2023年5月10日 基礎知識

資金調達コストとは|種類・計算方法とコストの目安、削減するためののポイントを解説

資金調達コストとは|種類・計算方法とコストの目安、削減するためののポイントを解説

企業が新たな事業を開始する際や事業拡大のために必要な資金を調達するには、資金調達コストがかかります。資金調達方法によってもコストがかわるため、しっかり理解しておくことが重要です。当記事では資金調達コストの種類や計算方法、資金調達方法別に見たコストの目安、コストを抑えるための方法まで解説します。

目次

資金調達コストとは

資金調達コストとは

資金調達コストとは、事業拡大や設備投資、運転資金の確保などを目的に資金調達する際にかかる費用のことをいいます。

具体的には、借入金の利子、株主への配当、株式発行に伴う手数料や発行費用などが含まれます。企業が資金調達を行う際には、これらのコストを正しく計算して資金調達の方法を選択することが大切です。

資金調達コストの種類

資金調達コストの種類

資金調達コストは、資金調達方法によって大きく3種類に分類されます。一つずつ見ていきましょう。

負債コスト

負債コストとは、企業が銀行借入や社債発行によって資金調達した際にかかる利子や手数料などの費用です。借入金の金利や債務不履行リスクなどによっても費用の変動があるため、信用力が低い企業の場合はコストが増大しやすい傾向があります。

ただし、利息は発生するものの、負債の利子費用は税控除の対象です。節税効果が期待できる分、実際の負債コストの負担を減らせるという側面があります。

株式資本コスト

株式資本コストとは、企業が株式を発行して資金を調達する際に発生する費用のことです。株主に支払う配当は、株式資本コストとなります。

株式資本コストは、株式の時価や投資家の期待リターンなどによって変動します。なお、中小企業においては、経営者が株式を100%保有しているケースもあります。そういった場合は配当を分配する必要がないため、株主資本コストは発生しません。

内部留保コスト

内部留保とは、企業が生み出した利益から税金や配当、役員報酬などを差し引いた残りの利益を社内に蓄積することを意味します。会計上は利益剰余金として計上します。

内部留保コストとは、自社の利益を利用して資金調達する場合にかかるコストを指します。

本来なら株主への配当に充てる分を内部留保していることになるため、株式資本コストの一つと捉えることもできます。

内部留保は万が一の事態に備えられるという利点がありますが、一方で株価が下がる要因となるケースもあります。また、内部留保が増えると留保金課税によって税負担が増える点にも注意が必要です。

資金調達方法と資金調達コストの目安

資金調達方法と資金調達コストの目安

ここでは、資金調達方法別に見た資金調達コストの目安について紹介します。

公的機関の融資

公的機関の融資とは、国や地方自治体が運営する制度によって行われる融資のことです。代表的なものとしては、日本政策金融公庫や各自治体が行っている制度融資などが挙げられます。公的機関からの融資は社会的・公共的な使命を持って行われるため、低金利かつ返済期間も長く設定できるのが特徴です。

・資金調達コストの目安

金利相場:0.5%〜2%

銀行融資

銀行融資の場合の資金調達コストは、金利という形で発生します。企業の信用力や財務状況などによっても変動しますが、公的機関に次いで資金調達コストは低いといえるでしょう。

ただし、銀行がそれぞれに審査基準を設けて直接融資するプロパー融資では、審査通過が難しい傾向があります。とくに創業期にある中小企業や個人事業主は事業実績が少ないことから、融資を受けるのは難しいのが実際です。審査基準に見たない場合は、銀行以外の選択肢を模索する必要があります。

・資金調達コストの目安

金利相場:2%~5%

消費者金融の融資

消費者金融を利用するメリットは、審査スピードが速いことです。そのため、緊急で資金が必要になった際は有効な手段といえるでしょう。ただし、消費者金融は金利が高い傾向にあるため、資金調達コストが膨らむ点に注意しなければなりません。

・資金調達コストの目安

金利相場:5%〜18%

ファクタリング

ファクタリングは、売掛債権を売却することで資金を調達する方法です。手続きが比較的簡単で返済計画を立てる必要もないため、すぐに手元資金が必要という場合に利便性が高い方法です。しかし、売却する債権の金利や手数料によって、資金調達コストが大きく変わるため注意が必要です。

・資金調達コストの目安

2者間ファクタリングの場合の手数料:10%〜30%

3者間ファクタリングの場合の手数料:1%〜10%

増資

増資は、投資家やベンチャーキャピタルに新株を発行して資金を調達する方法です。

増資の場合、発行費用などのコストがかかりますが、返済義務がなく金利も発生しないというメリットがあります。一方で、新たな株式が市場に出回るため、企業の株主構成が変化する可能性がある点に注意が必要です。

