020年2Qの時点ではどうかというと、359.6億円で前年の2019年2Qと比べると169.9億円のマイナス(-32.1%)、2020年1Qと比べると27.8億円のマイナス(-7.2%)で投資額は減少傾向にあります。
業種でいうと、2020年2Qでは「コンピュータ及び関連機器、ITサービス」に投資するベンチャーキャピタルが多く41.1%、次いで「工業、エネルギー、その他産業」、「バイオ、製薬」、「メディア、娯楽、小売、消費財」が続いています。2020年1Qより投資額が増えている業種もありますが、2019年2Qと比べると全ての業種において投資額は減少しています。

出典:ベンチャーキャピタル等投資動向調査(直近四半期 2020年2Q)|一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター
これは、新型コロナウイルスの感染拡大により、社会や経済が不安定になったことが投資額の減少につながっていると考えられます。
ベンチャーキャピタルの今後の投資状況は、新型コロナウイルスの感染拡大状況によって変わることも考えられます。2020年上半期では減少傾向にあった投資額も、状況次第では2014年~2019年の6年間のように増加傾向に戻る可能性もあります。
1-3. 2020年上半期時点での1社あたりの投資額は137億円
ここで、ベンチャーキャピタルの1社あたりの投資額が気になった方もいるでしょう。
ベンチャーエンタープライズセンターが発表した「ベンチャーキャピタル等投資動向調査(直近四半期 2020年2Q)」によると、2020年上半期の場合、ベンチャーキャピタルの1社あたりの投資額は137億円という結果が出ています

※VC…ベンチャーキャピタル
※CVC…コーポレートベンチャーキャピタル(自己資金でファンドを作り、未上場のベンチャー企業に投資をする組織)
出典:ベンチャーキャピタル等投資動向調査(直近四半期 2020年2Q)|一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター
2019年の上半期の138億円とは僅差で、1社あたりの投資額に関しては減少していないことが分かります。今後の社会情勢によって変動する可能性もありますが、ベンチャーキャピタルは1つの企業に対して比較的大規模な投資を行っていることが分かるでしょう。
1-4. ベンチャーキャピタルの投資のタイミングは「アーリー期」が多い
では、ベンチャーキャピタルはどのようなときに企業へ投資するのでしょうか?
ベンチャーキャピタルは、「投資ラウンド」を参考に企業へ投資しています。投資ラウンドというのは、ベンチャーキャピタルが企業に対して投資する段階を示すものです。
投資ラウンドは、企業の成長段階を示す「事業ステージ(成長フェーズ)」に沿って4段階に分かれています。
投資ラウンド ※ベンチャーキャピタル側 | 事業ステージ(成長フェーズ) ※企業側 |
---|---|
①シードラウンド 企業の準備段階で投資するが、金額は少ない。 | ①シード期 起業前の段階(展開する商品やサービスの試作段階で、ビジネスは展開していない) |
②シリーズA 企業の事業を継続させて軌道に乗せるための資金(運転資金)を投資する。 | ②アーリー期 事業を開始して商品やサービスをリリースし、売り上げが発生している段階 |
③シリーズB 運転資金や設備資金、人件費、販路拡大費など企業の事業をさらに成長させるための資金を投資する。 | ③ミドル期(※) 事業が軌道に乗り始めて黒字化が見えている段階 ※「エクスパンション期」と呼ばれることもある |
④シリーズC 企業の経営がさらに安定し、黒字になる段階で投資する。 | ④レイター期 商品やサービスの認知度が高まり、経営が安定して黒字化し、株式公開(上場)やM&Aを視野に入れる時期 |
一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターが公表している「ベンチャーキャピタル等投資動向調査(直近四半期 2020年2Q)」によると、2020年2Qにおいては、ベンチャーキャピタルは上記の投資ラウンドでいうと「シリーズA」、つまり企業側の事業ステージ(成長フェーズ)でいうと「アーリー期」へ投資するケースが多い結果が出ています。

