2021年12月15日 コラム

エンジェル投資家 千葉功太郎氏が目指す「ドローン前提社会」とは

【連載コラム】エンジェル投資家が見ている世界

エンジェル投資家 千葉功太郎氏が目指す「ドローン前提社会」とは

エンジェル投資家は、どのような視点・判断軸でスタートアップや起業家を支援しているのか。この連載ではエンジェル投資家にインタビューし、リアルな経験を交えながら伝えていきます。

今回は、ドローン専門の「DRONE FUND」や「千葉道場ファンド」の代表であり、60社以上のスタートアップ、40以上のVCファンドに投資をしている千葉 功太郎さんにお話を伺いました。


●インタビュイー:
千葉 功太郎さん
DRONE FUND 創業者・代表パートナー
千葉道場ファンド 代表パ―トナー
慶應義塾大学SFC特別招聘教授
航空パイロット
PONO CAPITAL Independent Director
●プロフィール
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、株式会社リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)に入社。その後、株式会社サイバードのエヴァンジェリスト、株式会社ケイ・ラボラトリー取締役を経て、2009年に株式会社コロプラの取締役副社長に就任。2012年東証マザーズIPO、2014年東証一部上場に貢献し、2016年7月に退任。
現在はエンジェル投資家として60社以上のスタートアップ、40以上のVCファンドに投資。投資先コミュニティである「千葉道場」を運営。
ドローン・エアモビリティ前提社会を目指す分野特化型VC「DRONE FUND」や、「千葉道場ファンド」の代表を務める。慶應義塾大学SFC特別招聘教授としてもスタートアップ教育に従事。またホンダジェット国内1号機オーナーであり自ら航空パイロットライセンス(日本自家用操縦士/米国Private Pilot License)を有する。2021年8月、社外取締役を務めるSPAC「PONO CAPITAL」社が米国NASDAQへ上場。

事業家としての経験

事業家としての経験

「前例がないから無理」と決めつけてはいけない

――コロプラでは副社長を務められ、マザーズ上場から東証一部上場と短期間での躍進を実現されました。圧倒的なスピードで成長できた理由を教えていただけますか?

コロプラの創業者である馬場社長(現 会長)が一人で運営していたところに、私は二番目の社員としてジョインさせていただきました。馬場社長は当初からかなり大きな規模の事業展開を目指していて、その解像度が極めて明確だったというのが成長の一番の理由だと思います。

具体的にいうと、5年以内に時価総額1000億円を超える会社を作るという数字を置いていました。この目標を掲げた2007年当時は、1000億円を超えているIT系の上場企業は国内に10社もなく、Yahoo!や楽天を始めとした創業10年以上のメガベンチャーが占めていました。それを5年以内に達成しようと考えていたわけですから、かなりアグレッシブな目標設定であり、前人未到の世界です。

私はそれまでの中途半端な経営経験から「そんな目標は無理じゃないですか」と返してしまったのですが、馬場社長の視点は非常に高くて未来を見据えていました。どう見えていたのかはわかりませんが、社長の資質はそういうところにあるんじゃないかなと思っています。

「絶対にできる」と言い切っている社長がいると、周りの人も「できる」と信じることができるので、形になっていくし実現していくのだと思います。

――解像度の高さが成長のポイントだったということですが、具体的にどういう状態を指すのでしょうか?

解像度というのは、どれだけ未来がクリアに見えているかということ。時価総額1000億円という目標はある意味わかりやすくて、上場しているゲーム会社のPER(株価収益率)から逆算して、どれくらい経常利益を出さなければならないのか、その経常利益を出すためにはゲーム事業の利益率からいくと、売上ベースでどれくらいの規模感となるのか。その売上を実現するには、ゲーム会社では社員が何人必要なのかというように、全て逆算できるようになるわけです。

ゲームは内製するので、どうしてもたくさんのクリエイターさんが必要になります。時価総額1000億円を達成するには、ざっくり1000人の社員を集めないと実現できないという試算でしたので、相当な規模の会社を作らないといけませんでした。

こうした考え方を私は “逆算の思考”と名付けているのですが、逆算ですべてを数字に落とし込んで時間で分解すると、やるべきことがクリアになります。コロプラは創業4年目でマザーズ上場を果たし、時価総額1000億円を超えるという目標を達成しました。5年目に東証一部に上場して、時価総額3000億円を超えるところまで成長することができましたね。

――順調に目標を達成されたように見えるのですが、コロプラ時代の経験から、千葉さんご自身はどんなことを学んだとお考えですか?

