不動産屋開業の流れ|必要な資格や準備、資金調達方法について解説

賃貸物件を探すときやマイホームを購入するときに活用する不動産屋。お客様の「住」に関わるため責任が大きく、大きなお金が動くことから非常にやりがいのある仕事といえるでしょう。一方で、不動産屋で開業するためには、いくつかの手順を踏む必要があります。
本記事では、不動産業の開業の流れや押えておくべきポイント、必要な資格と届出、資金調達方法について紹介します。これから不動産業を開業する人はもちろん、 不動産の開業を検討している人はぜひ参考にしてください。
目次
- 不動産業を開業する流れと押さえておくべきポイント
- 不動産業の開業に必要な資格と届出
- 不動産業の開業資金はどれくらい?
- 不動産業を開業するときの資金調達方法
- 「freee資金調達」で最適な資金調達方法を見つけよう

不動産業を開業する流れと押さえておくべきポイント

不動産業を開業する流れについて、押さえておきたいポイントとともに解説していきます。
事業形態を決める
まず、開業する上で「個人」「法人」のどちらで事業を行うかを決めます。開業の手間や費用、税率など、それぞれのメリット・デメリットを把握しながら決めましょう。
個人事業主のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
開業時手続きが簡単初期費用があまりかからない所得が少ないうちは、個人事業主の方が税額が低い | 法人に比べて社会的信用度が低い融資を受けにくい経費にできる範囲 |
法人のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
社会的信頼度が高い経費にできる範囲は広い一定の所得を超えると、法人税の方が節税になる | 手続きが多く、費用もかかる赤字でも税金を払う必要がある従業員への社会保険の負担が発生する |
なお、会社を設立する際はいくつかの手続きを踏む必要があります。会社設立に関する詳しい内容は以下の記事を参考にしてください。
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会社設立の流れと必要な手続き|合同会社との違いも合わせて紹介
業務形態を決める
開業する業務形態を決めます。不動産によって必要となる経費が異なるので、状況に合わせて適切な業務形態を選びましょう。ここでは、不動産の代表的な業務形態について紹介します。
賃貸仲介業
アパートやマンションなど賃貸の仲介を行います。賃貸契約が成立した際に支払われる仲介手数料が報酬です。売買仲介に比べて1件あたりの報酬は少ないものの、進学や転勤での引っ越しニーズは高く、客層も広いため比較的安定しやすい開業形態です。
売買仲介業
アパートやマンションなど売買の仲介を行います。売買契約が成立した際に支払われる仲介手数料が報酬です。1件あたりの報酬が大きい点がメリットですが、契約へのハードルはなかなか高いといえます。
賃貸管理業
賃貸管理業は、契約者・テナントに関する管理業務や建物などのメンテナンス業務を行うのが仕事です。内容としては、入居後の対応や家賃の回収、トラブル対応などがあり、業務は多岐にわたります。大家さんが兼任しているケースもあります。
不動産コンサルティング業
不動産コンサルティングの仕事内容は、不動産の購入や売却、管理方法などをアドバイスすることです。不動産コンサルタントになるためには、試験に合格し、「不動産コンサルティング技能登録証」を取得する必要があります。
不動産デベロッパー
不動産デベロッパーは、マンションやビル、複合施設などの不動産を建築・販売する専門業者です。土地の買取や建設費用などにコストがかかります。不動産デベロッパーの場合、一つの案件でも何百万というコストがかかるので、まとまった資金を持っていることが必須の条件です。
事務所を設置する
次に事務所の設置です。不動産業の開業は、自宅の一部を事務所とする方法とテナントを借りる方法の2つがあります。
自宅で事務所を立ち上げる場合
自宅に事務所を構える際は、以下の条件があります。
- 自宅用ではない事務所専用の出入り口があること
- 壁などで間仕切りされた独立スペースがあること
- 玄関を入ってから他の部屋を通ることなく、事務所用の部屋にたどり着けること
- 事務所の用途だけに使用する個室として、接客用の机、椅子を用意すること
事務所専用の出入り口がなくても他の部屋を通らずに事務所の部屋へ直行できるなら、事務所として認められる場合があります。
テナントを借りて事務所を立ち上げる場合
テナントを借りて事務所を立ち上げる際は、以下の条件があります。
- 他法人とは別の事務所専用の出入り口があること
- 高さ180㎝以上の固定されたパーテーションなどで他法人との間が間仕切りされていること
なお、賃料を抑えるためにレンタルオフィスやコワーキングスペースを利用する方法がありますが、出入り口を共有していることが多いので、不動産業の事務所としては向いていません。
宅地建物取引士を設置する
宅地建物取引士は、不動産取引の専門家であることを証明する国家資格です。不動産業を行う事務所は、拠点ごとに従業員5名に対して1名以上の宅地建物取引士を配置しなければいけません。
宅地建物取引業の認可を受ける
不動産業を開業するためには、都道府県または国土大臣より「宅地建物取引業」の認可を受ける必要があります。
不動産保証協会へ加入する
不動産業を開業する場合、営業保証金を本店で1,000万円、支店ごとに500万円を法務局に供託しなければいけない決まりとなっています。営業保証金は、不動産取引において相手が損失を受けた場合、損失を弁済するために設けられている制度です。供託とは、金銭や有価証券を供託所に預けておくことを指します。
保証協会に加入し、入会金20万円と保証金60万円を支払うことで、営業保証金を免除できます。開業時の初期費用を抑えることができるのでぜひ加入しましょう。
宅建協会へ加入する
各都道府県の宅建協会に入会することで、全国の不動産情報を交換できるシステム「レインズ」が利用できます。その他にも業界情報や経営に役立つ情報を得られたり、契約時のトラブルの相談やサポートなど、様々なサービスを受けることが可能です。
事業を宣伝する
不動産業を開業さえすれば、お客様が集まる、問い合わせがあるといったことは稀です。開業までの準備が大方できたら、事業の宣伝活動を行いましょう。以下に具体的な集客方法を記載しましたので、参考にしてください。
- ホームページの作成
- Googleマイビジネスの登録
- リスティング広告
- SNS(Facebook,Twitter,Instagram)
- ポータルサイトへの掲載
- ポスティングや新聞折込チラシ
- ティッシュ配り
- 捨て看板
不動産業の開業に必要な資格と届出