出典:ベンチャーキャピタル等投資動向調査(直近四半期 2020年2Q)|一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター
1-5. ベンチャーキャピタルが投資する業種は幅広い
「1-4. 投資のタイミングは事業開始直後の「アーリー期」が増加傾向にある」で取り上げた「業種・ステージ別投資実行金額」の表を見ると、ベンチャーキャピタルが投資する業種の広さも分かります。事業ステージ別に投資額を見ても、「半導体、電機一般」を除き、他の業種は全ての事業ステージで出資を受けています。
こうして見ると、ベンチャーキャピタルは幅広い事業分野、そして事業がどの事業ステージでも投資をし、企業を支援していることが分かるでしょう。
昨今の情勢によって投資件数と投資金額は減ってきているものの、比較的どの業種でも、事業が軌道に乗る前の段階でもベンチャーキャピタルから資金調達できる可能性は高いといえます。
2. ベンチャーキャピタルから資金調達を受けるメリット5つ

幅広い分野の事業へ、起業して間もない段階でも投資を行う傾向にあるベンチャーキャピタルから資金調達すると、他にも次のようなメリットを得られます。
1. 無担保で返済義務がない
2. 事業ステージ(成長フェーズ)が低い段階でも出資してくれることがある
3. ベンチャーキャピタルが持つ経営スキルやノウハウを学べる
4. 事業提携先を紹介してもらえることがある
5. 金融機関からの融資を受けやすくなる
1つずつ説明していきましょう。
2-1. 無担保で返済義務がない
ベンチャーキャピタルからの資金調達は、無担保かつ返済義務がありません。ベンチャーキャピタルは、企業が上場していないときに投資を行い、投資先の企業が上場したら株式や事業を売却することで得られるキャピタルゲイン(当初の投資額と株式や事業を売却したときの金額の差)を収益としているからです。
後で返済しなければならない金融機関からの融資と比べると、万が一事業に失敗した場合でも責任を負う必要がないことは、起業する側にとっては最大のメリットとなるでしょう。
2-2. 事業ステージ(成長フェーズ)が低い段階でも投資してくれることがある
「1-2. 事業開始直後の「アーリー期」への投資が増加傾向にある」で説明した通り、ベンチャーキャピタルは企業の事業ステージ(成長フェーズ)が低い段階でも投資することがあります。
ベンチャーキャピタルは、企業の成長性や将来性を判断して投資をします。中には、事業ステージ(成長フェーズ)が低い段階での投資は、企業側は赤字であることも多いためリスクがあると考えるベンチャーキャピタルも存在しますが、事業ステージ(成長フェーズ)が低い段階でも、事業のビジネスプランが実行可能であることを納得させられれば、ベンチャーキャピタルも投資を行う傾向にあるのです。
2-3. ベンチャーキャピタルが持つ経営スキルやノウハウを学べる
ベンチャーキャピタルから資金調達を受けると、ベンチャーキャピタルが持つ経営スキルやノウハウを学ぶことができます。特に、ベンチャーキャピタルから資金調達を受けることになった後、「ハンズオン」という企業の経営に介入して支援を行うベンチャーキャピタルの場合、このメリットを実感することになるでしょう。
ベンチャーキャピタルは、具体的には次のようなことを通して企業を支援し、事業を成長させるための経営資源やアイデアを提供してくれます。
・新しい取引先を開拓するサポートをする
・事業を展開している市場を調査したり、分析したりする
・優秀な人材を発掘する
・資金繰りや資金調達のアドバイスをする
また、事業が傾きそうになってしまっても、ベンチャーキャピタルからのアドバイスで軌道修正することも可能になるでしょう。
ビジネス経験が浅く、経営に関する知識やノウハウを十分に持っていない場合、経験豊富なベンチャーキャピタルからの経営支援は学ぶことも多く、魅力的なサポートとなるはずです。
2-4. 事業提携先を紹介してもらえることがある
ベンチャーキャピタルから資金調達をすると、事業の提携先を紹介してもらえることもあります。ベンチャーキャピタルは複数の企業に資金を支援しているため、投資している企業が他のどの投資先企業と提携すれば成長するのかが、分かる場合もあるのです。
