美容室が運転資金の融資を受けるには|運転資金の考え方と資金調達の手段

美容室を経営するには、技術的なスキルだけでなく経営スキルも求められます。そのため、開業したものの資金繰りに困ってしまい、融資を検討する経営者が少なくないのが現状です。ここでは、美容室の運転資金や資金調達の考え方をはじめ、運転資金の融資を受けられる金融機関と審査のポイントまで解説します。
目次

美容室の運転資金の考え方

運転資金とは、毎月の運営にかかる費用を支払うための資金のことです。まずは、美容室の運転資金の考え方について見ていきましょう。
運転資金はどれくらい必要か
美容室を運営するにあたってかかる費用には、次のようなものがあります。
●家賃・水道光熱費・通信費
●人件費
●材料費(シャンプー・薬剤など)
●広告宣伝費
家賃や人件費は、売上がゼロだったとしても支払わなくてはならない固定費です。材料費は売上と連動して変わることから、変動費といわれています。広告宣伝費は自店の戦略によってどの程度かけていくかが変わりますが、美容室の場合は毎月一定以上の新規客を集めないと売上が伸びていかないため、ある程度の予算を投じる必要があります。
美容室の利益率(売上に対する利益の割合)は7~10%程度が一般的なラインです。つまり、売上の9割以上が運転資金として必要になるということです。とくに美容室経営では、固定費となる家賃・人件費に占める割合が高く、売上の5~6割程度となっています。
ここで注意しなくてはならないのは、たとえ売上が減少したとしても、固定費はかかり続けるということです。そのため、万が一の場合に持ちこたえられるだけの運転資金が手元にある状態をつくらなくてはならないわけです。一般には、3カ月分ほどの運転資金が手元にあれば、余裕を持って美容室経営ができるとされています。
現在はキャッシュレス決済が進んでおり、入金までにタイムラグが発生するケースもあります。運転資金が底をつけば廃業に至ってしまうため、お金の流れ(キャッシュフロー)をしっかり管理することが重要です。
運転資金の借入を検討すべきケース
運転資金の調達を検討すべきケースは大きく2つあります。一つは、手元に運転資金が残っていない場合です。もし売上の1カ月分を切っている状態なら、早急に資金調達手段を検討しなくてはなりません。
二つ目は、スタッフを増やしたり広告宣伝を拡大したりして、売上拡大を狙いたい場合です。手持ち資金がある状態で拡大できるのが理想ですが、たとえば、人手が増えれば売上が伸びることがわかっているのに資金不足が心配で二の足を踏んでいるという状態なら、検討してみる価値があるといえるでしょう。ただし、売上予測や経費のシミュレーションをしっかり行い、計画的に進める必要があります。
美容室が運転資金の融資を受ける方法

ここからは、美容室経営者が運転資金を調達したい場合の方法について見ていきます。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は政府系金融機関で、小規模事業者への融資制度を多数用意しているため、美容室経営の資金調達手段として真っ先に検討したいところです。低金利、無担保・無保証での借入が可能というメリットもあります。
美容室の運転資金に利用できる融資制度は、主に次のものです。
▼国民生活事業
融資制度 | 対象 | 限度額 |
---|---|---|
新創業融資制度 | 税務申告を2期終えていない | 1500万円(運転資金) |
女性、若者/シニア起業家支援資金 | 女性または35歳未満か55歳以上、事業開始後7年以内 | 4800万円(運転資金) |
振興事業貸付 | 生活衛生関係の事業者で、振興計画の認定を受けている生活衛生同業組合の組合員 | 5700万円(運転資金) |
生活衛生改善貸付 | ・生活衛生関係の事業者で、生活衛生同業組合等の推薦を受けている・常時使用する従業員が5人以下 | 2000万 |
制度融資
制度融資とは、地方自治体と民間の金融機関、信用保証協会とが連携して行う融資のことです。信用保証協会は、中小企業や小規模事業者の資金調達をサポートする公的機関で、各都道府県に設置されています。
小規模事業者は事業基盤が不安定なケースが多く、民間の金融機関からの借入ハードルが高いのが現状です。そのため、信用保証協会の保証を付けることで、スムーズな借入を支援しています。保証料を支払う必要はありますが、自治体が保証料の一部を負担するなどして、事業者の負担を軽減してくれます。ただし、審査に時間を要する点に注意しましょう。
運転資金の融資を受ける際に必要な書類と審査のポイント