・資金調達コストの目安

株式資本コスト:配当によって変動

資金調達コストの計算方法

資金調達コストの計算方法

資金調達コストは、WACC(Weighted Average Cost of Capital)という計算方法を用いることで算出することができます。WACCとは、日本語では「加重平均資本コスト」のことで、借入にかかるコストと株式調達にかかるコストを加重平均したものです。

加重平均とは平均値を計算する方法の一つで、ただ単純に平均値を算出するのではなく、各値の重要度を考慮して平均値を算出する方法です。企業全体として調達した資金に対してどれくらいのコストがかかっているのか、WACCを計算することで把握することができます。

WACCを用いた資金調達コストの計算方法は以下の通りです。

WACC(%)=RE×(E/(E+D))+RD(1-T)×(D/(E+D))

※RE:株式資本コスト、RD:負債コスト(実効税率影響前)、E:株式資本、D:負債、t:実行税率

WACCの計算例

加重平均資本コストを求めるには、まずRE(株主資本コスト)とRD(負債コスト)を計算する必要があります。

ステップ1. RE(株主資本コスト)を計算する

◾️計算式

RE=R1=RF+β1(RM-RF)

※R1:企業への投資の期待収益率、RF:リスクフリーレート、β:ベータ値、RM:マーケットリスクプレミアム

リスクフリーレートとは、ほとんどリスクのない状態で株主が期待する収益率を示すものです。一般的には、10年国債の利率0.04%を用います。

一方、ベータ値とは、株式市場全体に投資する場合と比較して、ある特定の株式に投資する場合のリスクの度合いを示す係数であり、期待収益率の変動の程度を指します。株式のリスクが、マーケット全体への投資と同程度である場合、ベータ値は1になります。

また、マーケットリスクプレミアムとは、株式市場全体に投資する場合、リスクフリーレートに加えて株主が求める期待収益率を指します。

例)リスクフリーレート0.04%、ベータ値1、マーケットプレミアムリスク5%の場合

株主資本コストは、R1=0.04+1×(5-0.04)=5(%)です。

ステップ2. RD(負債コスト)を計算する

◾️計算式

R(実効税率影響後の負債コスト)=RD(1-T)

※RD:借入利率、T:実効税率

借入利率を使って、負債コストを計算することができます。ただし、利息が費用として計上されることで法人税などの税金が減額されるため、この影響も考慮して計算する必要があります。

例)借入利率3%、実効税率40%の場合

実効税率影響後の負債コストは、R=3(1-0.4)=1.8(%)です。

ステップ3. WACC(加重平均資本コスト)を計算する

負債と株主資本の利用比率が2 : 1であると仮定した場合、ステップ1とステップ2で算出した値から、WACCは下記のように計算できます。

加重平均資本コストは、WACC=5×1/3+1.8×2/3=2.8667……(%)です。

資金調達コストを削減する方法

資金調達コストを削減する方法

資金調達ではコストは、可能な限り削減することが重要です。ここでは、資金調達コストを削減する方法を紹介します。

低金利の融資を利用する(日本政策金融公庫、制度融資など)

日本政策金融公庫の融資や制度融資では、低金利で融資を受けることが可能です。結果として資金調達コストを削減することができます。

ただし、これらの融資では当然ながら審査に通過しなければいけません。返済能力のほか、面接では事業の成長性や収益性、経営者としての資質などが評価基準としてチェックされます。

不動産を担保にする

不動産を担保にするのも、資金調達コストを下げる上で効果的です。担保があることで融資をする側のリスクが低くなるため、金利を下げることが可能です。また、担保を提供することで融資限度額が高くなったり、返済期間を伸ばしたりできるメリットもあります。

ただし、不動産を担保にする場合は、事務手数料や不動産鑑定費用、印紙代といった李氏以外の費用が発生します。また、万が一返済できなくなった場合、担保の不動産が売却されてしまうリスクがあることにも注意が必要です。仕組みやかかる費用を確認した上で利用しましょう。

事業計画・返済計画による交渉を行う

融資を受ける際には、事業計画や返済計画の提出が必要です。このとき、金融機関との交渉によって金利や返済期間を調整することが可能な場合もあります。そのため、事業計画や返済計画は入念に作り込むことが重要です。

事業計画は、具体的かつ実現可能なものにすることが大切です。収益性や成長性の高い分野であることをアピールしたり、将来的な事業展開や事業拡大の計画を立てたりすることで、金融機関の評価を高めることが可能です。

返済計画を明確にすることも大切です。事業計画と連動させながら返済の見込みが具体的である点や、借入ができた場合に収益性が向上する点などをアピールするとよいでしょう。

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資金調達する際は、負債コストや株式資本コスト、内部留保コストなど様々なコストがかかります。資金調達方法によって必要なコストが異なるため、自社に合った資金調達方法を見つけたり、資金調達コストを抑えたりといった工夫が必要です。資金調達コストについてしっかりと理解した上で、効果的な資金調達を行っていきましょう。

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