中小企業・小規模企業の資金調達方法|現状の課題と成功のポイントとは

中小企業や小規模事業のほとんどは、自己資金以外に資金調達をして経営をしています。しかし、業況が安定しにくいなどの理由から、融資や投資といった方法で調達するのが難しいという壁にぶつかっている経営者が少なくありません。ここでは中小企業・小規模企業の資金調達方法にはどのようなものがあるのか、また、現状の課題を明らかにしながら成功のポイントを解説します。
目次
- 中小企業・小規模企業の資金調達方法
- 借入による資金調達
- 売却による資金調達
- 出資による資金調達
- 補助金・助成金による資金調達
- 中小企業・小規模企業の資金調達における現状の課題とは
- 中小企業・小規模企業は借入が難しい
- 赤字経営
- 投資会社からの出資が難しい
- 資金調達を成功に導くポイント
- 自社に合った資金調達手段を選択
- 理解・信頼を得るための事業計画書作成
- 継続的な情報開示
- 中小機構の資金調達サポートとは
- ファンドからの投資
- 地域中小企業応援ファンド(スタートアップ応援型)
- 債務保証
- 資金繰り・資金調達をサポート
- 資金調達freee:複数の金融商品を簡単に比較・申込ができる
- 事業用クレジットカード:freeeカード
- まとめ

中小企業・小規模企業の資金調達方法
まずは、中小企業・小規模企業の資金調達にはどのような方法があるのか見ていきましょう。
借入による資金調達
借入による資金調達では、以下の選択肢があります。
- 日本政策金融公庫
- 銀行・信用金庫
- 制度融資
- ノンバンク
それぞれの特徴は次の通りです。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫には経済の活性化を果たす役割があるため、さまざまな融資制度によって中小企業・小規模企業の経営を支援しています。低金利で長期間の返済が可能など、借入による負荷が低い点が大きなメリットです。
一般貸付のほか、環境変化に対応するためのセーフティネット貸付、新企業育成貸付、企業活力強化貸付、企業再生貸付など、さまざまな融資制度が設けられているので、中小企業・小規模企業の資金調達方法として筆頭にあがります。
銀行・信用金庫
民間の金融機関では、メガバンク、地方銀行、信用金庫があります。メガバンクは大企業が主たる取引先となるため、中小企業・小規模企業の資金調達は難しい場合がほとんどです。
銀行融資では、保証や担保なしで貸付をするプロパー融資と、信用保証協会の保証がある場合に融資を行う信用保証付き融資、不動産などを担保にする担保融資の大きく3種類があります。
もっとも審査が厳しいのはプロパー融資で、これは保証や担保がないため、銀行側のリスクが高くなるためです。信用保証付き融資は、信用保証協会が貸倒れリスクを負うため比較的審査が通りやすく、中小企業・小規模企業が銀行から借入をする際は、一般にこの方法がとられています。
制度融資
制度融資は、各自治体と信用保証協会、民間の金融機関が連携している融資制度です。各地域によってさまざまな制度が設けられていますが、経営基盤が安定しにくい中小企業・小規模企業を支援することを目的とした制度なので、審査のハードルが低く、低金利で借りられるというメリットがあります。日本政策金融公庫と並んで優先的に検討すべき調達方法です。
ノンバンク
ノンバンクとは、貸付業務を専門に行っている消費者金融や信販会社などのこと。銀行に比べると審査は通りやすく短期間での資金調達が可能ですが、金利が高いというデメリットがあります。
また、基本的に小口の融資となるため、多額の資金を調達したい場合には不向きです。つなぎの運転資金として急ぐ必要がある場合には便利ですが、返済の負担により資金繰りが悪化するケースもあるため慎重に判断する必要があります。
売却による資金調達
売却による資金調達方法にはファクタリングがあります。ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に売却し、入金予定よりも早く現金化できる仕組みのことです。
手元の運転資金が不足している場合などに利用すれば、資金繰りの改善につながります。このほか、売却による資金調達では、利益を生んでいない遊休資産の売却、過剰在庫の売却などの方法もあります。
出資による資金調達
ベンチャーキャピタル(VC)や個人投資家からの出資を受けて資金を調達する方法です。投資会社や個人投資家が出資する目的は、将来的に成長が見込める企業に投資し、成長や上場したタイミングで株式を売却して利益を得るためです。