会社経営は、99%は失敗という連続のなかでの積み上げなので、もちろん「もっと、こうしたほうがよかった」ということの塊です。とはいえ、経営は目標に対して結果を出せたのか、出せなかったのかという極めてわかりやすい世界。結果を出せたことは、私にとって成功体験になりました。

学びとして大きかったのは、5年以内に時価総額1000億円という前人未到な目標に対して、私は最初「無理です」というところから入ってしまったものの、がむしゃらに頑張ったら達成できたことです。前例がないから無理と決めつけてはいけないと、身をもって実感したことが大きな学びだったと思います。

投資家としての活動

投資家としての活動

6年前は「エンジェル投資家」という言葉がなかった

――千葉さんは現在エンジェル投資家として60社以上のスタートアップ、40以上のVCファンドに投資されていますが、投資活動をしようと思ったきっかけを教えていただけますか?

もともと私は事業家というよりも投資家志向で、経営もできますが、投資家のほうがベースの志向なんです。最初の投資活動は22歳からやっている不動産投資で、その後、一般の株式投資も行ってきましたので、自分の中では投資家としての歴史はけっこう長いですね。

スタートアップへの投資に興味を持つようになったのは6年前です。最初に投資したのは、ロコパートナーズとトリッピースという、どちらも旅行領域の会社です。6年前はエンジェル投資家という言葉自体が存在していなくて、かつ私はコロプラの副社長をしていたので、「コロプラの副社長がなぜ出資したがっているのか?目的は何なのか?」と、どちらの経営者からもすごく警戒されました(笑)。

何度も頭を下げてお願いしましたし、信用してもらうために一緒に旅行に行ったり釣りに行ったりして、ウェットなコミュニケーションをしながら関係性を築いていきました。そこでようやく、「コロプラとは関係なく、個人として出資したいのね」と信じてもらうことができました。

今でこそ、起業家側が投資家にお願いするような構図になっていますが、当時はスタートアップに投資したいというと怪しまれた時代。そう考えると、日本は数年の間にずいぶんと変化を遂げていると思いますね。

サスティナブルな仕組みを作るためVC化した

――「千葉道場」という形で起業家コミュニティを運営され、2019年に「千葉道場ファンド」を立ち上げられました。その経緯を教えていただけますか?

エンジェル投資家として活動してきた中で、投資先の起業家コミュニティとして立ち上げたのが千葉道場です。ときどき起業家が集まって合宿しているのですが、SNSで「千葉道場の合宿に参加してきました」と書かれたりして、そこそこ存在感を出してきました。

ですが、いかんせん個人での投資となるので、私のお小遣いの範囲でしか活動ができません。魅力的な起業家と出会っても、お金がないときは出資できないわけです。「この企業が千葉道場に入っていたらすごく良かったのにな」と思うことが何度もあって、やはりサスティナブルな活動にしていかないといけないなと考えるようになりました。

これから日本のスタートアップ界隈がどんどん賑わっていくことを踏まえても、私個人のお金に左右されず、究極は私がいなくてもコミュニティが持続的に広がっていく仕組みを作りたい。それがVC(ベンチャーキャピタル)化で、1つ目として立ち上げたのがドローン専門の「DRONE FUND」、次いで「千葉道場ファンド」を立ち上げました。

VC化したことで運営チームができたので、コミュニティの運営にもパワーを割けるようになりました。それまでは私の手弁当だったのが、今では合宿にくわえて月1回の勉強会を実施するなど、より起業家が相互に情報交換できる場へと進化しています。日本のスタートアップのエコシステムの一つになれるくらいまで成長させたいと考えています。

ちなみに、私の名前が千葉なので千葉道場と思われがちなのですが、名称は北辰一刀流の千葉道場から持ってきています。

DRONE FUNDが目指すのは“ドローン前提社会”を作ること

――ドローンに特化した「DRONE FUND」を立ち上げた背景を教えてください。

立ち上げた理由は非常にシンプルで、ドローン領域の投資家が国内外ともにほぼ存在していなかったからです。私は2015年くらいから、ドローンは間違いなく立ち上がる巨大市場だと思っていました。「インターネットがくるぞ」というのと同じくらい、当たり前の未来予測だと信じていて、解像度がとても高い状態なんです。

