協調融資とは|メリット・デメリットと具体例を徹底解説

会社を経営する方にとっても「協調融資」はあまり聞き馴染みのない言葉ではないでしょうか。また、「協調融資」という言葉は知っていても、内容はよくわからないという方も多いでしょう。ここでは、金融機関からの資金調達方法の一つである「協調融資」について、概要やメリットとデメリットを始め、協調融資商品の具体例、注意点を紹介します。
目次

協調融資とは

まずは協調融資とは何か、具体的に見ていきましょう。
複数の金融機関が連携して行う
協調融資の「協調」とは、複数の金融機関同士で協調することを意味します。たとえば、ある企業に対して、A銀行が1,000万円、B信用金庫が1,000万円、計2,000万円を融資する形式をとります。
なお、協調融資の対義語は「単独融資」で、企業に対して一つの金融機関が単独で融資を実行する通常のスタイルです。
協調融資のパターン
協調融資は、大きく分けて3つのパターンが存在します。
①政府系金融機関と民間金融機関の協調融資
日本政策金融公庫など、政府系金融機関と民間の金融機関による協調融資のことを指します。創業や事業再生、農林漁業などの成長戦略分野を中心に実行されています。
2020年度の協調融資実績は 24,467 件(16,847 億円)で、コロナ禍においても民間金融機関と連携し、4期連続で2万件を超える実績となっています。近年の傾向としては、創業支援などを含む小規模事業者や農林漁業者に対する協調融資が増加しています。
②保証協会付融資とプロパー融資の協調融資
民間金融機関からの保証協会付融資とプロパー融資(金融機関独自の融資)を組み合わせた融資スタイルです。金額の大きな資金を調達する際に、金融機関から提案を受けるケースが多くなっています。
金融機関からすると保証協会付融資は保全が取れている貸金となるため、万が一のリスクが軽減されることになります。これにより、金額の大きい融資が実現可能となるわけです。
③民間のメインバンクとサブバンクの協調融資
日本政策金融公庫や信用保証協会などの公的機関は介入せず、民間の金融機関のみで行います。多くの場合、主要な取引をしているメインバンクと、メインでの取引はしていないサブバンクとの協調融資という形がとられます。
一般的な協調融資の流れ
協調融資は複数の金融機関が連携するため、単独融資とは異なる流れで実行されます。協調融資のパターンによって異なりますが、一般的な手順は次の通りです。
①取りまとめを行う金融機関が、協調融資を行う金融機関と連携して案件を共有する
②各金融機関が貸出条件を決定し、共有のうえ融資を実行する
③取りまとめ役の金融機関に手数料を支払う
通常、取りまとめを行うのはメインバンクです。最終的な決定は企業が行うことになりますが、多くのケースにおいてメインバンク主導で金額(シェア)や担保の割り振りを行うことが多くなっています。
なお、案件や協調融資の形態によっては、金融機関に対して各種手数料の支払いが必要なケースがあります。
協調融資のメリット・デメリット

次に、協調融資のメリット・デメリットを見ていきましょう。
協調融資のメリット
単独融資と比較しながら、協調融資のメリットについて解説します。
①希望額を調達しやすい
協調融資の場合、希望額を調達しやすいというメリットがあります。これは、金融機関からすると、複数の金融機関が加わることで融資先が返済不能に陥ったとしても貸倒れリスクを軽減できるためです。単独融資では二の足を踏まれるような高額の融資規模でも、協調融資なら可能というケースもあります。
②事務負担の軽減
たとえば、ある中小企業が2億円の融資を引き出したいとします。単独融資の場合、A銀行、B信用金庫ごとに融資の相談をして、必要書類の作成を行わなければなりません。
一方、協調融資の場合は、たとえばA銀行が取りまとめ役なら、A銀行とやり取りをすれば、必要書類を金融機関ごとに作成する必要がありません。企業にとっては事務手続きの面でも効率的といえます。
③日本政策金融公庫は成長戦略分野や事業性評価に積極的
一般に民間の金融機関は、創業や事業再生に対する融資は貸倒れのリスクが高いと考えています。しかし前述の通り、日本政策金融公庫は創業や事業再生、農林漁業などの成長戦略分野に対して、積極的な姿勢で協調融資を行っています。
日本政策金融公庫との協調融資によって貸倒れリスクが減るため、通常の単独融資では実現が難しい創業時などの高額融資も可能になります。
協調融資のデメリット
協調融資のデメリットは、協調融資のパターンによって異なっています。一つずつ見ていきましょう。
政府系金融機関と民間金融機関の協調融資の場合
政府系金融機関に担保を差し出す必要がある場合は、協調融資を受けるのは難しいでしょう。この場合、国の抵当権が最上位になり、メインバンクにとっては貸倒れのリスクが高くなってしまいます。そのため、メインバンクが協調融資に二の足を踏む可能性があります。
②保証協会付融資とプロパー融資の協調融資の場合
すでに保証協会の保証枠(無担保8,000万円、担保あり2億8,000万円)を利用しきっている場合には、基本的に協調融資は受けられません。資金繰り改善や事業再生などで保証枠いっぱいに使っているときは、NGを出されると思っていたほうがよいでしょう。
民間のメインバンクとサブバンクの協調融資の場合
日本政策金融公庫との協調融資に比べると、民間金融機関のみの協調融資はハードルが高い点がデメリットです。これは、通常の融資と同じように民間金融機関は貸倒れリスクを考えるためです。
担保を差し出せば融資の引き出しに成功する確率は上がりますが、すでにメインバンクに担保を差し出している可能性もあります。そのため、サブバンクからすると貸倒れのリスクが高くなり、NGを出すことが考えられます。協調融資は双方の金融機関からOKが出ることが前提となるので、一方がNGとなった場合は融資を受けられないというデメリットがあります。
金融機関の協調融資の例