ベンチャーキャピタルに事業提携先を紹介してもらい、実際に事業提携すると決まった場合は、経験豊富なベンチャーキャピタルからの他社の技術やノウハウを習得でき、事業を成長させることも可能になります。
2-5. 金融機関からの融資を受けやすくなる
ベンチャーキャピタルから資金調達をすることで経営状況が安定し、社会的信用度を高められる可能性があります。
企業の信用度が高まれば、金融機関からの融資や追加の出資を受けやすくなります。特に、大手のベンチャーキャピタルから資金調達を受けられた場合は「事業内容が評価されている」と判断されやすく、借り入れもしやすくなります。
事業をさらに拡大したいときに他の資金調達手段から資金を得られるのは、企業にとって有利となるでしょう。
3. ベンチャーキャピタルから資金調達を受けるデメリット4つ

ベンチャーキャピタルから資金調達を受けることは企業にとってメリットも多いですが、次の4つのようなデメリットもあります。
1. 持ち株を失うことがある
2. 経営権を握られ、経営方針に従わなければならないこともある
3. 将来性がないと判断されたら、早期に資金を回収されることもある
4. 上場準備に負担がかかる
順に説明しましょう。
3-1. 持ち株を失うことがある
ベンチャーキャピタルはキャピタルゲインの獲得を目的としているため、企業が株式を公開(上場)したり、企業や事業を売られたりした場合は、持ち株を失うことがあります。
持ち株を失うことになると、株式を所有する第三者に経営権を握られて会社の意思決定が自由にできなくなることも考えられます。
3-2. ベンチャーキャピタルの経営方針に従わなければならないこともある
ベンチャーキャピタルがハンズオンを実施する場合、ベンチャーキャピタルの経営方針に従わなければならない場合もあります。企業の経営に介入されることで、自由度が損なわれることもあるでしょう。
当初描いていた経営プランとベンチャーキャピタルが提示する経営方針が異なっていると、対立が生じる可能性も否定できません。
3-3. 将来性がないと判断されたら、早期に資金を回収されることもある
事業を進める中で業績が悪化してしまったり、強力な競合が出現してしまったりして「将来性がない」「株式公開の可能性がなくなった」と判断されてしまったら、ベンチャーキャピタルから早期に資金を回収されることがあります。
ベンチャーキャピタルが早期に資金を回収する方法としては、投資先企業と関連する事業を行っている企業とM&Aによって投資額を回収する方法が挙げられます。資金が早期に回収されてしまったら、場合によっては事業を継続させることは難しくなることも考えられることは注意しておきたいところです。
3-4. 上場準備に負担がかかる
ベンチャーキャピタルから資金調達を受けていると、株式を公開(上場)を目指す場合はそのための準備が早い段階で行われます。
上場の準備に関連する業務は多数あり、そのコストもかかります。上場までには、数千万円から数十億円かかるケースがほとんどです。
【株式公開(上場)のために行う準備の一例】
・上場準備室の設置
・監査法人や主幹事証券会社の決定
・資本政策の作成
・上場のための審査書類や申請書類の作成
・経営計画の策定
・月次決算制度の実施
企業の経営者は、上場を目指すための多大な労力を費やすことになるでしょう。
4. ベンチャーキャピタルからの資金調達が向いている企業の特徴4つ

ベンチャーキャピタルは、ベンチャー企業やスタートアップにとって心強い存在ですが、全てのベンチャー企業やスタートアップにとって適している資金調達手段ではありません。
ベンチャーキャピタルからの資金調達は、次の4つの特長を持つ企業が向いているといえます。
1. 株式公開をする予定がある
2. 展開する事業は成長する可能性が高い
3. 自社商品・サービスが同業他社と比べて価値がある
4. 経営陣は実績や経験が豊富
順に説明していきましょう。
4-1. 株式公開をする予定がある
将来的に株式を公開する予定があれば、ベンチャーキャピタルからの資金調達は良い手段といえます。
ベンチャーキャピタルは、企業を上場へ導く実績を持っています。そんなベンチャーキャピタルから資金を調達すれば、経営アドバイスを受けつつ企業をスムーズに上場できる可能性が高まります。