不動産の開業には、「宅建建物取引士」の資格と「宅建建物取引業」の免許が必要です。その他、必須ではありませんが不動産業に役立つ資格もあわせて紹介します。
宅建建物取引士
宅地建物取引士(以下、宅建)は、不動産業を行う事業者にとって必須の資格です。宅建試験は年に一回実施されます。申込方法は以下の2通りです。
- 都道府県庁・書店などで願書を入手して郵送で申し込む
- インターネットで申し込む
受験料は8,200円です。申込み期限は、インターネットでは7月1日から15日前後まで、郵送の場合は7月1日から7月末までとなっているので、忘れずに申込みましょう。
宅地建物取引業
宅地建物取引業は、不動産業を開業するにあたって必要な認可です。申込みには以下の3つの条件があります。
- 事務所を設置していること
- 従業員5人につき1人以上の宅地建物取引士を設置していること
- 欠格事由に該当していないこと
欠格事由とは、事業者に認可を与えるかどうかを判断するための基準です。欠格事由に該当している場合は、宅地建物取引業の認可を受けることができません。欠格事由は複数ありますが、いくつか紹介します。
- 心身の故障によって宅建業を適正に営むことができない場合
- 一定の刑罰の対象となった場合
- 免許を不正に取得した場合
管理業務主任者
管理業務主任者は、マンション管理業者がマンション管理組合への指導・重要事項の説明、マンション設備に関するマネジメントなど行う際に必要となる国家資格です。マンション管理業を行う事務所は、必ず1名以上置くことが義務付けられています。
不動産鑑定士
不動産鑑定士は、土地や建物を鑑定するほか、鑑定に基づいて適切なアドバイスや提案を行います。不動産の価値は時代や社会情勢に応じて変化するので、建物や土地の価値を判定する不動産鑑定士は、ニーズが高い仕事です。また、不動産鑑定士は全国に約8,000人しかおらず、希少性が高い資格ともいえます。
土地家屋調査士
土地家屋調査士は、不動産登記の専門家です。不動産の所有者に変わって、登記の申請手続きや調査・測量をすることが可能となります。登記は本来、不動産の所有者が行うものですが、高度な専門知識を要するため、国家資格である土地家屋調査士に依頼するケースが多くなっています。
不動産業の開業資金はどれくらい?

