2023年11月10日 基礎知識

多角化経営とは|メリット・デメリットと取り組む際のポイント、成功事例を解説

多角化経営とは|メリット・デメリットと取り組む際のポイント、成功事例を解説

多角化経営とは、主力事業とは別の新たな事業領域に進出して収益拡大やリスク分散を図る経営手法です。顧客ニーズの多様化や市場環境の変化に対応する手法として注目が高まっています。本記事では、多角化経営の基礎知識とメリット・デメリット、取り組む際のポイント、成功事例まで解説します。

目次

多角化経営とは

多角化経営とは

多角化経営とは、主力事業とは異なる分野の事業に進出し、多様な事業を展開する経営戦略です。これまで培った技術・ノウハウや強みとなるリソースを活かして新商品・サービスを開発したり、新たな市場を開拓したりすることで継続的な成長を目指します。

企業を取り巻く環境は絶えず変化しており、顧客ニーズの多様化もその一つです。既存事業の拡大が難しい場合、多角化経営に乗り出すことで収益性を高めることができます。

多角化経営のメリット・デメリット

多角化経営のメリット・デメリット

多角化経営のメリット・デメリットを紹介します。

メリット①収益拡大につながる

新規事業で収益化できれば、自社の収益拡大につながります。また、既存事業の市場がシュリンクしている場合は、多角化によって安定的に収益を確保できるようになります。

メリット②リスクの分散につながる

一つの事業に依存している場合、社会情勢や市場環境の変化など外的要因による影響が企業全体に及んでしまうリスクがあります。多角化経営を行うことで、一つの事業が不振になったとしても他の事業でカバーすることが可能になります。

メリット③既存事業とのシナジー効果を得られる

シナジー効果とは、2つ以上の事業を組み合わせることで単独で展開していたときよりも大きな成果が得られる相乗効果のことです。

多角化経営によるシナジー効果では、次のようなケースがあります。

  • 販促面:販売チャネルやプロモーションのノウハウ獲得・共有によるシナジー効果
  • 生産面:設備や原材料などの共有によるシナジー効果
  • 技術面:技術やノウハウの共有によるシナジー効果

これらのシナジー効果により、コスト削減や売上拡大が期待できます。

メリット④社員のモチベーション向上につながる

主力事業が一つの企業は、社員のキャリアの選択肢や将来的なポストが限定されてしまうというネックがあります。2つ以上の事業を展開する多角化経営では様々なキャリアの可能性が生まれるため、社員のモチベーション維持・向上につながります。

メリット⑤プロダクトライフサイクルに配慮できる

プロダクトサイクルとは、商品・サービスの寿命を指す言葉です。商品・サービスは、開発・導入・成長・成熟・衰退といった段階を経て、寿命を迎えます。とくに近年は、プロダクトライフサイクルの期間が短くなってきています。

既存事業が衰退期に入った場合も、新規事業を展開していれば、リスクを抑えつつ安定的に収益を維持しやすくなります。

デメリット①コストがかかる

多角化経営では、新規事業への投資としてコストがかかります。展開する事業の種類によって費用感は異なりますが、ある程度の資金が必要であることを考慮しておく必要があります。また、新規事業がすぐに軌道に乗るとは限らないため、​​長期的な視点で見ていかなければいけません。リターンを得られるまでに時間がかかることも念頭に置いておきましょう。

デメリット②リソースが分散する

多角化経営では複数の事業にリソースを割く必要があるため、リソースが分散してしまいます。多角化経営に取り組む際は、既存事業とのバランスを考慮しながら新規事業にどれくらいのリソースを投入するか、しっかり管理していかなければいけません。

デメリット③企業イメージが定まらなくなる可能性がある

複数の事業を展開していると、サービスの一貫性がなくなり企業イメージが曖昧になってしまうことがあります。新たな事業を展開していく多角化経営ですが、展開の仕方によっては「何をやっている会社かわからない」という印象を与えてしまう可能性がある点に注意が必要です。

多角化経営の分類

多角化経営の分類

多角化経営は以下の4つに分類されます。

  • 水平型
  • 垂直型
  • 集中型
  • コングロマリット型

それぞれ詳しく見ていきましょう。

水平型

水平型は、既存事業と同じ分野の市場に対して新商品・サービスを展開していく戦略です。既存事業のノウハウを活用し、新しい製品やサービスを市場に投入します。

たとえば、「オートバイを生産していた会社が乗用車の生産を開始する」などのケースが挙げられます。既存事業のノウハウや設備を活かせるため、費用を抑えて事業展開できるのがメリットです。