上場すれば、他の投資家からの出資を受けられたり、企業の知名度が上がったりして事業をさらに成長させることもできます。
4-2. 展開する事業の市場は成長する可能性が高い
自社が展開する事業の市場が大きかったり、成長する可能性が高かったりする場合は、ベンチャーキャピタルからの資金調達に向いています。
ベンチャーキャピタルは、企業の参入する市場に一定の規模があれば「企業が展開する事業は成長する可能性がある」と判断して投資をしてくれます。事業を成長させるために経営のアドバイスといった資金面以外での支援も行ってくれるので、市場の成長にも一役買ってくれることでしょう。
4-3. 自社商品・サービスが同業他社と比べて価値がある
自社が展開する商品やサービスが、同業他社と比べて圧倒的な魅力や強みがある商品・サービスである場合も、ベンチャーキャピタルからの資金調達が有効といえます。市場において優位となるため、事業が成長する可能性が高いとベンチャーキャピタルが判断し、支援を行ってくれます。
ベンチャーキャピタルから資金調達をして経営面でも支援を受ければ、自社の商品・サービスの認知度を高められて売り上げの増加にもつながる可能性が高まります。
4-4. 経営陣は実績や経験が豊富
自社の経営陣が参入する事業における実績や経験が豊富である場合も、ベンチャーキャピタルからの資金調達に向いています。経営陣の実績や経験が十分であれば、ベンチャーキャピタルは「競争を勝ち抜いて事業を成長させる可能性が高い」と判断し、積極的に支援してくれるからです。
・展開する事業のビジネス経験がある
・展開する事業のしっかりとしたビジョンがある
・事業戦略に基づい行動力がある
・リーダーシップの資質がある
といった資質が経営陣にあれば、ベンチャーキャピタルからの資金調達に成功できるでしょう。
5. ベンチャーキャピタルから資金調達を受ける方法

ベンチャーキャピタルから資金調達を受けるには、まず投資してくれるベンチャーキャピタルを探し、出資を受けるための審査や評価を得て、投資条件を交渉して契約するのが一般的です。
具体的には、次のようなステップを踏みます。
1. 事業計画書を作成する
2. ベンチャーキャピタルを探す
3. ベンチャーキャピタルに見つけてもらう
4. ベンチャーキャピタルと秘密保持契約書を交わし、審査を受ける
5. ベンチャーキャピタルと投資額や株式の発行額の交渉をする
6. ベンチャーキャピタルと投資契約を締結する
順に説明していきましょう。
5-1. 事業計画書を作成する
ベンチャーキャピタルと投資案件の審査を受けるときは、「事業計画書」の提出が求められます。
事業計画書とは、参入する事業の将来性と成功できる可能性を示すものです。ベンチャーキャピタルからの資金調達だけでなく、他の資金調達手段においても審査を受けるために必要となる重要な書類です。
事業計画書には「4. 出資を左右する!ベンチャーキャピタルからの資金調達が向いている会社の特徴4つ」でも説明した通り、
・参入する事業の市場は成長性がある
・自社が展開する商品やサービスは同業他社と比較して魅力的である
・経験豊富な経営陣がいる
・株式の公開予定がある
といったベンチャーキャピタルが投資したくなるような内容を盛り込むことがポイントになります。
事業計画の書き方については、「事業計画書の書き方が分かる! 書き方のポイントを詳しく説明します」で詳しく説明しているのでご参考ください。
5-2. ベンチャーキャピタルを探す
ベンチャーキャピタルを探す方法としては、主に以下の2つがあります。
1. 第三者に相談をする
2. ベンチャーキャピタルが参加するイベントやセミナーに行く
「第三者に相談をする」というのは、会計事務所や税理士事務所、法律事務所、ベンチャーキャピタルから出資を受けている企業の人などに相談することを指します。ベンチャーキャピタルとつながりのある人に相談をすれば、 ベンチャーキャピタルを紹介してくれることがあります。
また、ベンチャーキャピタルは投資案件を探すために、ベンチャー企業やスタートアップが行くイベントやセミナーに参加することがあります。企業が自社の事業をプレゼンして出資を募る「ピッチコンテスト」が、その1つです。