ここでは、不動産の開業にかかる費用を紹介します。あくまで目安として参考にしてください。
費用 | 金額 |
---|---|
物件取得費・内装工事費 | 100万円〜300万円 |
設備機器(OA機器、オフィス家具) | 10万円〜100万円 |
通信費(インターネット、電話) | 5万円〜10万円 |
免許申請の手数料 | 33,000円 |
営業保証金 | 1,000万円※協会に加入した場合は、弁済業務保証金分担金60万円 |
各協会の加入 | 宅建協会:40万円〜50万円保証協会:13万円〜20万円弁済業務保証金:60万円 |
法人設立費用 | 242,000円 |
広告宣伝費用 | 数万円〜 |
不動産業を開業するときの資金調達方法

不動産業を開業するには、様々な用途で費用が発生するため、必要に応じて資金調達を検討することが大切です。ここでは、不動産業を開業するときの資金調達方法を3つ紹介します。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、国が全額出資している政府系金融機関です。経済の成長や地域活性化を目的としており、創業や新規事業へのサポートを積極的に行っています。日本政策金融公庫の新創業融資制度は、起業時もしくは起業して間もない事業者を対象とした融資制度で、無担保・無保証人で受けることが可能です。
民間金融機関の融資と比べて低金利かつ起業前でも積極的に融資しているといったメリットがあるので、これから開業するならぜひ利用したい融資制度といえます。
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制度融資
制度融資とは、地方自治体、民間の金融機関、信用保証協会が連携して実施している融資です。民間金融機関の貸付に信用保証協会が信用保証をつけることで、創業者が借りやすい仕組みとなっています。金利も低く、長期での借入も可能なので創業したばかりの事業者にとって手助けとなる制度といえるでしょう。
ただし、上記3機関が関わってくるので、手続きにかかる手間と時間が長くなる傾向があります。申込から融資が実行されるまで、2〜3ヶ月はかかると見ておいたほうがよいでしょう。また、各自治体によって制度や内容が異なります。全国に52の信用保証協会があるので、制度融資を検討する方は詳細を問い合わせてみてください。
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補助金・助成金
補助金・助成金は国や地方自治体が実施している支援制度です。財源は主に税金や雇用保険料であり、返済の必要がありません。対象となる条件は、支援目的のほか地域によっても異なります。
例えば、IT導入補助金は生産性を上げるITツールを導入する際に費用の一部を補助してくれる制度です。不動産業の場合、営業支援システムや顧客管理システムが該当します。
公募期間は種類によって異なりますが、1ヶ月前後と設定している場合が多くなっています。「気づいたら公募期間が過ぎていた」といったことがないように、補助金・助成金の内容は定期的にチェックしましょう。
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会社設立に役立つ助成金・補助金一覧|利用時の注意点やその他の資金調達方法も解説
「freee資金調達」で最適な資金調達方法を見つけよう

不動産を開業するためには、宅地建物取引士の設置や宅地建物取引業の免許申請など手順を踏む必要があります。また、開業時は随所で費用が発生するため、開業費用をしっかりと把握しておきましょう。資金調達方法の選択肢を広げておけば、急な資金繰りにも慌てずに対応することができます。
最後に経営者のお悩みを解決する手段として「freee資金調達」をご紹介します。「freee資金調達」は、Web上に条件を入力するだけで様々な資金調達手段から最適なものを見つけられるサービスです。
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- freee資金調達はお客様のサービス選択時の参考情報提供を目的としており、特定の金融機関、ローン商品の優劣を示したものではありません。
- 各金融機関の審査結果によっては利用できない場合があります。