垂直型

垂直型は、自社で展開する既存事業の上流・下流過程に進出し、事業を拡大していく戦略です。生産や製造が上流、流通や販売が下流に該当します。

たとえば、「飲食チェーン店が食材の生産や加工を担う」といったケースです。既存事業にないノウハウが必要ですが、新規事業のノウハウが確立できれば既存事業の基盤をより強固なものにできます。

集中型

集中型は、既存事業で得たノウハウを活かして新しい市場で商品・サービスを販売し、事業を拡大していく戦略です。たとえば、富士フイルムではフイルムの技術を活用して化粧品をつくり、新たな市場に進出しました。

自社の経営資源を活用した事業展開であるため、競合他社と差別化しやすいのがメリットです。成功すれば、既存事業以上の収益が期待できる可能性もあります。

コングロマリット型

コングロマリット型は、自社で展開している既存事業とは関連性のない市場で事業を展開していく戦略です。たとえば「自動車メーカーがリゾート事業に進出する」「電機メーカーがヘルスケア事業を展開する」などのケースが挙げられます。

多角化経営の中でもっとも難易度が高いとされている戦略です。成功した場合のリターンは大きいですが、既存事業の基盤が整っていないと失敗するリスクが高くなります。

多角化経営に取り組むときのポイント

多角化経営に取り組むときのポイント

多角的経営を成功させるためにも、しっかりとポイントを押さえて取り組むことが重要です。ここでは、多角化経営に取り組む際のポイントを紹介します。

既存事業の価値を再確認する

経営を多角化するためには一定の資金とリソースが必要であり、十分な経営資源・経営基盤があることが前提です。

まずは既存事業の価値を再確認し、既存事業の価値を最大化できているかを検討する必要があります。既存事業の価値が最大化していない、改善すべき点がある場合は、先に取り組むことで多角化に向けた基盤を整えやすくなります。

スモールスタートを意識する

多角化経営に取り組む際は、スモールスタートを意識しながら展開していくことをおすすめします。いきなり大規模的にスタートしてしまうと、事業が失敗してしまったときの軌道修正が難しくなってしまうためです。分析と改善を繰り返しながら、少しずつ規模を広げていくのがポイントです。

資金調達する

新規事業を立ち上げ、事業を多角化していくためには資金が必要です。必要に応じて資金調達を検討するのも一つの方法です。資金調達には融資や補助金、クラウドファンディングなどがあります。

たとえば、日本政策金融公庫の「中小企業経営力強化資金」は、経営の多角化に役立つ制度です。新事業分野の開拓などを進める事業者を対象に、最大7億2千万円を借り入れできます。

多角化経営の成功事例

多角化経営の成功事例

ここでは、多角化経営に成功した企業の事例を3つピックアップして紹介します。

セブンイレブン

大手コンビニチェーンであるセブンイレブンは、銀行業界に参入し多角化に成功した企業です。店舗内にATMを設置することで、24時間365日の利用が可能な金融サービスを提供しています。

この戦略により、利便性の高い金融サービスを提供しつつ顧客の来店頻度を増加させ、店舗売上の向上につなげています。

ソニー

日本を代表するグローバル企業のソニー株式会社も、多角化経営の企業です。家電事業、音楽事業、テレビ事業、映画事業、ロボティクス、ゲーム事業、金融事業など、幅広い事業に取り組んでいます。

ソニーは2014年に主力事業が低迷し、約1,000億円の赤字を計上しています。しかし、その際も金融事業の成功が事業の支えとなり、多角化戦略によるリスク分散の効果が発揮されました。

ヤマハ

総合楽器メーカーとして名高いヤマハも、事業の多角化に成功している企業の一つです。楽器事業の販売・製造をメインに、音楽教室の運営や音響機器の販売など様々なサービスを展開しています。

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多角化経営は、目まぐるしく変化する昨今のビジネス環境において安定的に事業を成長させるための経営戦略です。ただし、多角化経営にはメリットだけでなくデメリットもあるため、取り組む際は長期的な視点で計画的に準備を進めていくことが重要です。

多角化経営では、新規事業を立ち上げるためにまとまった資金が必要です。資金調達方法には融資や補助金、クラウドファンディングなどがあり、種類によって対象事業者や融資可能額が異なります。新規事業の立ち上げや事業拡大に活用できる資金調達方法をチェックし、自社の事業に合った方法を検討しましょう。

しかし、どの資金調達方法が自社で使えるのか一から調べるのは骨が折れる作業です。「freee資金調達」を活用すれば、そんな経営者の資金調達のお悩みを解決します。

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