ピッチコンテストのような場に行けば、ベンチャーキャピタルを探しやすくなります。ベンチャーキャピタルの担当者と名刺交換をし、自社の魅力が伝われば、 後日その担当者からアプローチを受けることもあるでしょう。
5-3. ベンチャーキャピタルに見つけてもらう
ベンチャーキャピタルは、新聞や雑誌、プレスリリースを使って自社を積極的にアピールして、担当者の目に留まるようにして見つける方法もあります。
ベンチャーキャピタルは、ベンチャー企業やスタートアップが参加するイベントやセミナーの他、メディアを情報源として投資案件を探すことがあります。メディアを通して自社の魅力が伝われば、 ベンチャーから連絡がくる可能性もあるのです。
注意したいのが、ベンチャーキャピタルへ電話やメールなどで直接コンタクトを取ってアピールすることは、あまり行われないことです。ベンチャーキャピタルは、直接コンタクトをしてくる企業を好まず、飛込の投資案件は良質でないと考えているためです。
ベンチャーキャピタルに「自社を見つけてもらう」ような対策をすることが大切になります。
5-4. ベンチャーキャピタルと秘密保持契約書を交わし、審査を受ける
ベンチャーキャピタルとコンタクトが取れたら秘密保持契約書を交わし、事業計画などの書類を提出して審査を受けます。
ベンチャーキャピタルの審査には、事業計画の他、決算書や月次残高試算表、資金繰り表などの書類の提出を求められます。これらの書類を見て、ベンチャーキャピタルは企業に投資するかを判断します。 赤字であった場合も、将来性があり上場できる可能性があると判断されれば、投資を決断することもあります。
また、ベンチャーキャピタルは、書類審査以外にも経営者との面談の場を設けることがあります。面談でも、ベンチャーキャピタルが資金調達をする価値のある企業であることをアピールすることが大切です
5-5. ベンチャーキャピタルと投資額や株式の発行額の交渉をする
ベンチャーキャピタルが審査を得て投資をしようと前向きに検討してくれたら、投資額や株式の発行額を、交渉の上で決めていきます。
投資額と株式の発行額の中でも、特に株式の発行額は慎重に交渉する必要があります。株式の発行額が低いと十分な資金を調達できないからです。株式を公開している競合の株価を提示しながら交渉していくと効果的です。
5-6. ベンチャーキャピタルと投資契約を締結する
ベンチャーキャピタルによる投資の条件交渉が成立したら、ベンチャーキャピタルと投資契約を締結します。
ベンチャーキャピタルから資金調達を受けた後は、ハンズオンを実施するベンチャーキャピタルであれば、経営者の育成や支援を受けながら株式公開やM&Aをゴールに事業を成長させていくことになります。
6. ベンチャーキャピタルからの資金調達で失敗を防ぐ3つのポイント

ベンチャーキャピタルからの資金調達にはメリットとデメリットがあるため、なんとなくベンチャーキャピタルから資金調達をすると失敗するリスクがあります。
以下の3つのポイントを踏まえれば、ベンチャーキャピタルからの資金調達に成功しやすくなります。詳しく解説していましょう。
1. 自社の事業がベンチャーキャピタルからの資金調達に適しているかを見極める
2. 評判が良く自社に合うベンチャーキャピタルを選ぶ
3. 資金調達が決まったら弁護士に投資契約書を確認してもらう
6-1. 自社の事業がベンチャーキャピタルからの資金調達に適しているかを見極める
最も大事なのは、自社の事業がベンチャーキャピタルからの資金調達に適しているかを見極めることです。
ベンチャーキャピタルからの資金調達は、金融機関からの融資による資金調達とは性質が異なります。「3. ベンチャーキャピタルから資金調達を受けるデメリット4つ」で説明したように、株式公開(上場)やM&Aを達成するために経営に介入されたり、将来性がないと判断されたら早期に資金を回収されたりと、企業よってはリスクとなることもあります。
このため、ベンチャーキャピタルによる資金調達のメリットだけに注目するのは好ましくありません。自社がベンチャーキャピタルからの資金調達に向いているか、慎重に判断するようにしましょう。
6-2. 評判が良く自社に合うベンチャーキャピタルを選ぶ