投資家の視点からいうと、競合が少なく、かつ自分が絶対にくると信じている領域が一番強いわけです。直近の例を挙げると、「NFTに投資します」という投資家は世界中にたくさんいますが、そうすると、そこに競争が生まれます。市場が大きくても、その100億分の1しか利益を得られないかもしれないですよね。

DRONE FUNDを立ち上げた4年前の段階では、ドローンのスタートアップに投資する投資家はほとんどいませんでした。それなら専門性の高いVCとして切り出したほうがいいだろうと考え、DRONE FUNDを作ったという流れです。

通常は、VCを立ち上げるときは領域をできるだけ広くとるのが王道です。なぜなら、流行り廃りもあるし、領域を狭めると投資先が足りなくなっちゃうので。ですが私は、ドローンは確実にくると信じていますし、未来の私が過去を振り返ったときに「正しい判断だった」と思うだろうと確信しています。

――最近はドローンの活用範囲が広がっている印象ですが、技術的に変わってきているのでしょうか?

技術はまさに日進月歩ですね。とくに社会影響が大きいと見込まれているのは2022年度に予定されている法改正で、人が操縦しない自律型ドローンが都市部の上空を飛ぶことが認可されます。つまり、東京の空の上をAI自動運転のドローンが飛んでいるという状態が法律的に整備されるのです。

日本の大手物流会社もすでにドローンに取り組んでいまして、山間部や離島の配送にドローンを活用することが検討されています。私たちの活動の成果もあり、描いていた未来は1~2年後というくらいに近づいていますね。

――「DRONE FUND」が目指す世界を教えてください。

“ドローン前提社会”というものを作ろうとしています。インターネットと同じくらいに、当たり前になっている社会です。

たとえば、今は普通にビデオ会議をしていますが、「インターネットでビデオ会議をします」と表現する人はいないですよね。インターネットを使うことは当たり前ですから。あるいは、「スマホで新しいビジネスを作る」という言い方もしません。スマホは当たり前で、アプリでどんな新しいサービスを作るかという議論がなされるだけです。これが前提社会だと思っていて、まさにインフラになっている状態です。

今だと、東京の上空をドローンが飛んでいたらみなさん驚くと思いますが、ドローン前提社会では誰も見向きもしなくなります。カラスが飛んでいるのと同じくらい、誰も気にならないわけです。

新しいインフラが社会に根付く瞬間というのは、新しいビジネスチャンスの宝庫です。現にアプリ市場は国内外でのダウンロード数が年間数千億という規模になっていて、スタートアップも世界中で拡大し続けていますよね。10年前にはなかった巨大な市場が立ち上がっているわけです。これと同様のことが、近い将来にドローンで起こると思っています。

――現在の「DRONE FUND」の活動内容を教えていただけますか?

今はDRONE FUND 3号を立ち上げている途中です。1号は約16億円、2号は52億円。3号ファンドでは100億円を目標にしています。国内の名だたる大手企業が出資者として参加していて、3号ファンドでは経済産業省管轄の中小企業基盤整備機構の出資も決定しました。まさに、国と民間がお金を出し合ってDRONE FUNDを作り上げている構図になってきています。

以前は週に1~2本しかドローンの記事がなかったのが、今では「空飛ぶバイク」や「空飛ぶ車」といったものも含めると、毎日複数件のドローン関連ニュースが流れています。すでに、日本の社会ムーブメントになりつつあるというのが私の肌感覚ですね。

バックグラウンドの経験から「夢を実現したい」と思っている起業家は魅力的

――エンジェル投資家として、投資したいと思う起業家とはどんな人でしょうか?

個人でもファンドでも共通しますが、起業家が持っている夢が大きく、かつ事業内容と夢が合致していて、成長が見込めると感じるときが投資のタイミングだと思っています。くわえて、その夢が起業家のバックグラウンドと一致しているのが望ましいですね。生まれ育った環境や置かれてきた環境から見えていた景色など、バックグラウンドにある経験から夢を実現したいと思っている、そんな起業家は魅力的に映ります。

ビジネス的に言い換えると、狙っている市場が大きく、そこにとてもいいサービスを提供しようとしていてTAMを大きくとれそうな起業家です。ここまで合致すると、投資するにはぴったりなスタートアップになります。

ここまでの話はシード段階のことで、もちろんレイタ―になると視点は変わります。より人にフォーカスしているのがシードへの投資、事業や数字にフォーカスしているのがレイタ―投資です。

――エンジェル投資とファンドでは、投資の判断軸は変わりますか?

