2022年3月9日 基礎知識

卸売業の融資|資金繰りが悪化するパターンと改善ポイント・資金調達の方法

卸売業の融資|資金繰りが悪化するパターンと改善ポイント・資金調達の方法

売掛金での取引が主となる卸売業は、資金繰りが難しい業種の一つです。景況感の影響を受けやすく、過剰在庫が要因となって運転資金が底をついてしまうケースも少なくありません。ここでは、卸売業の資金繰りのポイントを整理するとともに、運転資金の融資を受ける方法について解説します。

目次

卸売業で資金繰りが悪化するケース

卸売業で資金繰りが悪化するケース

卸売業はまず仕入れを行うため、運転資金を確保しておかなければならない業種です。どのようなケースで資金繰りが悪化してしまうのか見ていきましょう。

価格競争による値下げ

市場が成熟すると、商品の品質や機能性による差別化が難しくなるコモディティ化が起こります。次第に価格競争が激しくなり、値下げをしてでも売上を追いかけざるを得ないという状態になります。結果として、薄利多売の傾向が顕著になり、利益を出すには数多く仕入れて販売する必要が生じます。

卸売業の場合、こうした繰り返しの中で手元の運転資金が枯渇し、資金繰りが悪化するケースが多くなっています。卸売業はもともと薄利の傾向にあるため、値下げによる売上戦略に失敗すると、ダイレクトに資金繰り悪化の要因になってしまうわけです。

取引先の倒産・業績悪化・倒産

卸売業は売掛金での取引が主となっているため、取引先の突然の倒産によって回収できなくなれば資金繰りに大きく影響します。倒産まで至らないにしても、取引先の業況悪化は卸売会社の売上に直接的に関わってくるでしょう。支払いの遅延が起きた場合は、手元に潤沢な運転資金がなければキャッシュフローが悪化してしまいます。

過剰在庫

卸売業の場合、在庫管理も資金繰りに大きな影響を与える要素です。とくに取り扱う商品が多い場合、適切な在庫管理ができずキャッシュフローが悪化してしまうケースが多くなっています。

在庫の流動性が低く過剰在庫となっている場合、保管する倉庫や維持管理コストが増すほか、商品自体が古くなり品質が劣化したり価値がなくなってしまったりすることもあります。仕入れのタイミングや量、適切な在庫管理は卸売業のキャッシュフローにおいて重要なポイントです。

卸売業の資金繰りのポイント

卸売業の資金繰りのポイント

資金繰りが悪化するケースを踏まえ、卸売業の資金繰りを改善するためのポイントとなるのは次の2つです。

仕入れ・在庫の調整

過剰に在庫を抱えてしまうのは、仕入れから販売までに時間がかかり過ぎているためです。つまり、在庫回転率が悪く、現金化が遅れるために資金繰りが悪化してしまうわけです。

このケースでは、できるだけ早く現金化する施策を講じて棚卸資産を減らす必要があります。商品別に在庫回転率の分析・管理を行うなどして状況を把握し、在庫期間を短くして早期に現金化するよう取り組むことが重要です。また、取り扱う商品の選別をしっかり行うほか、仕入れのロット数を調整するなど不要な在庫を抱えないようにする工夫も必要です。

支払い・回収期間の調整

卸売業では、売上の入金日よりも仕入れ代金の支払いが先になるケースがほとんどです。掛取引が中心となるため、支払いと売上回収のタイムラグが大きいほど、必要な運転資金も大きくなるビジネス構造になっています。

たとえば、仕入れの支払い月から売上回収まで3カ月ある場合、手元には最低でも3カ月分の運転資金が必要になるということです。そのため、支払いは可能な限り遅らせ、売上回収は少しでも早くするのが資金繰りを改善するポイントとなります。

卸売業の運転資金の調達方法と審査のポイント

卸売業の運転資金の調達方法と審査のポイント

卸売業では仕入れから販売までにタイムラグが生じるため、その間の運転資金が不足すると経営が悪化します。ここでは、運転資金の調達方法と審査のポイントを見ていきます。

日本政策金融公庫

政府系金融機関である日本政策金融公庫では、様々な融資制度を設けています。大きくは小規模事業者への小口融資を対象とした「国民生活事業」、中小企業向けの長期事業資金の融資をする「中小企業事業」、農林水産物を取り扱う加工流通分野への融資を行う「農林水産事業」の3つに大別されます。