存在するベンチャーキャピタルは数多くあります。その中から資金調達したいベンチャーキャピタルを選ぶのは難しいこともありますが、評判が良く自社に合うベンチャーキャピタルを選ぶことが大切です。評判が良いベンチャーキャピタルから出資を受ければ、資金調達先企業の評価も上がり、その後、別の資金調達手段で資金を集めやすくなることがあるからです。
評判が良いベンチャーキャピタルというのは、企業にとって適切な支援を行ってくれます。
たとえば、
・投資先の企業が抱える問題を常に把握し、知識やノウハウを経営陣と共有する体制を作る
・経営陣を細かく管理したり、強制的にコントロールしたりしようとせず、適度な距離を取る
・投資先が追加の出資を検討している場合、企業にとってプラスとなるベンチャーキャピタルがいたら紹介する
といったことを行ってくれます。
ベンチャーキャピタルの評判は、各ベンチャーキャピタルのホームページに掲載されている投資ポートフォリオを見ると分かります。投資ポートフォリオでは、投資先や資金調達額、株式市場情報などを知ることができ、実績が多数あれば評価されているベンチャーキャピタルといえます。
評判が良いことに加え、自社に合うベンチャーキャピタルを選べば、良い信頼関係を築きながら資金調達ができ、事業が成長しやすいです。
自社に合うベンチャーキャピタルは、ベンチャーキャピタルの種類で判断することもできます。ベンチャーキャピタルには以下5つの種類があり、それぞれ特徴が異なります。
種類 | 特徴 |
---|---|
①政府系 | 政府や公的組織によって運営されている(株式会社産業確革新機構、東京中小企業投資育成株式会社など)。 日本を代表する企業に育てることを目的としているため、どの事業分野も高度な知識や技術を持つことが求められ、資金調達の審査難易度は高い。 |
②銀行・保険会社系 | メガバンクや地方銀行が設立し(三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルなど)、国内で最も多いベンチャーキャピタルといわれる。 数が多いため、資金調達できる可能性も高い。純粋な投資を目的にしている傾向にある。 |
③証券会社系 | 証券会社を親会社に持つ(ジャフコ、大和企業投資など)。 創業してから間もない企業に対して、積極的に投資する傾向にある。企業買収も行っている。 |
④事業会社系 | 金融業以外の一般的な事業を行う企業が、ベンチャーキャピタル業務を行うために設立された子会社(伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、サイバーエージェント・ベンチャーズなど)。 親会社の事業と関連する事業を展開するベンチャー企業へ投資する傾向がある。最終的なゴールとして、親会社によるベンチャー企業の買収があるため、事業の成長性や利益を重要視する傾向にもある。 |
⑤独立系 | 大手企業の子会社ではなく、独立資本で設立されている(インフィニティ・ベンチャーキャピタル、日本アジア投資など)。 銀行・保険会社系と同じように、純粋な投資を目的にしている傾向にある。 |
ベンチャーキャピタルの種類によっては、審査の難易度が高かったり、事業の成長性や利益を重要視されたりと、自社の性質によっては適さないこともあります。
ベンチャーキャピタルの評判と種類も調べることで、自社に適しているベンチャーキャピタルを絞れるでしょう。
6-3. 資金調達が決まったら弁護士に投資契約書を確認してもらう
「5-5. ベンチャーキャピタルと投資契約を締結する」でも説明した通り、ベンチャーキャピタルによる投資の条件交渉が成立したら投資契約を締結します。このとき、投資契約書を弁護士に確認してもらってから、締結することが大切です。
ベンチャーキャピタルからの資金調達には返済義務はありませんが、会社を急成長させて、株式公開もしくはM&Aさせることが求められます。このようなコミットを求める内容が投資契約書に記載されていますが、ベンチャーキャピタルに有利な条項が含まれていることもあるのです。
たとえば、ベンチャーキャピタルが株式を一定の価格で会社に買い取る請求をできる権利を定めた「株式買取条項」において、株式の買い取り額が高額であったり、安易に株式を買い取るように要求するような文言であったりしたら、注意が必要です。