ファンドは出資者の代わりに目利きをして投資するので、やはり慎重になりますし、個人投資よりも大きな投資ができるようになるという点が違います。当たり前ですが、リターンを意識して投資するのがファンド。それに対して、リターンを意識せずに投資しているのがエンジェル投資です。

エンジェル投資家の多くに共通すると思いますが、一言でいうと、その起業家を応援したいかどうかだと思います。ある日突然、若い起業家がピッチしにきて「事業計画を聞いてください!」という必死な姿に心打たれて、応援したいと思ったりするわけです。

――応援したくなる起業家とは、どのような人ですか?

投資家によって全然違うと思いますが、私は誠実さを見ていますね。ピッチの当日や後日の振る舞いなど、コミュニケーション全般です。長いお付き合いになるので、起業家の誠実さはとても大事だと思っています。

――投資活動を通じて、千葉さんが実現したい世界観を教えてください。

千葉道場のビジョンに「『Catch The Star』~まだ見ぬ幸せな未来を想像し、テクノロジーで世界の課題を解決する。」というのを掲げているのですが、エンジェル投資・ファンドともに、これが私の目指している世界観です。シリコンバレー用語でいうと「ムーンショット」ですね。まだ私たちが知らない幸せな未来を創っていきたいですし、それを支えるのがテクノロジーです。私が生きていく上においても、大きなテーマになっています。

今後のスモールビジネスの世界をこう見る

今後のスモールビジネスの世界をこう見る

強みの掛け算で“レア感”を出していくという勝ち方

――今後、スモールビジネスの世界はどうなっていくと見ていますか?

今後、スモールビジネスはすごく盛り上がっていくと思います。そのきっかけとなったのがコロナ禍で、オフィスがいらない時代に突入しました。社長一人でも会社を作れますし、移動しなくても仕事ができるので、どこに住んでいてもいい。DXのツールを使いこなせばペーパーレス化もできて、郵便局に行かなければならないということもなくなってきました。まさに、時空を超えてビジネスを展開できるチャンスが生まれていると思います。

――今後のスモールビジネス経営者が勝ち抜くために必要なことは何だと思いますか?

ビジネスチャンスは生まれているものの、誰にとってのチャンスなのかというと、私は手に職を持っている人だと思います。強みを一つ持っていることは必須ですし、できれば違う畑でもう1つか2つ、サブの強みがあると掛け算での強みにすることができます。

たとえば、DRONE FUNDのキャピタリストに、以前、大手メーカーでエンジニアリングをしていた人がいます。彼は公認会計士の資格も取得し、モノづくりの理系バックグラウンドを持つ会計士という、非常にレアな人材です。DRONE FUNDの投資先はハードウェアを作っている企業が圧倒的に多いのですが、彼は数字だけ見てもわからない世界を理系的な視点からも見ることができます。

私でいうと、投資家というビジネス的な面と、航空パイロットのライセンス所持者という側面があります。パイロットの視点も持ち合わせているので、投資先のエンジニアとものすごく深いところまで話ができます。これがパイロット専門の方だと、ビジネスや投資についてはわからないわけです。

会計士の資格を持っている、パイロットの資格を持っているというだけでもすごいことではありますが、ほかにも同じ方はたくさんいるので差別化が図りにくいことになります。そういう意味でも、掛け算でレア感を出していくのが、これからのスモールビジネスの勝ち方ではないかなと思います。

(インタビュー:土井 啓夢 文:社 美樹)

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社 美樹

出版社に18年勤務。編集長、メディア設計、営業統括、システム開発PMと畑違いの職務で管理職を経験。現在は数々のメディアで企画・編集・執筆を手掛ける。得意領域は実践も積んでいるメディア企画系、人事・マネジメント系、ビジネス系、医療・美容系。インタビュー経験は200件以上。Webライティング講師も務める。

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