「中小企業白書」(2020年版)によると、ベンチャーキャピタルの投資額は年々上昇しており、2017年度から2018年度にかけては13.5%の増加となっています。また、個人投資家による出資も増加傾向にあります。この背景には、インターネット上で出資を募るクラウドファンディングの利用が加速しているという見方もされています。
とくに、創業期の資金調達は多くの事業主が抱える課題であり、政府は創業から間もない企業への投資を行う個人投資家に向けて、税制面で優遇する「エンジェル税制」を設置しています。このほか、スタートアップやベンチャー企業に出資を行った場合に税制優遇がある「オープンイノベーション促進税制」(令和2年4月1日~4年3月31日までに行われた出資)も実施され、技術やノウハウの連携による経済効果が期待されています。
これらからわかるように、信用力がまだ足りない状態にある中小企業・小規模企業でも、借入だけでなく、出資による資金調達の可能性が広がっていると見ることができます。
参照:中小企業庁|2020年版 中小企業白書
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/chusho/index.html
補助金・助成金による資金調達
国が設けている補助金や助成金の制度を利用して資金調達する方法もあります。基本的に返済の義務がないため、申請の要件を満たす場合は積極的に利用したいものです。
ただし、受給要件が高めで必要書類が多いなど審査は厳しくなっています。とくに補助金は、申請しても必ず採択されるわけではないので注意してください。また、補助金・助成金ともに、対象となる支援内容の費用を支払ったことが確認されたのちに支給されるため、準備段階での資金として活用できない点にも注意が必要です。
中小企業・小規模企業の資金調達における現状の課題とは
では、中小企業・小規模企業は現状どのような課題を抱えているのか具体的に見ていきましょう。
中小企業・小規模企業は借入が難しい
借入先で最初に頭に浮かぶのが銀行などの金融機関でしょう。しかし、銀行融資の審査では、業績や企業の信用力が重視されます。これは返済能力の程度によって、銀行側が抱えるリスクが大きく変わるためです。
とはいえ、多くの場合、中小企業・小規模企業が資金調達を必要とするのは成長曲線でいうところの成長初期の段階であり、安定性や信用力を提示するのは難しいフェーズにあります。また、担保となる不動産や設備を持っていないことも多く、担保型の融資を受けるのも現実的に困難です。結果として、必要なタイミングに資金調達できない中小企業・小規模企業が多くなっているという現状が見られます。

スモールビジネスを行う事業者に向けて金融・財務サービスを提供するfreee finance lab株式会社が行った調査(2020年6月実施)によると、中小企業・小規模企業が過去1年間に調達した資金の使途は「手元資金の確保」が最多回答という結果でした。
今後1年間に「資金調達が必要」と答えた事業者42.1%のうち、「資金調達の目途が立っていない」と答えた割合は59.1%となっています。
参照: freee finance lab株式会社|中小企業の資金繰り・資金調達に関する調査|資金調達の目途が立っていない事業者は約6割
https://www.freee.co.jp/finance/contents/01/
赤字経営
資金調達を必要とする中小企業・小規模企業の中には、借入によって赤字を補填し、現状を乗り切ろうというニーズが少なからずあります。しかし、そもそも収益性や財務状況に問題がある場合、ビジネス環境が少し変わっただけでも影響を受けやすく、経営が安定しにくいといえるでしょう。
銀行などの金融機関は、融資によって事業が拡大するなど成長が期待される場合に審査が通るため、赤字や債務超過となっている企業は、基本的に融資を受けにくいのが現状です。
投資会社からの出資が難しい
ベンチャーキャピタルや個人投資家は創業から間もないベンチャーやスタートアップ企業に出資し、将来的にその企業が成長したときに株式を売却して利益を得るモデルです。
そのため、銀行の融資審査とは着目するポイントが違い、将来的に有望なビジネス市場であるか、ビジネスモデルに強みがあるかといったことが厳しく判断されます。一般的な事業内容で展開している中小企業・小規模企業の場合、出資による資金調達は現実的に難しいといえるでしょう。
資金調達を成功に導くポイント
では、資金調達を成功させるにはどのような取り組みが必要なのか、ポイントを見ていきましょう。
自社に合った資金調達手段を選択
