2022年3月9日 基礎知識

建設業で運転資金の融資を受けるには|資金繰りのポイントと資金調達方法

建設業で運転資金の融資を受けるには|資金繰りのポイントと資金調達方法

工事が完了して代金が入金されるより先に必要経費の立て替え払いが生じる建設業は、資金繰りが難しい業種の一つです。ここでは、建設業の運転資金の考え方や資金繰り改善のポイントを整理するとともに、運転資金の調達方法や必要な準備について説明します。

目次

建設業の運転資金の考え方

建設業の運転資金の考え方

建設業は工事の受注数が多くなるほど資金繰りが難しくなるため、運転資金をしっかり管理しなくてはならない業種です。まずは、運転資金の考え方について見ていきましょう。

建設業の運転資金とは

建設業で必要となる運転資金の内訳は、主に次のものです。

●材料費(建築資材など)
●人件費(工事を行う作業員など)
●外注費(外注で依頼する作業にかかる費用)
●仮事務所や足場の確保、設備・重機を調達するための費用

これらの費用は工事が完了する前に支払わなくてはならないことが多く、建設業における運転資金の多くは工事立替資金となります。また、建設業の場合、工事ごとに必要となる運転資金の規模感が変わる点に注意する必要があります。

建設業で資金繰りが重要な理由

建設業の取引の特徴は、工事代金の入金より先に、様々な項目の立替資金が必要になることです。契約によっては、着工金や完成度合いに応じた中間金があることもありますが、入金と支払いのタイミングがずれれば、運転資金に困窮することになります。くわえて、建設業界では工期が延びたり、途中で追加工事が発生したりすることも度々あるため、想定外に資金ショートしてしまうケースも少なくありません。

多くの協力会社との取引が必要となる建設業では、各社の支払いサイトもさまざまで、手形による支払いも多いという特徴があります。そのため、資金繰り表でお金の流れをしっかり管理していないと、気づかないうちに手元に資金がないという状態が起こります。どの業種でも同じようなことは起こり得ますが、とくに建設業は工事完了までの立て替え払いが大きいため注意しなくてはなりません。

建設業の資金繰りを改善するには

建設業では、工期の延長や人件費の高騰など運転資金の変動要素が大きくなっています。資金繰りを改善するには、以下の点に取り組むことが重要です。

資金繰り表を作成して管理する

どの業種でも同じですが、資金繰り表を作成して入金・出金のキャッシュフローをしっかり管理することは極めて重要です。入金と支払いの金額・タイミングを可視化できるようにし、手元にどれくらいの現金があるのか、常にわかるようにしておきましょう。運転資金が不足することが事前にわかれば、早い段階で資金調達に動くことができます。

代金回収時期を見直す

建設業では、代金回収時期をいかに早くできるかが資金繰り改善の大きなポイントとなります。工事完了後の入金となっている契約が多い場合は、工事の進捗に合わせて入金される契約を増やすことが重要になってきます。また、できる限り入金までの期間を短縮できるよう交渉することも大切です。

利益の管理を行う

建設業の資金繰りを悪化させる要因の一つに、工事原価の管理ができていないために、利益が出ない工事を受注しているケースがあります。また、赤字になることがわかっていても、目先の売上を優先して受注してしまう場合も見られます。しかし、これらは資金を枯渇させてしまう大きな要因です。

資金繰りを改善するには、工事ごとにかかる原価を管理し、見積もりの段階で利益が出る状態を作っておくことが重要です。また、大きな工事は魅力的ではありますが、自社の資金状況を無視した受注をしてしまうと資金繰り悪化を招きかねません。自社の資金力・能力を十分に鑑みたうえで、自社にとって適正な案件か否かを判断することが大切です。

建設業が運転資金の融資を受ける方法

建設業が運転資金の融資を受ける方法

建設業の運転資金融資の特性と資金調達手段、必要な準備について見ていきましょう。

建設業の工事引当融資とは

建設業向けの運転資金の融資は、工事ごとに必要な資金を工事引当融資として行われるのが基本です。工事引当融資とは、工事に必要となる経費を短期間借り入れるもので、工事代金が入金された後に返済します。建設業の場合、運転資金は工事を受注した場合に発生するため、この方法がとられています。資金使途は工事に必要な経費のみとなるので、工事を受注していないのに申し込んでも融資は受けられません。

また、金融機関からすると返済原資を確認する必要があるため、融資の際には企業の財務状況や信用度だけでなく、当該工事の内容も重視します。工事の発注元にしっかり支払い能力があり予定通りに代金が入金されるか、適正な価格で受注しているかという点も見られることが工事引当融資の特徴です。

ただし、借り入れた資金を先食いしないと資金繰りができない状況にあるときは、そもそも会社を運営していくための運転資金が枯渇しているということです。この場合は、事業を立て直すための長期資金の借入を検討する必要があります。

建設業の資金調達手段

建設業の資金調達手段には、以下のものがあります。

調達方法

内容

日本政策金融公庫

低金利、無担保・無保証の借入が可能。ただし、必要書類が多く審査には時間を要する。

銀行

・プロパー融資:
銀行が行うプロパー融資は審査基準が厳しめだが、低金利で融資を受けられる点がメリット。

・信用保証協会の保証付き融資:
信用保証協会の保証が付くことで借入のハードルが下がる。ただし、保証料を支払う必要がある。

ファクタリング

売掛債権を買い取ってもらい、入金予定日よりも早く現金を受け取ることができる。最短で即日入金が可能で、取引先が倒産しても貸し倒れリスクを回避できるというメリットがある。ただし、手数料が発生する。

運転資金の融資を受けるときに必要な準備

運転資金の融資を受けるときに必要な準備

建設業の運転資金の融資の場合、工事期間中の収支や工程確認をしっかり行っていることを証明するために、試算表と資金繰り表、受注工事明細表などの提出が求められます。金融機関によって必要書類や書式が異なるので、事前に確認しておきましょう。

試算表

金融機関では企業の経営状況を把握するため、決算書のほか、直近の業績を確認するうえで試算表の提出を求めます。試算表では、業績推移や前期との比較をしながら資産と負債のバランスを見て、企業の業績や収益状況をチェックします。

資金繰り表

資金繰り表は、毎月・毎日というように一定期間の現金の動きを表したものです。金融機関は、資金繰り表を見ながら必要となる資金や回収可能性をチェックしていくため、融資希望額を説明したり、返済能力をアピールしたりするうえで重要になります。

受注工事明細表

運転資金の融資では、受注工事明細書の提出が求められます。金融機関によって書式は異なりますが、主に次のような項目があります。

●発注者
●工事件名
●契約工期
●請負金額
●利益率
●出来高
●入金済高
●出来高未収金
●請負金残高
●入金予定日 

これらの書類は融資を受けるためだけでなく、普段から管理することが重要なものです。資金繰り悪化のリスクを回避するうえでも、しっかり取り組みましょう。

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建設業は、工事ごとに必要となる運転資金の規模感が異なり、かつ入金と支払いのタイミングのズレが大きいため、資金繰りの難易度が高い業種です。資金ショートを防ぐには、数字を見ながらしっかり管理していく必要があります。

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