ベンチャーキャピタルからは大規模な資金調達も可能になるため、投資契約の内容をよく確認しないで締結してしまうのは、失敗のリスクが高まります。締結前は、必ず投資契約書のレビューの経験が豊富な弁護士に確認を依頼しましょう。
7. ベンチャーキャピタル以外で検討したい資金調達方法

企業が利用できる資金調達手段は、ベンチャーキャピタル以外にもあります。もし「ベンチャーキャピタルからの資金調達は、自社には適さない」と感じても、他の資金調達手段を検討することが可能です。
ベンチャーキャピタル以外の資金調達手段としては、大きく分けて以下の5つがあります。
資金調達手段 | 特徴 |
---|---|
①エンジェル投資家からの出資 | エンジェル投資家から出資を受ける方法。 投資してくれるエンジェル投資家を探すのに時間を要するが、起業して間もない企業でも手を差し伸べてくれる傾向にあり、ベンチャーキャピタルとほぼ同様のメリットがある。 |
②金融機関からの融資 | メガバンクや地方銀行、日本政策金融公庫といった金融機関から融資を受ける方法。 起業してから間もない企業の場合は審査に通りにくく、資金を借り入れるため返済の義務が生じるというデメリットがあるが、政府が100%出資する日本金融公庫のように起業家を支援し、審査のハードルが低い融資もある。 |
③ファクタリングの利用 | 売掛債権を買い取ってもらうことで現金を得るサービス。 早く資金を調達したいときや一次的に小規模の資金が必要なときに有効な手段。 |
④クラウドファンディングの利用 | インターネットを通して不特定多数の人から資金を調達する方法。 手軽に早く資金を調達でき、寄付のため返済の義務もない。 |
⑤国や地方自治体からの助成金・補助金の受給 | 国や地方自治体などが設けている助成金や補助金を受け取って資金を調達する方法。 起業家を支援するために設けられた制度も多く、原則として返済の義務がないのがメリット。 申し込みをすれば必ず受給できるとは限らず、後払いのため最初は自己資金でまかなう必要があるのがデメリット。 |
金融機関からの融資に関しては、起業して間もない頃である場合は審査に通ることが難しいですが、一度別の手段で資金調達をした実績を持つと受けやすくなります。規模の大きい資金調達も可能になるため、将来の資金調達手段として検討しておきたいものです。
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金融機関からの融資を含め、上記の資金調達手段について詳しくは「スタートアップの資金調達は?現状と方法、失敗を防ぐポイントを解説」の記事でも説明しています。ベンチャーキャピタル以外で資金調達を検討する場合は、参考にしてください。
8. まとめ
ベンチャーキャピタルの投資件数と投資額は、2020年上半期時点では情勢により減少傾向にありますが、事業がスタートして間もない事業ステージで投資するベンチャーキャピタルは増えつつあります。
また、ベンチャーキャピタルから資金調達をすると、次のようなメリットも得られます。
・無担保で返済義務がない
・ベンチャーキャピタルが持つ経営スキルやノウハウを学べる
・事業提携先を紹介してもらえることがある
・金融機関からの融資を受けやすくなる
ただ、次のようなデメリットもあるため、ベンチャーキャピタルから資金調達をするかは慎重な検討が必要です。
・持ち株を失うことがある ・経営権を握られ、経営方針に従わなければならないこともある
・将来性がないと判断されたら、早期に資金を回収されることもある
・上場準備に負担がかかる
自社がベンチャーキャピタルからの資金調達に適しているかは、以下4つの特徴が自社にあるかを確認すると判断できます。
1. 株式公開をする予定がある
2. 展開する事業は成長する可能性が高い
3. 自社商品・サービスが同業他社と比べて価値がある
4. 経営陣は実績や経験が豊富
ベンチャーキャピタルから資金調達しようと決めた場合、失敗しないためには評判が良く自社に合うベンチャーキャピタルを選ぶことが大切です。
ベンチャーキャピタルを資金調達手段の1つとして検討し、必要な資金をトラブルなく集められるようにしましょう。
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