金融機関が行っている協調融資の例を創業時、規模感、プロジェクトに分けて紹介します。
創業に関する資金調達
日本政策金融公庫と城南信用金庫の創業向け協調融資では、次のような商品を提供しています。
▼創業・起業者向け協調融資「Approach 」
対象者 |
創業より3年以内の法人または個人で事業を行っている人 |
---|---|
資金使途 |
運転資金・設備資金 ※借り換えの利用も可 |
融資額 |
5,000万円以内 |
利率 |
所定の利率を適用 |
融資期間 |
運転資金5年以内(据置12か月含む) |
参照:城南信用金庫|創業・起業者向け協調融資「Approach」商品内容
金額の大きい資金調達
千葉県信用保証協会の商品で、民間金融機関のプロパー融資と協調で利用できる制度です。大きな規模で長期資金の調達が可能です。
▼協調融資「コラボ」
対象者 |
|
---|---|
資金使途 |
運転資金・設備資金 |
融資額 |
1億8,000万円以内 |
利率 |
所定の利率を適用 |
融資期間 |
運転資金7年以内(据置6か月を含む) |
大型のプロジェクト(設備投資)の資金調達
融資金額が大きい場合の協調融資の方法として、シンジケートローンというスキームが利用されます。主幹事行が他の金融機関を取りまとめて、複数の金融機関(シンジケート団)が同一条件で一社に対して融資を行う方法です。具体的な例を挙げると、六本木ヒルズの建築時に採用されました。
通常の協調融資と同様、金融機関のリスクヘッジとして利用されます。借入企業は幹事行との条件交渉のみ行えばよく、幹事行がその他複数の金融機関と条件交渉を行うことになるため、企業側は手間を省くことができます。
シンジケートローンには前述した協調融資のパターンに加えて、下記のメリット、デメリットがあります。
<メリット>
返済は主幹事金融機関へ行う
事務管理の負担軽減
金利条件の一本化ができる
案件ごとの資金調達が可能
<デメリット>
資金使途、返済原資が限定される
様々な手数料(コスト)が発生する
プロジェクト延期などの際、契約条件変更手数料が発生する
契約違反時のペナルティーが大きい
協調融資を受けるときの注意点

協調融資を利用する際には、以下の注意点があります。
融資実行までに時間がかかる
日本政策金融公庫からのみ融資を受ける場合には、一般的に融資が実行されるまで1か月程度です。しかし、協調融資の場合は、2~3ヶ月程度を要することが多くなっています。協調融資で時間がかかる理由は、公庫の融資実行の要件の中に、他方の金融機関の融資確定後、日本政策金融公庫も融資をするというものが加わるためです。
信用金庫や地方銀行の場合は、信用保証協会の面談などが加わるため、一般的に融資実行までに2~3か月かかります。そのため、一般的な単独融資と比較して協調融資は時間がかかってしまうのです。
一方の金融機関がNGを出すとNGになってしまう
協調融資では、協調を行う他方の金融機関の融資実行が可能であるという条件のもと実行が可能となります。
日本政策金融公庫と民間金融機関とでの協調融資のパターンにおいて、仮に日本政策金融公庫はOKであっても、もう一方の金融機関がNGなら結果的に日本政策金融公庫もNGとなります。これは、協調融資の性質上、想定している事業計画に必要な資金であることが前提となるため、一方の融資がNGであれば資金不足となり、事業計画や返済計画が滞ってしまうことになるためです。
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