以下に、国民生活事業で卸売業の運転資金に利用できる制度の例を紹介します。

 
制度名称 対象 限度額 融資期間
企業活力強化資金 卸売業・小売業・飲食業・サービス業など 4800万円(運転資金) 7年以内(運転資金)据置期間:2年以内
中小企業経営力強化資金 ・市場の創出・開拓を行おうとする企業・認定機関の指導・助言を受けている 4800万円(運転資金) 7年以内(運転資金)据置期間:2年以内
女性、若者/シニア起業家支援資金 ・女性もしくは男性35歳未満か55歳以上・新たに起業する人、または事業開始からおおむね7年以内 4800万円(運転資金) 7年以内(運転資金)据置期間:2年以内

参照:日本政策金融公庫|融資制度一覧から探す

日本政策金融公庫のメリットは、無担保・無保証で小規模事業者への小口融資にも対応していることです。低金利で借入できるほか、返済の据え置き期間が設けられている点もメリットです。

ただし、審査には多くの書類の提出が求められるため、入念に準備する必要があります。面談では、質問に対し明確に答えられるようにしておくことも重要なポイントです。なお、税金や公共料金の滞納がある場合や、ローンの支払いに遅延・滞納があるときは審査に通らない可能性が高くなるので注意してください。

銀行

民間の銀行も運転資金の融資を行っています。限度額が大きく、年利2.0%前後からの低金利で借入できる点がメリットです。ただし、銀行が直接行うプロパー融資は審査基準が厳しくなっています。これは、返済能力によって銀行の貸し倒れリスクが大きくなるためです。創業から間もなく実績がない企業や決算書の内容が悪い場合、融資は難しいと思ったほうがよいでしょう。

卸売業は運転資金が必要な業種であることは銀行側も理解しているため、審査では所要運転資金がどれくらいかを把握するうえで、決算書や試算表、受注明細などの書類を求めます。

売上が増加傾向にあり、増加運転資金が必要という場合は、これを裏付ける売上推移表なども用意しておくとよいでしょう。逆に、売上が減少傾向にあるのに運転資金の融資を求める場合、金融機関としては慎重な判断をすることになります。借入により資金繰りが改善することがわかるような資金繰り計画を作成し、返済能力を伝えることがポイントとなります。

ファクタリング

ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に売却することで、入金期日よりも前に現金化できる仕組みのことです。サービスによっては即日に現金化することも可能なため、すぐにでも運転資金を調達したい場合の手段として、卸売業においても活用が進んでいます。

ファクタリングのメリットは、つなぎの運転資金を即調達できること。また、債権をファクタリング会社に譲渡することになるので、取引先の倒産などによる未回収リスクがなくなります。融資とは異なるため、信用情報に影響が出ないという利点もあります。ただし、ファクタリング会社に手数料を支払う必要があります。当初予定されていた入金額よりも減るため、収益性が悪化しないよう慎重に検討する必要があります。

ファクタリングの審査では、売掛先の信用力や売掛債権の支払い期日などが重視されます。これは、ファクタリング会社にとっては買い取った売掛債権によって未回収リスクが変わってくるからです。そのため、売却したい売掛債権のリスクが高いと判断された場合、審査に通らない、または手数料の割合が高くなることがあります。

キャッシュレス決済導入に際する融資制度とは

キャッシュレス決済導入に際する融資制度とは

日本政策金融公庫では、2020年4月よりキャッシュレス決済を導入する小規模事業者・中小企業を対象にした融資制度を設けています。クレジットカードや電子マネー、QRコードなどによるキャッシュレス決済が進む現在、導入を検討したいものの資金が足りないといった事情を抱える事業者への支援制度です。

●対象
卸売業・小売業・飲食業・サービス業を営む事業者

●資金使途
キャッシュレス決済に対応するための運転資金(長期)

●限度額(金利)
小規模事業者:4800万円(基準金利-0.4%)
中小企業:2億5000万円(基準金利-0.4%)

詳しくは以下も参考にしてください。

経済産業省|キャッシュレス決済を導入する中小・小規模事業者の皆様の資金繰りを支援します!

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卸売業は、効率的な仕入れと売掛金回収が鍵となる業種であり、キャッシュフローが滞らないよう、しっかり管理しなくてはなりません。また、取引先の業況の影響をダイレクトに受けるため、不測の事態に備えておくことも重要です。

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