運転資金の融資を受ける際は、事前準備が重要です。必要な書類と審査のポイントを見ていきましょう。
必要な書類
美容室経営の融資において、一般的に必要とされる書類と記入内容を簡単にまとめました。
実際に必要な書類は金融機関によって変わってきますが、融資に向けて準備する際の参考にしてください。
<美容室の融資で必要な書類の例>
必要な書類 | 内容 |
---|---|
事業計画書 | 事業計画を伝えるための資料で、売上・利益の計画を具体的に記載する。単なる希望的観測とならないよう、直近の客数など根拠のある数字を入れるようにする |
試算表 | 月ごとの集計 |
資金繰り表 | お金の動きをまとめた書類。実績と今後の資金繰り計画を記載する |
損益計算書 | 売上・費用・利益をまとめた書類 |
貸借対照表 | 事業の資産・負債をまとめた書類 |
銀行との取引履歴 | 銀行ごとに借入金や預金残高などを記載 |
借入申込書 | 金融機関が用意する申込書 |
納税証明書 | 所得税・住民税の納税を確認できる書類 |
その他 | ・本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)・印鑑証明・収入証明 など |
必要書類に不備があると審査に通らなかったり、あらためて準備するのに時間を要したりします。事前にどのような書類が必要になるのかを金融機関に確認し、入念に進めることが大切です。
審査のポイント
金融機関によって審査基準は変わりますが、とくに次の2点は審査を通過するうえで重要なポイントとなります。
過去の支払い履歴
税金の納税に遅延や滞納がないかという点にくわえ、公共料金や家賃、住宅ローン、クレジットなどの支払い状況を確認されます。期日通りにしっかり支払わなくてはならないものに対して義務を怠っていることがわかると、融資をしてもきちんと返済してもらえない可能性が高いと判断され、審査に通りにくくなるため注意しましょう。
事業計画書をしっかり作る
事業計画書は、いわば経営の設計図となるものです。とくに赤字になっている場合は、どのように改善していく計画となっているのかを示せなければ、審査通過の可能性が下がってしまいます。以下の点を意識して、説得力のある事業計画書を作成しましょう。
●売上計画
売上計画を立てて、どのように売上を伸ばしていくのかを明確にします。
美容室の売上は「席数×回転数×客単価×営業日数」で決まります。回転数は、1日に何人の施術を行ったかを表す数字です。たとえば、5席ある美容室が1日10人の施術を行った場合、2回転していることになります。
この計算式からわかるように、売上を伸ばすには「単価を上げるか」「回転数を伸ばすか「営業日数を増やすか」いずれかの取り組みが必要となります。どのような工夫やアイデアで売上を伸ばしていくかという点だけでなく、数字のシミュレーションを入れて説得力を高めるようにするのがポイントです。
●損益計画
どのように利益を生み出していくのか、損益計画を明確にしましょう。利益を伸ばすには、売上を増やすか、経費を減らすかの2つがあります。具体的にどんな取り組みによって利益を出せるようになるのかを考え、事業計画書に盛り込むことが重要です。
事業計画書に不安がある場合は、税理士や中小企業診断士といった専門家に見てもらい、よりよい計画書を作成するのも一つの方法です。
「freee資金調達」で経営力をアップしよう

日本政策金融公庫によると、美容室が開業して軌道に乗るまでには半年ほどの期間を要するとされています。また、開業したものの、多くの美容室が数年で廃業になってしまっているのも事実です。安定した黒字経営を目指すには、技術面の強化だけでなく、経営スキルも磨いていく必要があるのです。
freee資金調達は、スモールビジネスの資金調達をサポートするサービスです。Web上で条件を入力するだけで、さまざまな金融商品の中から自店にとって最適なものを選べ、そのまま申し込むことも可能。金融機関に足を運ぶ時間をなかなか作れない美容室経営者にとって、便利なサービスです。
また、融資の可能性を自動診断する機能も搭載しており、効率的に自店に合った金融商品を探し出すことができます。ぜひ気軽にご利用ください。
- ローン商品や給付金等の情報は、特に断りがない限り記事公開現在のものです。最新の情報は各金融機関のホームページや公式サイトでご確認ください。
- freee資金調達はお客様のサービス選択時の参考情報提供を目的としており、特定の金融機関、ローン商品の優劣を示したものではありません。
- 各金融機関の審査結果によっては利用できない場合があります。