資金を調達したい経営者にとってみれば、集められるところから集めたいと考えがちです。しかし自社に適した手段でなければ、成功する確率が下がるうえ、想定外の高金利などで資金繰りが圧迫される事態に陥る可能性もあります。
最適な資金調達手段は、事業の特性によっても変わります。たとえば、利益が手元に残るまでに一定以上の期間を要するビジネス形態と、損益分岐点に到達するまでのスピードが早いビジネスでは、返済の考え方が変わります。
したがって、思いつきで行動せず、自社のビジネスをよく理解し、計画的に資金調達手段を選択することが重要になります。
理解・信頼を得るための事業計画書作成
融資でも出資でも、自社の事業に対する理解と信頼を得ることは極めて重要になります。言葉で説明するだけでは相手に届きにくいため、説得力のある事業計画書の作成は必須です。
決算書などの数字だけでなく、企業が置かれている外部環境や内部環境についても理解を深めてもらうなど、相手先が知りたい情報をしっかり盛り込むことを心がけましょう。事業計画書に入れる要素としては、次のようなものがあります。
- 事業の概要
- 経営者の経歴や起業の動機
- 経営理念・目標
- 事業のコンセプトやサービス内容
- 市場の魅力や成長性
- 自社の強みやビジネスモデルの魅力
- 人員計画や実施体制
- 損益計画
- 実行計画
市場や現状の分析では、根拠となるデータを用意するなどして客観性を保つことが重要です。また、計画においては理想的な状態を並べるのではなく、実現性や成功確率が伝わるように工夫することも説得力を高めるポイントになります。
継続的な情報開示
金融機関や投資家とは継続的に付き合っていくものです。資金調達するときだけでなく、継続的に情報を開示していくことで関係性が構築され、いざというときにも助けになってくれます。
経営者からすると、ネガティブな情報はできるだけ外に漏らしたくないという心理が働きがちですが、融資・出資した側からすれば、事業の進捗が気になるのは当然のことであり、定期的な報告があるほうが好まれるものです。
また、金融機関の場合、つねに情報を集められていれば再度の融資のときに審査スピードが速くなる可能性も高まります。こうした日々の経営者の取り組みが信頼を得ることにつながると心得ておきましょう。
中小機構の資金調達サポートとは
中小機構とは、中小企業の経営を支援する目的で設立された経済産業省管轄の独立行政法人です。創業支援や人材育成、販路開拓、事業再生など多方面からのサポートを行っています。ここでは、中小企業の資金調達をサポートする3つのメニューを紹介します。
※参照:中小機構|資金調達支援メニュー
https://www.smrj.go.jp/sme/funding/index.html
ファンドからの投資
中小機構は民間の金融機関や事業会社などと連携した投資ファンドを組成しており、中小企業の新規事業や再生を支援しています。具体的には、ファンドからの出資を受けたい企業に向け、情報提供や経営計画書の作成などがあります。
地域中小企業応援ファンド(スタートアップ応援型)
地域中小企業応援ファンドとは、中小機構と地方の公共団体、金融機関などで構成される地域独自の官民ファンドです。
地域への貢献性が高いと認められる新規事業に取り組む中小企業に向けて、資金の助成を行っています。各地の農林水産物や伝統技術を活かした商品開発・販路開拓が対象で、助成対象として採択されれば返済の必要はありません。
債務保証
債務保証とは、融資を受けた企業が返済できなくなった際の債務を保証することです。金融機関から融資を受ける際に、中小機構が債務保証し資金調達をサポートしてくれます。
中小企業が金融機関から融資を受ける際は、一般に信用保証協会の保証を受けるケースが多くなっていますが、場合によっては保証を受けられないことがあります。
中小機構の債務保証では、信用保証協会の保証を受けることが困難な場合が対象となり、最大50億円の資金調達に対応しています(保証割合は50%または30%)。新規事業に関するものや事業再生、地方創生などに対応しており、金融機関から融資を受ける際の大きな助けとなります。
資金繰り・資金調達をサポート
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まとめ
現在は、政府を中心に、中小企業の資金調達をサポートするさまざまな対策が取られています。しかし、資金を調達してからが本来のスタートであり、そのためには先々を見越して、自社に合った資金調達手段を選ぶことが重要です。
* この記事は2020/12/07時点の情報をまとめたものです。
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